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魔性の男【BUCK-TICK 櫻井敦司】その全てが美しく艶やかなボーカリストの魅力とは?

Re:minder

1989年01月18日 BUCK-TICK のアルバム「TABOO」発売日

すべてが美しく、魅惑的、魔性の男 櫻井敦司


ファム・ファタール(Femme fatale)とは男性の運命を変える女性。男性を破滅に導く女性。俗に言う “魔性の女” を指し示すフランス語である。これの男性版をオム・ファタール(Homme fatale)という。つまり “魔性の男”

ーーこの響きを聞いて真っ先に思い浮かんだのはBUCK-TICKの櫻井敦司だ。

櫻井の魅力を語り尽くせばキリがない。その中性的で耽美的な容姿、控えめで心優しいお人柄、そして誰しもを闇の世界へと誘うかのような妖艶なステージング…。すべてが美しく、魅惑的だった。デビューから今日に至るまで、一体どれだけの女性を虜にし、その運命を翻弄したのだろうか。今回は櫻井のボーカリスト、パフォーマーとしての魅力を楽曲と共に振り返っていきたい。

「TABOO」で一気にポテンシャルが覚醒


結成当初は、同郷のBOØWYを彷彿させる8ビートの縦ノリロックで人気を博したBUCK-TICKだったが、4枚目のアルバム『TABOO』で一気にポテンシャルが覚醒。とりわけオープニングを飾る「ICONOCLASM」に漂う不穏な雰囲気は、その後のバンドの方向性を決定づけたといっても過言ではない。

櫻井のボーカルもここで大きな変化をみせる。この曲はサビもなければ抑揚もなく、終始一貫して全編英詞の呟きや、狂ったような笑い声だけで構成されている。呪文を唱えるような低音ボイスが不気味で、途中エフェクトをかけたように声色を変える部分はもはやホラーだ。過激な歌詞に頼ることなく、サウンドとボーカルで “狂気” を表現したのはBUCK-TICKが初めてだろう。

それまでは割とストレートに歌を届けていたが、このアルバムを境に櫻井の表現力が格段とアップ。いや、表現力というよりは曲によって声色や発声、キャラクターをも変えてしまう “演技力” を身につけたのである。この演技力こそがボーカリスト・櫻井敦司の最大の魅力だと私は思っている。音程の正確さなど歌唱力を測る尺度は様々だが、これほどの演技力を持ったロックスターを、私は他に知らない。

グランジ風のへヴィーな音に振り切った怪作「Six/Nine」


平成初期の頃、「悪の花」「スピード」などヒットを連発し、BUCK-TICKは若くして不動の地位を築きあげた。一般的には商業的な成功と共にポップな方向へと舵を切るバンドが多いのだが、彼らはむしろ真逆のマニアックな路線へと突き進んでいく。それが極致に達したのがアルバム『Six/Nine』だった。

ポップ要素を排除し、グランジ風のへヴィーな音に振り切った怪作。内省的な歌詞もエッジが効きすぎなほど効いていて、ボーカルも楽曲ごとに別人かのような変化をみせる。「限りなく鼠」の超攻撃的な低音、かたや「君のヴァニラ」ではわざと過剰なビブラートをかけて異常性を表現するなど、長いキャリアでも櫻井、ひいてはBUCK-TICKが最も尖っていた時期といえるだろう。

常人には真似できない、美しい男にだけ許された特権


30代に入ると櫻井の官能的な魅力にも磨きがかかっていく。個人的にBUCK-TICKで一番好きなアルバム『ONE LIFE ONE DEATH』、とりわけその中に収録されている「サファイア」は、妖艶な歌詞を歌うその姿がとにかく色っぽい。音源で聴くのもいいが、ライブでは声だけではなくパフォーマンスでもエロさを体現していて、見ているだけで目と耳がとろけそうになる。18禁に指定すべき映像だとさえ本気で思わせるほどの代物なのだ。

また『SEXY STREAM LINER』収録の「迦陵頻伽 Kalavinka」も、エキゾチックな楽曲を身体をくねらせながら表現する櫻井の魅力が炸裂した1曲だ。インタビューやテレビ出演での温厚な姿からは想像もできないような艶かしいパフォーマンスは、常人には真似できない、美しい男にだけ許された特権であろう。

2000年代半ばには “ゴシック” に真正面から挑んだコンセプトアルバム『十三階は月光』をリリース。この頃から櫻井の趣向も一層耽美的な方向へと進み、同時に “演技力” にも一段と輝が増していくことになる。これは、昨年リリースの最新アルバム『異空』収録の「ヒズミ」でも強く感じられた。薄暗い団地の一室という舞台設定、さらに歌詞には描かれていない主人公のバックボーンまでもを声色と歌い方でみごとに表現。まるで光景が目に浮かぶような歌唱は、息を呑むほどの緊張感に満ちている。

溢れんばかりの “猫愛” を惜しげもなく放ちまくった「GUSTAVE」


近年は、格好よさや美しさに加えて “可愛い” 要z素が前面に出ることもあった。代表的な1曲がアルバム『No.0』収録の「GUSTAVE」だろう。サビで「Cat」を連呼するなど “猫” をテーマにしたこの曲で櫻井は、まるで猫に憑依されたかのような動きをライブで披露。他のメンバーも猫じゃらしを口にしたり、猫手でポーズしたりと、溢れんばかりの “猫愛” を惜しげもなく放ちまくった楽曲となっている。初期のBUCK-TICKには考えられなかったお茶目な一面に、どれだけのファンがギャップ萌えしたことだろう。

“魔王” と呼ばれるほどの圧倒的なカリスマ性、男性離れした美形でありながら、どこか可愛げがあり親しみやすさのあった “あっちゃん” こと櫻井敦司。ここで紹介したのはごく一部の楽曲だが、アルバムごと、曲ごとに様相を変える演技派ぶりは一度聴いたら虜になること間違いなしである。

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