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中学時代に軟式で145キロを投げた末吉良丞。沖縄高校野球史上初めて出現した最強パワーピッチャーの驚愕秘話

OKITIVE

今月13日から全国トップをきって2026年夏の第108回全国高校野球選手権沖縄大会が開催された。 昨年夏の甲子園優勝校の沖縄尚学を中心に、春季九州大会優勝のエナジック、春季大会準優勝の興南高校、昨年秋季大会準優勝のウェルネス沖縄が打倒沖尚を掲げて順当に勝ち上がってくる展開が予想される。 注目だったのは、前年度ディフェンディングチャンピオンの沖縄尚学の栄光なる背番号1は誰がつけるのか。戦前の予想通り、春の九州大会の活躍により“琉球快速球王子”こと新垣有絃がつけることになった。 昨春の選抜で横浜高校にKOされて以降、いまだ一度もKO降板がない“”剛腕の不沈艦“末吉良丞は左肘の不調により背番号10となった。末吉にとって忸怩たる思いだろうが、今はじっくり焦らず体調を万全にすることだけに集中してほしい。

浦添市立仲西中の末吉の名が一気に広がる

2023年7月下旬、中学総体軟式野球予選がセルラースタジアムで開催されたときのこと。 “ざわ…、”ざわ…“、”ざわ…“ スタンドの観客席が色めき立つ。 電光掲示板のスコアボードには、「145」の数字が表示されている。高校野球でも滅多に表示されない数字が煌々と光っている。 マウンドには、仲西中学のサウスポー末吉良丞が表情を変えずに威風堂々と立っていた。 145キロは末吉が軟式で投げた最高時速である。通常、軟式ボールはスピードが出にくいとされる。リリースの瞬間、ボールを強く押し出す際に柔らかい軟式だと潰れて指から伝わる力を吸収してしまうからだ。ただそれは、プロ並みのスピードを出すピッチャーに限られる。 高校BIG3の一角を堂々占める末吉良丞。能力はもとより、年齢に似つかわしくないほどの泰然自若ぶりは、一体どのようにして身についたのか。

ピッチャー心理を学ぶためキャッチャー転向

小学校高学年時代の仲西ビクトリーベースボールクラブの監督、中学時代は外部コーチとして末吉を指導してきた玉城優一は末吉の成長を間近で見たひとりだ。 「中学のときは練習試合で何度も140キロを越える球を球審として体感し、公式戦で145キロを投げたときはあらためて凄味を感じました。 小学校のときはコントロールを乱してよく自滅していました。“俺が、俺が”という責任感が強すぎるせいかマウンドを降りてから泣いたこともあり、一度キャッチャーに転向させたことがあります。 その意図は、キャッチャーの視点に立ってピッチャーや野手の気持ちをわからせるための措置でした」 このキャッチャー転向には、賛否両論があった。首脳陣の中には、キャッチャーをさせることで怪我をしたらどうするんだという意見もあった。しかし、玉城は中長期的な目で“今の末吉には必要だ”とキャッチャーに転向させた思いがあった。 小学生といえばまさにゴールデンエイジ(9〜12歳)であり、この時期に徹底的に基礎の反復練習することが重要だと言われる。ゴールデンエイジとは、神経系の発達がほぼ完成し、一生に一度だけ訪れるあらゆる動作を短期間で覚えられる時期。末吉は、この期間に玉城の指導により多くの練習をこなし、たくさんの経験をしてきたのだった。

丸太担いでのランニングによる強靭な下半身で打撃も向上

小学校時代からの同期たちと一緒に野球がやりたかった末吉はボーイズに入らず、地元中学の野球部に所属して体力作りに励んだ。 末吉が通っていた仲西中学野球部顧問として3年間指導した大浜淳一がこう証言してくれた。 「良丞は入学したときから特別で、この子はプロに行くだろうなと思って指導しました。 中学1年から身体はがっしりしていて球も速かったんですけど、コントロールはめちゃくちゃでした。3年間コントロールをつけさすことが難儀でした。 丸太を担いで相当走らせましたから。重いものを担いでダッシュするとまっすぐ走れないため身体の軸を使ってまっすぐ走ろうとし、下半身強化と体幹が一挙に鍛えられる利点があります。 練習試合のときコントロールが荒れてファアボールを出したらすぐ交代して『お前、(丸太担いで)走っとけ』と。良丞は練習に対して真面目なので不貞腐れもせずに丸太を担いでよく走りましたよ」 コントロールをつけるためにフォームの矯正よりもまずは体作りが先決と大浜は思い、肥満気味の体を絞るために徹底的に鍛えた。 体が出来ていない中学1年でも驚異的なスピードボールを投げ、甲子園常連校である青森の聖光学院の監督が中学1年秋からわざわざ沖縄くんだりまで来るほど、入学時点からすでに逸材だった。 「中学3年のときセルラー球場で公式戦の試合をしたんですが、投球練習で145キロをマークしたんです。 試合前に“見るな”と釘を刺したのに、観客がどよめき出してスピードガン表示を見てしまったため調子に乗ってしまったのか、コントロールがめちゃくちゃになってしまいましたね。 良いときには鬼に金棒ですけども、悪いときには連続フォアボールやワイルドピッチとかも多かったです。高校ではピッチングに専念したみたいですけど、実は彼バッティングも良いんです。 仲西中学校のグラウンドは結構広いんですけど、ライト側にある体育館の屋根まで平気で飛ばすこともありました。 当たったときの飛距離は凄かったです。ライナー系の打球で楽々飛ばすんですよ。パワーは随一でしたね」 昨夏の決勝沖縄尚学対エナジックは、まさに末吉の一人舞台だった。 目の覚めるような痛烈な当たりの2打席連続ツーベースによる4打点を挙げ、投げては4安打、9奪三振の9対1で完勝。 「野球はひとりでもできる」 日本史上最高サウスポー江夏豊の言葉が、そのまま当てはまるような試合展開だった。

140キロ超の球を受けてキャッチャーが骨折

末吉は中学時代から枠に収まりきらない怪物として名を轟かせていた反面、剛速球投手にありがちなノーコンぶりも目立った。大浜は述懐する。 「中学生のキャッチャーなので良丞のボールを捕るのを怖がるんです。140キロ超の球を投げるので怖いのは当然なんですけど、同級生のキャッチャーが低めのストレートを捕った際に親指を骨折したんです」 キャッチャーの指を骨折!? まるで巨匠水島新司の『ドカベン』に出てくる横浜学院の“前略土門さん“の土門剛介じゃないか。 登場してしばらくの間、剛速球を投げる度にキャッチャーを壊してしまうため土門は全力投球をしないピッチャーというキャラクター設定だった。 でも末吉は違った。キャッチャーが壊れようが壊れまいが、自分の納得する球をミットに投げ込んだ。 そんなこんなで中学3年時には県内はもちろん、大阪桐蔭、東海大相模といった県外の強豪校からも多数勧誘が来ての争奪戦となった。いろいろ熟考した結果、投手育成に定評がある沖縄尚学に進学することを決める。 小学校、中学校の指導者たちの温かい眼差しと指導のおかげで、末吉は大きな怪我もなく、次のステージへと羽ばたくことになる。

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