介護者が悩まされる肩こりの改善方法は?家庭でできる簡単ストレッチ・運動をご紹介
在宅介護をしている方の中には、肩こりになりやすくなって悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
介護は身体への負担もかかりやすいので、肩こりを引き起こしやすいといえます。肩こりを解消するには、ストレッチや運動などを行って、硬くなった筋肉をほぐす方法がおすすめです。
この記事では肩こりを解消するストレッチ・運動の方法と、予防法についてご紹介します。本記事の内容が、肩こりを気にせず介護ができる一助となればと思います。
在宅介護は肩こりを起こしやすい?
肩こりとは、肩まわりの筋肉を使いすぎることで血行不良を引き起こし、緊張や痛みをともなっている状態のことです。在宅介護でさまざまな介助を繰り返し行うと身体に負担がかかり、肩こりを引き起こしやすくなります。
実際に、在宅介護している方の8割以上が、肩こりや首の痛みなどの訴えがあるという報告もあります[1]。肩こりを我慢しながら介護していると、さらに症状が悪化し、腰痛をはじめとした身体の不調が広がる恐れもあるでしょう。
肩こりを解消するためのストレッチ・運動
肩こりを解消するためには、ストレッチや運動が効果的です。具体的なストレッチ・運動の方法をご紹介します。
肩こりに効果的なストレッチ
肩まわりをストレッチすることで硬くなった筋肉がほぐれ、血行改善につながります。
首まわりのストレッチ
首まわりの筋肉をほぐすためのストレッチ方法です。ゆっくりと、痛みの出ない範囲で行いましょう。
【やり方】
手で頭を軽く持ち、前方向に倒す
頭を倒した状態を10~20秒間キープする
頭を戻し、これを前後・左右の方向に2セットずつ行う
背中・肩まわりのストレッチ
背中や肩まわりの筋肉のストレッチ方法です。
【やり方】
右手を水平にして、左手を使いながら胸に引き寄せる
顔は真っ直ぐにしたまま、できるだけ身体を左方向にひねる
20秒キープしたら元に戻す
反対の手で手順1〜3を繰り返し、それぞれ2セットずつ行う
背中・肩まわりのストレッチ(その2)
こちらも同様に、背中や肩まわりの筋肉のストレッチ方法です。このときに身体を左右に動かすことで、上半身の側面にある筋肉のストレッチにもなります。
【やり方】
両手を組んで、背伸びをするイメージで真上に上げる
20秒間キープしたら元に戻り、計2セット繰り返す
肩こりに効果的な運動
肩まわりの運動を行うこともおすすめです。肩まわりの筋肉を動かすことで血流が促され、こりの解消につながります。
肩をすくめる運動
肩をすくめる運動は、肩こりの原因となる「僧帽筋(そうぼうきん)」をほぐします。
【やり方】
両肩をすくめるように上げる
3~5秒間維持したら一気に力を抜く
手順①②を5セット行う
肘を回す運動
肘を回す運動は肩まわりの筋肉をほぐし、肩甲骨の動きをスムーズにします。肘を回す際は肩甲骨を大きく動かすようなイメージを意識してみましょう。
【やり方】
手を脇に近づけて肘を曲げる
円を描くように肘を10回ほど回す
反対側に10回ほど回す
手順②③を3セット行う
肩甲骨をくっつける運動
肩甲骨をくっつける運動も、肩まわりの筋肉を効率的にほぐせます。
【やり方】
肘を90度曲げて腕を水平にする
左右の肩甲骨をくっつけるイメージで腕を広げる
5秒間キープしたら元に戻し、計3~5セット行う
両腕を回す運動
両腕を回す運動では、ダイナミックに肩まわりの筋肉を動かせます。こちらも肩甲骨を大きく動かすイメージで行ってみましょう。
【やり方】
両腕を組む
大きな円を描くように時計回りで5回動かす
反時計回りで5回動かす
手順②③を3セット行う
その他の肩こり解消法
筋トレやストレッチ以外にも、肩こりの解消方法はたくさんあります。それでは代表的な肩こり解消法についてご紹介します。
入浴して血行を促す
気軽に行える肩こり解消法としては、入浴がおすすめです。入浴することで全身の血行が促され、肩こりの解消につながります。また、湯船に浸かると「副交感神経」が優位になり、リラックス効果を高めることも可能です。
