「康光流 バーディー振り飛車」とは? 佐藤康光九段が『将棋フォーカス』講座に登場!【NHK将棋講座】
10月からのNHK『将棋フォーカス』の講師は、佐藤康光九段を迎え「剛腕!康光流バーディー振り飛車」をテーマにお届けします。聞き手は、山根ことみ女流三段です。
“バーディー”はゴルフ用語ですが、その意味するところは何なのでしょうか?
今回はNHK「将棋講座」テキスト2024年10月号より、講座へのイントロダクションと佐藤九段、山根女流三段の意気込みを抜粋してご紹介します。
攻撃的な振り飛車で康光流の極意を伝授!
「将棋の上達法はいろいろあるけれど、“何となく”わかったかなと思ったり感じたりすることが実は大事で。全てを理解する必要はないので、とにかく気軽に観てほしいです」
4回目の講師を務める佐藤康光九段はやさしい笑みを浮かべて言う。過去3回は級位者向けの内容だったが、今回はガラッとテイストを変えた。自身がこれまでNHK杯戦で指してきた角交換振り飛車の実戦譜を使って戦術をやさしく解説。番組を観終わったらすぐに指せる内容で“即戦力”がキーワードとなっている。第一目標の初段を目指すにはうってつけの内容だ。
「攻撃的な作戦で、いつも楽しく面白く指しています。そんな康光流の将棋に親しみを持ってもらえればうれしいですね」
タイトルの『剛腕!康光流バーディー振り飛車』は趣味のゴルフからネーミングされた。ゴルフ用語のバーディーとは、規定打数よりも1打少なくそのホールを終えることを言う。スピード感を重視した作戦としてぴったりではないだろうか。
「序盤から相手よりも先んじる積極的な作戦だと思っています。仮にスタートで出遅れたとしても、どこかでスーパーショットを出せばバーディーは取れますので。そういった戦いのテクニックもぜひ見てください!」
大きな魅力はとにかく駒組みがわかりやすく、序盤の目的がはっきりしている点。手順が覚えやすく、即戦力として使いやすいありがたい作戦といえよう。
「振り飛車は居飛車と違って自分で戦法を選べますので、自分の土俵に持ち込みやすいのが強みです。玉の囲いも自分の好みで使い分けることができるので、好きな形を覚えて愛用していただければと思います」
冒頭にある「何となく」という感覚が大事だと講師の佐藤九段は力説する。
「将棋は論理のゲームではあるのですが、必ずしも読み切ったり理解したりする必要はありません。何となくこういうことなんだなと感覚的につかむことって実はすごく重要だと私は思っていて。そう感じることで自分なりの方針なり好みが決まってきますから」
月に1局を詳細に解説することで、居飛車側の急戦調から持久戦まで様々なパターンに対応しているのも心強い。
「振り飛車は類似した形が多いので、何度もやってみてください。何となく吸収したことが体に染みついていき、それが上達につながるのです。大丈夫、私についてきてください!」
とにかく失敗を恐れないことが心得だと新講師は言う。康光流の極意に触れて、新たな武器や知識を手に入れよう!
聞き手の山根女流が語る康光流の魅力
聞き手は中川大輔八段の「盤上百名山」に続いて、山根ことみ女流三段が務める。軽いさばきと鋭い寄せが持ち味の振り飛車を指しこなす山根女流三段は「NHK杯戦で観てきた佐藤先生の振り飛車を間近で堪能できるのがうれしいです。私は角道を止める振り飛車が多かったので、視聴者の皆さまと一緒に新たな作戦を勉強していきます」と瞳を輝かせる。
居飛車党の側面もある佐藤九段の振り飛車は独特の力強さが特長である。第56回、第57回、そして第66回とNHK杯戦で3度の優勝を果たした。
山根女流三段は康光流の振り飛車について「とにかく駒が激しく動きますよね。一直線で攻め合うのが好きな居飛車党の方も取り入れやすいのではないでしょうか」と話す。
山根女流三段は「とにかく楽しく収録に臨む」と意気込む。「私たちが楽しまないと視聴者の皆さんも観ていて楽しくないと思いますから」とほほ笑むと、「中川隊長には厚みの築き方を教わって、将棋の体力や筋肉をつけていただきました。佐藤先生には戦法のレパートリーを増やしていただきます。もちろん視聴者の皆さまにとっても大きな武器になるはずです」と満面の笑みで力を込める。新講師との掛け合いも楽しみだ!
◆『NHK将棋講座 2024年10月号』内、「『将棋フォーカス』講座 新開講! 剛腕!康光流バーディー振り飛車」より
◆文:内田 晶
◆撮影:小松士郎、河井邦彦