【ミリオンヒッツ1995】新生B’zの第1弾シングル「ねがい」迫力サウンドの秘密はどこに?
リレー連載【ミリオンヒッツ1995】vol.7
ねがい / B'z
▶ 発売:1995年5月31日
▶ 売上枚数:149.9万枚
新生B’zの第1弾リリースとなった「ねがい」
B'z Unreal Music の頭文字から名付けられた “B+U+M”。B'zの松本孝弘(g)と稲葉浩志(vo)が、“自分たちのみでは実現できない音楽を実現する” という目的で結成した音楽制作集団として、4枚目のシングル「BE THERE」(1990年)からその名前がクレジットされ始めた。
B+U+Mのメンバーは、アレンジャー&ベーシストの明石昌夫、レコーディング・エンジニアの野村昌之、ドラマーの田中一光などで構成されていたが、1994年のシングル「MOTEL」を最後に解体される。今回のコラムで取り上げる1995年のシングル「ねがい」は、B+U+M解体後初のシングルで、プライベートレーベル “VERMILLION” を発足した新生B’zの第1弾でもある。
国内トップのスタジオドラマー山木秀夫の参加
作詞は稲葉浩志、作曲は松本孝弘。注目すべきは松本と稲葉の名前が並んだ編曲クレジットで、稲葉が編曲に参加した最初の作品となった。演奏には、中村 “キタロー” 幸司(b)、山木秀夫(ds)、小野塚晃(key)に加え、勝田かず樹(sax)、佐々木史郎(tp)、小林太(tp)、中路英明(tb)のホーンセクションが参加。併せて、生沢佑一と千葉彩由実がコーラスを加えている。
中でも注目なのが山木秀夫(ds)の参加だ。市川秀男トリオ、マライア、SHŌGUNなど、ジャンルを超えた多才な活動のほか、こういった曲のドラムスを担当していた国内トップのスタジオプレイヤーだった。
▶ 河合奈保子「愛してます」(1981年)
▶ 佐野元春「彼女はデリケート」(1982年)
▶ 上田正樹「悲しい色やね」(1983年)
▶ 稲垣潤一「夏のクラクション」(1983年)
▶ ALFEE「星空のディスタンス」「STARSHIP -光を求めて-」(1983年)、「恋人達のペイヴメント」(1984年)、「シンデレラは眠れない」(1985年)
▶ 中原めいこ「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」(1984年)
そのため、多くの作曲家や編曲家からのファーストコール・ミュージシャンとして、スケジュール調整が困難だったが、B’zは山木のスケジュールの都合がつくまで待ち続け、待望のレコーディングへと至ったわけだ。山木は本作品以降も1997年の「FIREBALL」など、多数のシングルでプレイ。2002年リリースの「熱き鼓動の果て」ではミュージックビデオにも出演している。
ジャズの手法をポップスに取り入れた、新生B'z
本楽曲のリズムは、スティーヴィー・ワンダー「迷信」(1972年)や、エアロスミス「ウォーク・ディス・ウェイ」(1975年)などのようなバウンス16ビート。16分音符を3連符のように跳ねさせるファンキーなリズムになっている。
イントロとAメロはファンクネスなサウンドを生み出しながらも、Bメロからはコードチェンジが頻繁になり、メロディアスなサウンドを生み出す。そしてサビでは、全音上のキーに転調。通常、曲の後半で使用されることの多い転調の手法だが、ワンコーラス目のサビに持ってきているのが斬新で、場面展開されたことを明確に感じ取ることができる。
また、松本のギターソロは、わずか8小節ながら緩急に満ちた構成だ。ギターもこれまでのレスポールの力強い音色から、ストラトキャスターやテレキャスターといった歯切れが良くクリアーな音色のギターを使用。歪みも以前よりは減少している。
B'z新章の幕開けとなる作品
同年発売のアルバム『LOOSE』には、本楽曲の別テイクとなる「ねがい("BUZZ!!" STYLE)」が収録されている。こちらは、青山純(ds)と明石昌夫(b)によるリズムセクションで、シングルバージョンにも参加していた小野塚晃、勝田かず樹、佐々木史郎、小林太、中路英明といったラインナップ。
イントロのジャジーなソロピアノが3小節追加されたり、間奏が4ビートのノリのベースランニングになるなど、ジャズ色を増しながらも、ドラムブレイクや新たなギターリフも加わりロック色も倍増して、よりパワフルなサウンドに仕上がっている。ともあれ、今までにはなかったプレイヤーとの共演からアレンジやサウンドの幅が広がり、B'z新章の幕開けとなる作品となったのは間違いないだろう。
なお、アルバムバージョンでベースをプレイした明石昌夫は、今年2025年5月19日に68歳で急逝。B+U+Mでの活躍はもちろん、B’zの多くの楽曲で編曲やベースを担当した故人の冥福を祈りたい。