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札幌北18条に根を下ろしたUNTAPPED HOSTELがさらなる進化。カルチャーと公共の境界線を溶かす新しい場所を創るプロジェクトが開始

SODANE

札幌北18条に根を下ろしたUNTAPPED HOSTELがさらなる進化。カルチャーと公共の境界線を溶かす新しい場所を創るプロジェクトが開始

2014年、北18条に誕生した「UNTAPPED HOSTEL」。旅人向けのホステル/ゲストハウスとして誕生したこの場所は「宿」という存在を超えて、様々な人の交わりの場所へ。

街を紡ぐこと、人を受け入れること

UNTAPPED HOSTEL店主の神 輝哉(じん てるや)さん。東京の大学に進学した後、出版社に勤務。

故郷の札幌に戻りUNTAPPED HOSTELを立ち上げたのは2014年。ホテルではなかった建物を自らイメージした空間としてリノベーション、国内外からの旅行客が集う宿として営業を開始。

この場所が生まれる時、店主の神さんが時間を共にしたのは東京から帰ってきて就いた仕事を通じて街で出会った人たち。狸小路2丁目の飲食店に集う仲間から広がったつながりでした。

そんな神さんの元には、札幌で飲食店やバー、アパレルショップを営む人や音楽に関わる人も多く集まってきます。

「最初は「古着屋のお兄さんかっけーな」とか、「バーテンダーやってる先輩かっこいい」っていう憧れからスタートしてて、自分もプレイヤー側に回りたいって気持ちがあったわけさ。自己実現としてね。」

(出典:トーチライト - ここでつくって生きていくメディア)

その言葉の通り、自ら手を動かし、宿自体そしてそこで行われるイベントや企画も自ら実現させていくことで、札幌の街に根を広げて行きました。

2020年、コロナが変えたことと、もがきながら見出した新たな光

札幌。2020年に向け、インバウンドの波が押し寄せる中で街には大きなうねりが生まれていました。

「大きな力で、空き地ができたらすぐに新たなホテルが建つ。古いものがどんどん取り壊されていく。街の中心部に地元の人がゆっくりできるスペースがなくなっていく。「このままではいかないだろうな」「どこかで破綻するのではないだろうか」という、行き先のわからないまま突進していくような、危うい雰囲気を感じていました。」

神さんがそう語る通り、札幌の街は古くからお店が軒を連ねた建物が次々と新しいホテルへと姿を変え、札幌の街に住む人が街から追いやられていくような不安めいた空気が生まれていました。

そして迎えた2020年2月、コロナウイルスのパンデミック。

この時を境にUNTAPPED HOSTELの客足はぱたりと途絶えました。

それと同時にパンデミックによって浮き出されたもの。それは札幌の街に住む人の孤独や困窮、希薄になりつつあった人と人とのつながりでした。

「都内でネットカフェ難民が急増」

というニュースをSNSで目にした時に神さんがとった行動は、宿泊者がいなくなったUNTAPPED HOSTELの別館を必要な人たちに使ってもらうということでした。

「SNSでシェア、そのワンクリックで済ませることは申し訳ない。」

その思いからすぐに行動をはじめ、2020年5月から生活困窮者向けの3食つきのシェルターを別館でスタート。様々な制度を利用し、80名を超える人たちの受け入れ支援を行いました。

その受け入れに共感が集まり「おおきな食卓」と名した炊き出しを実施。生活困窮状態にある方、コロナ禍でバイトを失い生活に困っている学生、留学生たち、合計150名近い人たちに物資やお弁当を渡すことができ、15名のヘアカットも実施。

さらに、この「おおきな食卓」を通じて神さんがこれまで接してきた札幌の街に生きる友人たち、町内会、アーティストなど様々な方に共感が広がり、情報の拡散に加え留学生に向けた各国語の翻訳、様々なお店の協力、ボランティアスタッフでの参加など様々なアクションが生まれました。

「おおきな食卓」当日。UNTAPPED HOSTELの庭には様々な背景をもって集まった人たちが一つの場所と時間を共有する、少しにぎやかで穏やな空気に満ちていました。3月30日、札幌ではまだ冬の空気を感じる昼前の空気が、日頃交わることのない同じ町に住む人たちの交わす笑顔や優しいまなざし、互いの人生の背景を語り合うことを通じて生まれる会話と笑い声、少しずつ高くなる陽ざしで和らいでいくような、温かい空間が広がっていきました。

そして、2021年6月からはコロナ禍で様々な出会いの機会を失ってしまい、孤独を感じている近隣の大学生向けに、小さな食事会を当事者である大学生たちとスタートしています。

学生を"孤立"から救う。学生による学生のための食事会

https://sodane.hokkaido.jp/column/202107161050001180.html

「旅の舞台」としてのUNTAPPED HOSTEL。人生の旅のガイドとなる「本」に出合う場所へ

こうしてより一層多様な人たちへ門戸が開かれ、交差する素地が生まれました。人々のつながりを取り戻す場、この場所に集まる人の人生も含めた「旅の舞台」ともいえる場。

神さんが紐解いたシェルターや炊き出し、食事会を通じて出会ってきた人たちの人生は世の中の様々な困難や孤独、格差などを孕むものでした。

その交わりを通じて一人ひとりが持つ人生のドラマ、それを体現した舞台にスポットライトが当たった時、UNTAPPED HOSTELは旅人が泊まる宿から、さらに多様な意味を持つ場所となりました。

「書店+シェルター」でドラマとカルチャーが公共に溶け合う

そしてこの夏、UNTAPPED HOSTELが踏み出す新たな一歩。

それはシェルターのある別館に「書店」を設けること。

「母体であるホステルは「旅の舞台」。書店で本を開き、特別な一冊との出会いを求めることも、また旅に似ています。旅先での出会いが人生を一変させてしまう可能性があるように、一冊の本との出会いが、思いがけない方向に人を導くことだってあり得ます。

宿があり、美味しいごはんやさんがその1階にあり、奥の別館には書店があり、その上では住まいを失った人の為のシェルターがある。そんな不思議な空間ですが、名状しがたい場所だからこそ生まれる豊かさもあると信じています。いずれはこれらが互いに影響し合い、良い循環が生まれる風通しの良い場所を目指していきたいと思っています。」

神さんがそう語る通り、この場に集う人の持つドラマとここでいつか誰かに開かれる本に描かれたドラマ。その物語が交錯する場にはカルチャーやアートが自然と染み出し、孤独をやさしく包み込み、そこで生まれたつながりが街へ還元されていく場所になることでしょう。

それはまるで、UNTAPPED HOSTELが根を下ろす札幌の街に広げられた枝、そしてそこを止まり木に集まる者たちがまた豊かな土壌を作り、街へ還元していく。そのサイクルを生み出す営みのようにも見えます。

このチャレンジは、今年9月下旬~10月上旬を目指して動き出しています。

そして、支援の手段としてクラウドファンディングが起案されました。

札幌に、カルチャーと公共の境界線を溶かす「書店+シェルター」をつくりたい!

https://camp-fire.jp/projects/view/449809

スタートから1日を待たずして目標金額を達成したこのプロジェクト。これまでのUNTAPPED HOSTEL、そして神さんの歩みをたくさんの人が後押ししています。

支援の募集締め切りは9月30日まで。

少しでもこの取り組み、UNTAPPED HOSTELという場所の可能性、神さんの足跡や思いに共感する方はこの機会にプロジェクトの支援、またこれからのUNTAPPED HOSTELへ足を運んでみてはいかがでしょうか。

写真提供:神輝哉/タニショーゴ/吉田貫太郎

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