自分の畑から大豆プロテインを プロスノーボーダー×農家がこだわったのはスイスで感じた環境問題【北海道・長沼町】
HBCがシリーズでお伝えしている「SDGs北海道から未来へ」。
今回のテーマは、13番「気候変動に具体的な対策を」です。
冬はプロのスノーボーダー、夏は農家の二刀流のアスリートがいます。
そんな彼が作ったのが大豆プロテイン。SDGsに深い関わりがあります。
札幌の中島公園を駆け抜ける市民ランナーたち。
毎週日曜日に集まって10キロ以上走り、マラソン大会で優勝する人もいます。
ゴールしたあと手にするのは大豆プロテインです。
実はこれを作っているのが、本業はプロのスノーボーダー、夏の間は農業を営む桃野慎也さん(31)です。
本業は別にあり、農業の繁忙期に農作業を行うパラレルノーカーです。
雪上の格闘技とも呼ばれているスノーボードクロスでは、2016年に日本人初のワールドカップ入賞と全米選手権優勝を果たしました。
2024年からスノーボードアルペンに転向。アルペンはポールを通ってスピードを競う競技で、「カービングターンが一番好きで楽しい」1月に長野県で行われたプロツアーでは初出場で優勝を飾りました。
桃野さんは、冬はプロのスノーボーダーとして活動しながらも、夏は空知の長沼町で大豆などを栽培し、その大豆を使ったプロテインの商品を開発しています。
きっかけは、けがをしたときに受けたアレルギー検査でした。## ホエイが身体に合わない、実家の大豆に着目して…
アレルギー検査を受けた桃野さん。
乳製品、ホエイが合わないと医師に告げられました。
「ホエイ、乳製品が合わないと言われて、『ソイ(大豆)プロテインを飲め』と指導されて、そこから勉強するようになって」
牛乳からできるホエイプロテインは体内への吸収も早く、アスリートに人気です。
一方、体質に合わない人も多くいるという現実があります。
大豆のプロテインを試すと、「身体に合う」と実感。
ホエイプロテインを飲んでいたときに悩まされた、肌荒れなどもなくなりました。
大きなけがが続いた20代後半。栄養について勉強し、大豆プロテインが身体の回復に良いことがわかりました。
そこで目を付けたのが、大豆農家だった実家でした。
「せっかく自分で大豆を作っているなら自分の大豆でプロテイン飲みたいと思ったのが始まりですね」
桃野さんがプロテインを開発したもうひとつの理由。それは私たちに深く関係するある問題がありました。
なぜ、大豆にこだわるのか
長沼町の農道をロードバイクで走る桃野さん。
スノーボードのオフシーズンは農作業中心の生活ですが、トレーニングは欠かせません。
朝の運動のあとは、必ずプロテインを飲みます。
運動後の味は特に最高です。
桃野さんのソイプロテインは、さらさらとして溶けやすく、きなこ味で飲みやすいのがポイント。
桃野さんがプロテイン開発にこだわる理由は、毎年、海外遠征で訪れるスイスでの経験が大きく影響しています。
「(スイスは)電気自動車しか走っていないんですよ。10年以上前からガソリンの自動車は禁止で。氷河が年々少なくなっているというのも自分自身感じていたり」
スイスでは地球温暖化によりアルプスの氷河が年々溶けていて、人々の環境問題への意識が高まっています。
そんなスイスで過ごすうちに、桃野さん自身も環境問題を考えることがぐっと増えていきました。
「自分も何か貢献したいなとずっと思っていたんですけど、農業やプロテインを通してならできると思った」
牛などの家畜のゲップから出るメタンガスが、地球温暖化に深刻な影響を及ぼしています。
そのため、プロテインをホエイの動物性タンパク質から大豆の植物性タンパク質にすることで、地球温暖化の加速を止めることができると考えています。
プロスノーボーダーと農家の二刀流であるパラレルノーカーの桃野慎也さん。今後も新たな挑戦が続きます。
「この町はスキー場やスポーツセンターもあるが、まだオリンピック選手が出ていない。まだ先は長いけど、オリンピックは目指していきたい」
桃野さんはインドに住む貧しい子どもたちが栄養不足で、特にたんぱく質が足りないことを知り、2023年から無償でプロテインを送っています。
今後も育てた野菜で新たな商品を開発したいということです。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年5月13日)の情報に基づきます。