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​【「2025年しずおか連詩の会」参加詩人から(1) 川口晴美さん「やがて魔女の森になる」】身の回りの存在を、身体というフィルターを通じて言葉にする

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。「2025年しずおか連詩の会」(11月9日に発表会)の参加詩人の作品を紹介する不定期連載を始めます。第1回は詩人川口晴美さんの第30回萩原朔太郎賞(2022年)受賞作「やがて魔女の森になる」(思潮社)を題材に。

2020年冬、横浜港に停泊していた豪華客船に日本中の視線が注がれていた。冒頭の「気がかりな船」は、恐らくその船の中からの言葉だ。明言されてはいないが。

閉ざされた空間に暮らす者が見たもの、聞いたものが、感情の起伏の少ない筆致で伝えられる。ちょっとした気分の高まりは得体の知れない不安の裏返しであろう。

わたしたちこそが病そのものなのだということがゆっくりと腑に落ちてくる
陸へ広がってはいけないから
繁殖も繁茂もしないように
ここで
阻まれているのだ
(「気がかりな船」より)

川口さんは身の回りに存在するあれこれを、自分の身体というフィルターを通して言葉にする。その言葉が像を結んで詩になる。その像は、私たちが生きている世界の常識にのっとった風景だったり、超現実的で私たちの世界のルールが通用しない風景だったり、いろいろだ。

「自分の身体というフィルターを通して言葉に」と書いたけれど、これはイコール、「詩人らしさ」である。筆者の考える詩人らしさそのものだ。川口さんは、実に詩人らしい詩人だと感じられる。

「やがて魔女の森になる」は、日々のよしなしごとを平易な言葉で丁寧につづる「ガールズワーク」「スイカタイフウ」「空の轍」から、時に悪意を込めた他者の視線にさらされる「寝台」への落差が楽しい。きれいに洗ってギュッと絞り、四つ折りにされた木綿のふきんが、えたいの知れない魔物につかれてみるみる広がり、部屋全体を包み込んでしまう。そんな風景を思い描いた。

(は)
 
<DATA>
■2025年しずおか連詩の会
会場: グランシップ 11階会議ホール・風
住所:静岡市駿河区東静岡2-3-1
入場料:一般1500円、子ども・学生1000円(28歳以下の学生)※未就学児入場不可
日時:11月9日(日)午後2時開演
問い合わせ:054-289-9000(グランシップチケットセンター)

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