Yahoo! JAPAN

【連載】キッチンの必需品!シェフが惚れ込む調味料3選 岩坪 滋さん(イル プレージョ)

料理王国

【連載】キッチンの必需品!シェフが惚れ込む調味料3選 岩坪 滋さん(イル プレージョ)

一流シェフたちが「自分の料理に欠かせない」と惚れ込む調味料とは、どのようなものか? この連載ではシェフに愛用する3種類の調味料を紹介する。

今回登場するのはイタリア料理レストラン「イル プレージョ」の岩坪滋さん。

いわつぼ・ゆたか
1978年東京都生まれ。調理師学校卒業後、「アクアパッツァ」に入り5年間働いたのちに渡伊。ピエモンテ州、カンパーニァ州、ヴェネト州、サルディーニャ島で働きシチリア島でも研修するなど、イタリアの北から南までの料理と食文化を3年間にわたり学ぶ。帰国後「リストランテ カシーナ・カナミッラ」料理長などを経て2012年10月「イル プレージョ」を独立開業する。

              *****

岩坪さんが調味料を選ぶ際に重視するのは、まずは個性。そして生産者や流通業者の情熱も大きいという。今回紹介したものはいずれも、熱い思いを持つ人が介在している品。だからこそ生まれる高い品質、際立った個性に岩坪さんは惹かれている。

【トップシェフが選ぶ調味料①】カメルーン ペンジャ産 白コショウ


(フランス テール・エクゾティック社 輸入元 デニオ総合研究所)

品質、独自性、希少性を徹底的に重視し、世界からスパイスを集めているテール・エクゾティック社。ペンジャ産のコショウは同社の創業者が最初に虜になり、会社設立のきっかけになったという特別なアイテム。岩坪さんが惚れ込んだのは、そのペンジャ産の白コショウだ。

「まず、香りが通常の白コショウと異なり、どことなく動物的、野生的な印象を受けます。そして挽いたものを口に含むと、『ガンッ』と辛みがくる。最初に試食した時、『辛っ!』てびっくりしました。しかしその後、キレよくスッとさわやかに消えます」。

このように、非常に力強く、かつ上質な風味を持つのが特徴。辛さは強いが、ほどよいタイミングでさっと消える点も独特だ。

これだけの個性を持つコショウなので、使い方には注意が必要、と岩坪さんは言う。「うちでは白コショウは、このコショウと通常の白コショウの2種類を使い分けています。通常のものは素材の下味付けなど幅広く、いわゆる一般的な使い方をしますが、ペンジャ産のものは料理の仕上げに挽きかけることが多いです」。

たとえば、バルサミコを使い甘辛く炊いたアナゴを用いた料理の仕上げにかける。そうすると甘辛味が引き締まる。クリーミーなパスタにもよく合う。

「ここぞ、という時に使います。あえて、お客さまの前で料理に挽くこともあります。立ち上る香りが格別です」。

【トップシェフが選ぶ調味料②】瀬戸内コラトゥーラ (宇佐川株式会社)

こちらの製品は、山口県の東部、瀬戸内海に面した佐賀漁港にて作られている魚醤。生産者である宇佐川滋さんが、自ら水揚げしたカタクチイワシを塩漬けにして作られている。

「この魚醤は、宇佐川さんが6年ほど前に直接店に営業に来てくれて知りました。雑味がまったくない。旨味が強いけれどまろやか。驚きましたね」。イタリア産のコラトゥーラと比べても断然にこちらの方が深みがある。それは、熟成期間が、イタリアでは一般的には1年間ほどだが、瀬戸内コラトゥーラは7年間もかけているからだろう。

「『この魚醤はすごい!』と、料理人仲間と生産現場を見に行ったことがあります。そこで、水揚げから塩漬けまでのスピーディーさを目の当たりにし、なるほどあれだけクリアな味わいにいなるんだ、と納得しました」。

また、宇佐川さんの情熱の強さにも圧倒されたという。「彼はコラトゥーラの名産地、イタリアのチェターラにまで行って学び、そこに独自の工夫を加えた方法で作っているようです」。

そして「イル プレージョの料理に瀬戸内コラトゥーラは欠かせません。至るところで使います」という。パスタの隠し味に、焼きなすの味付けに、魚や肉のマリネ液に。

「数滴たらすだけで、別世界になる。料理を下支えしてくれる。これがないと、うちの厨房は困ってしまうくらい大切な存在です」。

【トップシェフが選ぶ調味料③】エストラット・ディ・ポモドーロ(ソーロ ソーレ社 輸入元PIATTI)

エストラットとはイタリア南部の伝統調味料。トマトペーストを板に塗り付けて天日に干し、味噌状になるまで乾かしたものだ。今では機械で乾燥させるメーカーが主流だが、岩坪さんが紹介するこちらは昔ながらの製法。シチリア島の東部にあるカターニア県パテルノーで手作りされている。

このエストラットは、硬さが出るまでしっかりと乾燥させたもの。口に含むとまずは日本の八丁味噌を思わせる濃厚で凝縮感のある旨みが訪れるが、最後には「これぞトマト」という風味や酸味が現れる。そのトマトの風味は、フレッシュ感と凝縮感が併存しているような独特の印象を残す。

「まさに、おばあちゃんが作る保存食です。天日の力なのでしょうか? 他にはない強い旨みと風味が生まれるんですね。そこに惹かれます」。

岩坪さんはこのエストラットを使いやすいようオリーブオイルで溶き、ゆるめのペースト状にしているという。「野菜、魚、肉のいずれにも合います。パスタのラグーソースをはじめとする煮込み料理に入れるのは定番です」。

変わり種として、こんな料理も――イワシのタルタルをこのエストラットで和え、先ほどの瀬戸内コラトゥーラをたらす。こうしたら『なめろう』を思わせる一品になったという。

岩坪さんとこのエストラットの出会いは6年ほど前、イタリア食材店「ピアッティ」(東京・駒場)にて。「店主の岡田(幸司)さんは、とにかく情熱的。現地ですばらしい食材を探し、仕入れている人。信頼しています」と話す。

取材・文・写真 =柴田泉 

柴田泉
東京多摩地区生まれ、横浜育ち。大学で美術史を学んだのち、食の専門出版社「柴田書店」に入社。プロの料理人向けの専門誌『月刊専門料理』編集部に在籍し、編集長を務める。独立後は食やレストランのジャンルを中心とするライター・編集者として活動する。

【関連記事】

おすすめの記事