「ノンビリしてるようでとても賢い?」驚きの防御ワザを持つ『ナマコ』のヒミツ
海に生きるのんびり屋さんなナマコ。食用としても広く知られていますが、その体の仕組みや生態はあまり知られていないかもしれません。この記事では、ナマコ特有の生き方を“のんびり”と紹介していきます。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ナマコの生態
ナマコは棘皮動物門ナマコ網楯手目マナマコ科に分類されます。ウニやヒトデの仲間で、脊椎がない無脊椎動物です。
世界には約1500種。日本で約200種、その中で食用とされるのは約30種……と、多くの種類が存在しています。
外側に棘を持ち、約3年で10~15cm程に成長。海底を這って砂や泥を口に含み間にある有機物やバクテリアを栄養として食します。
浅い海域から深海まで幅広く生息し、砂泥底や岩礁を這うものや浮遊性のものなど様々な環境に応じて存在しています。
毎分1~10cmしか進まない“のんびり屋さん”ですが、寿命は5~10年。どうやって生き延びるのか不思議になってしまいます……。
ナマコの体と防御ワザ
ナマコの体は90~95%が「水」です。目や耳、血管や心臓もありません。皮膚の神経で光を感じることが出来るので明るさは分かるのだとか。この体でどうやって海の中で生き延びるのか不思議に思いますよね。
実はナマコの体内にはホロスリンという物質があり、この物質が魚にとって毒となるので、捕食されないそう。
さらに、ナマコに刺激を与えると肛門から白い糸状の組織を吐き出します。これを「キュビエ器官」といいます。キュビエ器官は魚のエラに絡みついて呼吸を止めたり、体表にねばねばとまとわりつき行動を封じるといったナマコ特有の防御ワザなのです。
マナマコなどキュビエ器官を持たないナマコもおり、それらは腸管を肛門や口から放出し身を守ります。ナマコは再生能力にも長けているため、約3ヶ月で腸は元通り。もし体が切られてもトカゲの尻尾のように再生するのです。
ただのんびりしているだけでなく、ちゃんと生きる術を身につけていたのですね。
脱力して生きるナマコ
わずかな栄養素で生きているナマコは最低限のエネルギーで動いています。ナマコの体表はコラーゲンから成るため伸縮性があり、さらにその皮膚の中にはキャッチ結合組織という仕組みで自在に体表を硬くしたり柔らかくしたりを繰り返しています。
このキャッチ結合組織は筋肉とは別で、筋肉を動かすよりはるかに少ないエネルギーで働くため、ナマコは少ない栄養で生きていけるのです。
平凡に海に存在する生物だと思っていたナマコ。難なく生きていると思っていたナマコ……。のんびりしているようで本当はとても賢く生きているその姿には、私たちも学ぶ部分があるように思えます。
<南あずま/サカナトライター>