国産最高峰の高級エビ『ブドウエビ』は飛び抜けた美味しさ 昔は廃棄されていた?
道東の海に咲く深紫の美しいエビ「ブドウエビ」。その味わいを堪能してきました。
道東羅臼の名産エビ「ブドウエビ」
現状では日本でほぼ唯一、寒流の影響を受ける地域である道東。低い水温と複雑な海底地形の影響によって、非常に多種多様の水産資源が水揚げされます。
なかでも最も人々の注目を集める存在が「ブドウエビ」。標準和名はラウスブドウエビというのですが、それで呼ばれることはまず無く、流通上はブドウエビという名前しか知られていません。
ブドウエビは北日本の太平洋側各地で漁獲されていますが、これらは標準和名をヒゴロモエビといいます。北海道・道東の羅臼で水揚げされるブドウエビもかつてはヒゴロモエビと思われていましたが、近年別種であることがわかりラウスブドウエビと名付けられました。
他の産地のブドウエビは深海底引き網漁に少量混ざる形なのに対し、ラウスブドウエビは専用のエビカゴ漁が行われており、ブランドとして知られています。
美味すぎて高級品
羅臼のブドウエビの最大の特長はやはりその味。一般的に知られる高級エビであるクルマエビ、イセエビと比べると、生の状態での甘みは段違いです。
ブドウエビはタラバエビという深海性のエビのグループに含まれており、この仲間には生食で好まれる甘エビ(ホッコクアカエビ)やボタンエビなどが高級エビとして知られています。しかしブドウエビはこれらのエビと同等以上の甘み、更にこれらのエビにはない身の弾力を兼ね備え、もう一段階上の味わいといえます。
それ故に、価格で言えばこれらのエビの何倍もする超高級品となっており、1匹あたり2,000円で食べられれば安い方でしょう。
かつては「捨てるエビ」だった
そんな目が飛び出るほどの高級エビであるブドウエビですが、なんとかつては「未利用エビ」でした。漁獲に混ざっても捨てられていたのです。
タラバエビ科のエビはいずれも身に水分が多く、漁獲時に潰れてしまいやすいという欠点があります。加えて鮮度落ちも早く、かつては水揚げ直後しかその美味を楽しめなかったのです。
しかし近年になって冷凍技術が発達し、東京などの大消費地まで輸送することができるようになったため、その美味が全国的に知られるようになり価値が向上。最高級エビとなったのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>