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高円寺の古着店『anemone』で出合える、時を超えて愛用したい大人の上質アイテム

さんたつ

高円寺 anemone

高円寺駅南口から徒歩5分ほど、高円寺パル商店街に近いお寺の門前にある『anemone(アネモネ)』。アメカジなどカジュアルなアイテムをそろえる古着店が目に付く高円寺だが、『anemone』はメンズ・レディース共に、状態のいいヨーロッパのブランドアイテムを多く扱う。古着好きというよりもファッション好きが足繁く通うお店で、開店前から行列ができることもしばしば。お店に足を踏み入れると、シルエットが美しく、生地に触りたくなるアイテムが見えてくる。

anemone(アネモネ)

廃業したブランドが手がけた幻のアイテムとの遭遇も

看板は入り口近くに控えめに置かれている。

『anemone』の看板はかなり控えめ。その代わり、お店の前にいくつも置かれた植物が目印だ。

決して広いとは言えない店内に、コートやジャケット、セーター、バッグや靴と、幅広いアイテムがディスプレイされている。靴やバッグなど皮革製品はきれいに磨き上げられ、どのアイテムも大切に扱われているのが分かる。

左から2番目が「TANINO CRISCI(タニノクリスチー)」のデッドストック。8万9990円。

お店の奥に、ひときわ美しい紳士靴が4足並んでいた。スタッフの鈴木彩花(あやか)さんが左から2つ目の靴を持ち上げて、「これは『TANINO CRISCI(タニノクリスチー)』の、デッドストック(未使用品)です」と教えてくれた。老舗のイタリアブランドだった「TANINO CRISCI」だが、2010年代初めに営業を終了。今では幻の名靴と呼ばれていて、デッドストックは大変貴重なものらしい。

色合いが美しく、肌ざわりのいいセーター。

他にもアパレルブランドが生産国を変更する前に作ったアイテムや、高級メゾンのOEMを請け負っていた工場が作ったもの、80年代や90年代に生産された布も縫製もしっかりしたアイテムなど、もはや新品では手に入らない品質のものを見つけられる。それが『anemone』に、ファッション好きが多く通う秘密だ。

品揃えが豊富な「バーバリー」のトレンチコート

レディースのニットやコートも豊富。長く着られるスタンダードな形のものが多い。

『anemone』では、コートやニットなど、冬に活躍するアイテムを1年中店頭に並べている。特に英国ブランド「バーバリー」のトレンチコートの品揃えが豊富なお店であることが有名だ。

「トレンチコートには、袖を2枚の生地を縫い合わせている2枚袖と、1枚で仕立てられた1枚袖というものがあります。バーバリーでは1枚袖のトレンチコートをもう生産していなくて、探している方が多いですよ」と鈴木さん。

「バーバリー」の1枚袖のトレンチコート。袖までライナーが付いて14万9990円。

2枚袖はトラディショナルでカチッとした印象があるのに対して、1枚袖は肩から袖口まで流れるようなシルエットが美しい。ラックに20着近くかけられているトレンチコートから選んで見せてくれたのは、そのバーバリーの1枚袖のトレンチコート。防寒性を高めるライナーが、一般的なベストのような形ではなく袖まである珍しいものだ。

トレンチコートは、ベルトや肩のエポーレットなど付属品が多く、どれかが欠けてしまっていることも少なくない。その中でもまさに美品で、生地の質感やシルエット全体にうっとりしてしまう。おそらく初代の持ち主は、コートと袖までのライナーを一緒に購入し、大事に扱っていたのだろう。そんなアイテムの来し方まで想像できる。

お店に来た人に、かっこよくなって帰ってほしい

カジュアルなジャケットは「Caruso(カルーゾ)」で8万9990円、シャツは「ORIAN(オリアン)」で1万990円。日常に取り入れられそうな組み合わせ。

ラックにかかっているジャケットなどを手に取ってみると、中にシャツやニット、ネクタイなどが隠れている。「アイテム1点だけを見ていると、どう合わせたらいいか分からないというお客さまも多いので、イメージがつかみやすいようにしています」と鈴木さん。手持ちのアイテムとの組み合わせや他にどんな色のアイテムと合わせればいいかなどイメージしやすいし、パッと手に取った時に、その下に並んでいる靴との相性も想像しやすい。

スコットランドのブランド「GLEN FYNE(グレンファイン)」のキルトスカート1万7990円。ブーツと合わせたい。

鈴木さんは、『anemone』で働き始めて、1年半。百貨店の紳士靴売り場勤務の経験を持つ。「『TANINO CRISCI』など、新品の売り場にはもう並ぶことがない、上質な靴があるのを見て、洋服など他のアイテムも信頼ができると思いました」と、『anemone』を新たな職場に選んだ理由を教えてくれた。

スタッフの鈴木彩花さん。スタイリングは、すべて『anemone』で入手したアイテムでパンツは「Paul Stuart(ポールスチュアート)」。

ファッションアイテムの販売という意味では同じだが、仕事のスタイルは大きく変化したという。「以前も気持ちを込めて接客していましたが、今は、せっかくお店にいらしたのだから、かっこよくなって帰っていただきたいという気持ちが強くなりました」と、頼もしい。幅広いアイテムやブランドを扱うことになり、それに関する勉強も欠かさない。

『anemone』を訪れるのは、主に30代から50代と幅広い。オーダーメイドを経験して素材のよさを重視するようになった人、若い頃に百貨店で見て憧れていたブランドアイテムを改めて注目している人たちも多いという。大人になったからこそ、改めてファッションを楽しみたい人にもぴったりのお店だ。

anemone(アネモネ)
住所:東京都杉並区高円寺南3-56-1 藤和高円寺103/営業時間:13:00〜20:00/定休日:無/アクセス:JR中央線高円寺駅から徒歩4分

取材・文・撮影=野崎さおり

野崎さおり
ライター
2016 年よりライターとしての活動を開始し、複数のweb媒体で食べ物やお出かけネタを中心に執筆。おいしいものはもちろん、作る人とその背景に興味あり。都内をバスか徒歩で移動するのが好き。

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