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【ハピラインふくい開業】第三セクター鉄道の名称たち その変遷を見る

鉄道ホビダス

 

▲先日開業したハピラインふくいの521系。

’24.3.16 ハピラインふくい 福井 P:宮島 昌之
(鉄道投稿情報局より)

 1984年に開業した三陸鉄道は、日本で初めてとなる第三セクター方式で設立・開業した鉄道でした。以降、地方を中心にこの第三セクター鉄道は広がっていくこととなり、現在では新幹線開業による並行在来線が移管されて設立することも多いです。そこで毎回注目されるのはその「名前」。会社名や路線名を見ていくと、時代によって、第三セクター鉄道の名称はさまざまな傾向が見え隠れします。

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■黎明期は堅実な漢字名称

 先述した三陸鉄道から会津鉄道、高千穂鉄道に代表されるように、地名+鉄道という名前のスタイルが80〜90年代初頭は一般的でした。他にも、秋田内陸縦貫鉄道、信楽高原鉄道、阿佐海岸鉄道のように、地名に加え、沿線・路線を構成する要素をプラスした名称というのもいくつか存在します。こうした名称は、地名に加えて特徴的な要素を端的に会社や路線名に入れていることから、その地域に馴染みのない人や、初めて乗る人に向けても大体どのようなところどのようにを走っているのかを想像しやすいのがメリットとして挙げられます。ですが、90年代以降、第三セクター鉄道においてこうした漢字だけで構成された名称は徐々に登場しなくなっていく傾向になっていきます。

■ひらがなを用いて親しみやすい印象に

 ひらがなを用いた名前というのは意外にも黎明期と言える80年代後半辺りからすでに存在しており、例としてわたらせ渓谷鉄道(1988年設立・1989年開業)や、いすみ鉄道(1987年設立・1988年開業)、土佐くろしお鉄道(1986年設立・1988年中村線開業)などが挙げられます。それまで漢字名称ばかりだった鉄道会社名や路線名に、柔和な印象があるひらがなを入れることで、親しみやすさを感じられます。また、それまで国鉄のものだった鉄道という立ち位置から、自治体や民間企業が軸となって運営する鉄道に変わったことを、名称でも表したとも取れるでしょう。

 ちなみにひらがながあればカタカナもあり、会社名で言えば北近畿タンゴ鉄道、路線名だと山形鉄道フラワー長井線などが存在しています。

■一目見たら忘れられない!一風変わった名称へ

 長らくこうした名称が続いた第三セクター鉄道でしたが、2000年代に入るともうひと捻りしたような名称が、主に並行在来線の移管によって生まれた第三セクター鉄道で見られるようになります。東北新幹線が八戸駅まで延伸開業した2002年には、IGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道という名称の第三セクター鉄道が誕生しました。そのうち、IGRいわて銀河鉄道に関しては「JR」のような会社名の頭文字(IGRはIwate Galaxy Railwayの略)を取った英字略称を会社名に使用しました。同様の例として、北陸新幹線の金沢駅延伸開業で誕生した旧北陸本線倶利伽羅〜金沢を移管したIRいしかわ鉄道も挙げられます。
 ちなにに、全国的にも非常に珍しい英字略称入りの鉄道会社名ですが、IGRいわて銀河鉄道の登記上の名称は「アイジーアールいわて銀河鉄道株式会社」となっています。わざわざ「アイジーアール」と表記しているのは、2001年の会社設立当時、商号登記に英字等の登録ができなかったためのもの。なおそのたった1年半後である2002年11月から英字や数字、一部記号といった文字が登記できるようになり、なんとも「惜しい」経緯が見えます。

 こうした新幹線開業による並行在来線区間を移管して生まれた第三セクターとしては、北海道新幹線開業で生まれた道南いさりび鉄道のほか、北陸新幹線開業ではしなの鉄道、えちごトキめき鉄道にあいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道、ハピラインふくい、九州新幹線開業では肥薩おれんじ鉄道などが誕生しました。この中では1997年に開業したしなの鉄道が古参勢になりますが、それ以降に開業した会社を見ると「トキめき」や「あいの風」といったイメージを言葉にしたものが入ったり、肥薩おれんじ鉄道では甘夏みかんなどの柑橘類の産地であることを「おれんじ」の名前に込めたりと、各社名前にも由来に工夫が凝らされるようになります。

 そして先日の北陸新幹線敦賀開業により誕生したハピラインふくいですが、こちらはついには漢字さえもない名称となりました。車両のカラーリングもピンクとグリーンの鮮やかかつ可愛らしいカラーリングが発表され、会社ロゴ、駅名標などもこの色に統一されています。現在はまだJR西日本時代の青帯の車両が多く活躍していますが、今後はこのカラーリングが徐々に増えていくことでしょう。この会社名の由来はハピラインふくい公式ホームページによると、ハピラインの「ハピ」は「ハピネス(しあわせ)」からきており、これは福井県の「福」を表しています。今後もかつての北陸本線以上に、名前の通り幸せをつなぐ鉄道に成長していってほしいところです。

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