入浴する際のおすすめの温度と時間は、38度ほどのぬるま湯で30分程度といわれています。40度以上の熱めのお風呂が好きな方は、10分程度にとどめておくのがおすすめです[2]。普段シャワーで過ごしている方は、ぜひ湯船に浸かる習慣をつけてみましょう。
筋肉をマッサージする
凝り固まった筋肉をマッサージするのもおすすめです。筋肉を直接ほぐすことで、血行不良を改善して肩こりの解消が期待できます。マッサージ用の器具を活用したり、整体サービスを利用したりするのも良いでしょう。筋肉をほぐすことでリラックス効果も得られるので、定期的にケアするのも一つの手段です。
ただし、マッサージをしすぎるともみ返しが起こり、痛みが生じる恐れがあります。マッサージのしすぎには注意し、ストレッチや筋トレをメインに行うようにしましょう。
ストレスを溜め込まない
なるべくストレスを溜め込まないようにすることも大切です。ストレスは肩こりと関連性があるといわれています。実際に普段の仕事でストレスを感じている方のほうが、肩こりになる割合が多いという報告もあるのです[3]。これはストレスによって筋肉が緊張しやすくなり、血行が悪くなることで肩こりが現れると考えられています。
何がストレスなのかは人によって異なるので、まずはその原因を明確にすることが大切です。ストレスの原因がわかったら、どのような方法を取れば負担が軽くなるのかを考えてみましょう。
肩こりを予防するために気をつけたいポイント
肩こりを予防するにはどうすれば良いのでしょうか。それでは肩こり予防のために気をつけるべきポイントについて解説します。
介護の方法を見直す
介護の方法をあらためて見直してみましょう。
たとえば、以下のような方法であれば肩こり予防につながります。
乗り移り介助する際は身体を近づける
立ち上がりや起き上がりの介助をする際は重心を意識する
ベッド上で介助する際は高さを調整して前かがみにならない
このように、肩こりの大きな原因である介護の方法を工夫してみましょう。無理な姿勢ややり方で介護を行っていないか、あらためて見直すことが大切です。
同じ姿勢のままでいない
介護に限らず、普段から同じ姿勢のままでいないようにしましょう。ずっと同じ姿勢でいると筋肉が緊張しやすくなり、肩こりや腰痛を引き起こす原因となります。同じ姿勢になりがちな場面は、長時間のデスクワークや運転などがあげられます。このような状況が多い方は、なるべく同じ姿勢にならないように意識してみてください。
こまめに身体をほぐす
こまめに身体をほぐすようにしておくと、筋肉の緊張を防いで肩こり予防になります。同じ姿勢でいないことはもちろん、定期的に背伸びをしたり、腰を回したりなどのストレッチをするのがおすすめです。
また、身体をほぐすことでリフレッシュ効果も得られます。このような工夫をして、肩こりを起こさないように生活を送りましょう。
在宅介護で肩こりが起きないような工夫をしましょう
在宅介護では肩こりを訴える方の割合が多いため、その対策を考えることが重要です。肩こりを解消するためには、定期的にストレッチや運動を行い、筋肉をほぐすようにしましょう。入浴やマッサージなどの手段を活用することもおすすめです。
また、介護方法を見直す、こまめに身体を動かすなどによって肩こりを予防することも大切です。今回紹介したポイントをおさえながら、肩こりが起きないような生活を目指してみてください。
【参考文献】
[1]「女性家族介護者の首肩背中のこりと痛み(肩こり)に関連する生活習慣と介護状況」鈴木 岸子、玉腰 浩司、榊原 久孝 日本看護研究学会雑誌 Vol. 40 No. 4 2017 2023/11/08
[2]快眠と生活習慣 - e-ヘルスネット(厚生労働省)2023/11/08
[3]「日本人が訴える肩こりの特徴について―欧米における neck pain との比較―」沓脱 正計、黒岩 誠 こころの健康 Vol.25 No.2 2023/11/08