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南仏の三つ星シェフ、マウロ・コラグレコがロンドンで英国テロワールを讃える

料理王国

南仏の三つ星シェフ、マウロ・コラグレコがロンドンで英国テロワールを讃える

南仏でミシュラン三つ星レストランを運営するアルゼンチン出身のシェフ、マウロ・コラグレコ氏がロンドンに初進出。地球に優しいバイオダイナミック農法で育った野菜を中心に、調和あふれる料理を生み出している。

クリスマス・シーズンたけなわのロンドンから、今年最も華やかなオープニングの話題をお届けしよう。

英国初進出のラッフルズ・ホテルが9月末にオープンし、業界はこの話で持ちきりなのだ。世界的なラグジュアリー・ホテル・ブランドがようやくロンドンに上陸したから? それもあるが、実は新しい3つのレストランを取り仕切るのが、フランスの三つ星シェフ、かのマウロ・コラグレコ / MauroColagreco氏(写真上:©︎Matteo Carassale)その人だから、というのが注目の主な理由なのである。

コラグレコ氏と言えば2021年にワールド・ベスト・レストラン50で「ベスト・オブ・ザ・ベスト」に輝いて一躍時の人となった。その礎となっているのが、2006 年に南仏マントンに創業したレストラン、Mirazur / ミラズール(現在ミシュラン3つ星)である。

彼はここで環境問題に対して独自の取り組みを進め、レストランとして初めて「プラスチック不使用」の認証を取得。持続可能な選択をし続け、シェフとしての環境責任を意義ある形で果たしていることから昨年11月、ユネスコから生物多様性親善大使に任命された。これはシェフとして初の快挙であり、世界のトップシェフの集団からさらに抜きん出ることになった。

コラグレコ氏はアルゼンチン出身。コラグレコ家に代々伝わるレシピで作ってくれる焼き立てパンは絶品。パンにはポエムが付いてくる。

レストラン「マウロ・コラグレコ」の先付け4品。味のセンセーション。

ホテル内にオープンしたのはファイン・キュイジーヌ「マウロ・コラグレコ」、シェフズ・テーブル「マウロズ・テーブル」、そして地中海ブラッセリー「セゾン」の3つ。今回は「マウロ・コラグレコ」のテイスティング・メニュー(5品)でシェフの世界へとダイブしてきた。

地元産の旬の食材にフォーカスするのが、コラグレコ流。つまり今回のテーマは「英国のテロワール」だ。持続可能な方法で運営している国内生産者を厳選し、英国産の 70 種以上の果物や野菜を使って料理が生み出される。シェフのお気に入りは、バイオダイナミック農法で育てられた農産物だという。

ちょうどテーブルに回ってきたコラグレコさんご本人に、英国のテロワールは実際どう?と聞いてみると「予想していたよりも格段に素晴らしい! 英国の食材は誤解されていると思う」とのこと。自ら選んだ生産者への敬意が感じられる回答だった。

先付けのカナッペ4品はパステル調でなんとも言えず可憐な佇まい。口当たりは軽いが4種それぞれメリハリが効いて非常に洗練されている。以降の5品には魚や肉が使われていようとも、あくまでも主役は植物であるらしく、それぞれ「ニンジン」「レタス」「キクイモ」「ラディッキオ」「シトラス」とメニューの名前が付けられている。

「Carrot」。シーバスをニンジンで巻いた美しい一皿。オレンジ、シーバックソーンの酸味と鮮やかな味が特徴。ソースには昆布出汁も隠し味として入っている。宝石のようなタピオカ・パールを添えて。

「Lettuce」。南ロンドンの水耕栽培ファームで作られたレタス。オーダーしてから栽培し、2週間で到着するという。スモークした白味魚がアクセント。貝類の旨味とベルモットを合わせたコクのあるソースが絶品で、非常にクリエイティブで人気のある一皿。

「Jerusalem Artichoke」。キクイモをテーマにした一品には、アンコウを使っている。キノコとヘーゼルナッツのソース。完璧な組み合わせ。

「Radicchio」。ウェールズ産の有機鹿肉と、ポーチしたラディッキオの一皿。アーモンドとガーリックのソース+ビーツのソースとともに。

味の濃さ、香りの立ち具合、食材の組み合わせ、複雑さ、バランスなど、どれをとっても申し分のない仕上がり。複雑な味をあくまでもシンプルに昇華させる技術。野菜の良さを引き出し、堪能してもらおうという意気込みが随所に感じられ、そこに伴奏させるソースもとにかくキリっと主張してくる。

一つ特徴をあげるとしたら、全体的にさまざまなシトラスの風味をうまく使っていることだろうか。ビネガーとは違う爽やかな酸味がそこはかとなく感じられ、素材の味を引き立てている。自然界のリズムとマッチしているようにも感じられた。

それを証明するかのように、最後の5品目のデザートは「Citrus」。ブラック・レモン・アイスクリームと、ヨーグルトの泉の上に、クリスピーなラビオリのシェルがのっかる爽やかデザート。シェフの本拠地である南仏マントンは柑橘類の名産地であることも、関係しているのだろうか。

デザートの前にチーズ・セレクションをいただく。合わせるのはポート・ワインRamos Pinto 20 Year Old Tawnyの世界に4本しかないというジャイアント・ボトル。

チーズ・トローリーのなんと豪華なこと! 全てブリティッシュ・チーズ。贅沢の極み。

右が「Citrus」。ブラック・レモンのアイスクリームのフレーバーが上品で情熱的。

豪華と言うよりも、清楚なイメージ。野菜の清冽なみずみずしさや旨味、甘さなどが最大限に引き出されるよう調理され、絶妙なソースが選ばれる。無駄のない、農業と直結した世界がそこにある。

そして世界に一人しかいないマウロ・コラグレコ氏がキッチンにおられた日、幸運にもテイスティング・メニューをいただくことができて何よりだった。またいつかチャンスがあれば、次の季節料理をいただきに戻ってきたい。(コラグレコ氏は今年10月には東京にも進出。大手町に「CYCLE」をオープンさせているので、皆さんはそちらでチャンスを掴んでいただきたい。)

締めのプチ・フールまでクラフトマンシップが行き渡る。アップル&ラベンダー、チョコレート&セサミ、ホワイトチョコ+レモンバーベナ、マシュマロノット。目が覚めるような個性的な面々。

Mauro Colagreco at Raffles London at The OWO
https://www.raffles.com/london/dining/mauro-colagreco

text・photo:江國まゆ Mayu Ekuni

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