家を追い出された僕がプロボクサーになるまで～内藤大助さん
TBSラジオ「コシノジュンコ MASACA」毎週日曜夕方5時から放送中！
11月26日（日） 放送後記
内藤大助さん（Part 1）
1974年北海道豊浦町生まれ。1996年にプロデビューし、第49代日本フライ級チャンピオン。第35代東洋太平洋フライ級チャンピオン、32歳の時にはWBC世界フライ級チャンピオンと数々ノタイトルを獲得。42戦36勝3敗3分、23KOの戦績を残して2019年に引退し、現在はタレントとして活動しています。
出水：北海道の豊浦町ってどのあたりにあるんですか？
内藤：南北海道の、地図でいうと北海道の左下ですね。近くに有名な洞爺湖がありまして、温泉地でもあって、高校生の時はホテルの厨房でずっとアルバイトやってました。すごくかわいがってくれた先輩の調理師さんがいて、「大助、高校卒業したら就職どうするの？」「まだ決めてないんです」「よかったら俺と一緒に働かないか」って言ってくれたんですよ。もう嬉しくて「はい、就職します！」って入社試験も受けて、あっさり受かりました。高校卒業してからも春休み期間中バイトして、そのまま入社式を行う予定だったんですけど、僕がアホで・・・
JK：どうしたの？
内藤：ある日先輩に仕事中怒られたんですよ。いろいろあって、僕も態度悪かったんです。ふてくされたりして。そしたら「大助！そんなんで就職できるのか！」って。それを言われた僕は「くそ～、あんたがいるから就職するって決めたのに、なんだよその言い方！」って、ホテルの上司に「厨房で働きたくないです、部署を変えてください」って言っちゃったんです。そしたら優しい上司は「僕には異動できる権限はないんだ、総支配人に聞くだけ聞いてあげる」って言われて。次の日上司のところへ行ったら、「総支配人に『そんなこと言ってるのか、じゃあいたくない』って言われちゃったよ」「そうですか、じゃあしょうがない、厨房で続けます」「違うよ内藤君、君はもうここで働けないんだよ」「エーッ‼‼」って、入社式直前でクビですね（^^;）
出水：えーっ！！
内藤：ずっと母子家庭だったんですけど、次の日の朝母親から叩き起こされて「お前、出ていけ」って。離婚した父が埼玉のほうで木工場を経営して、僕の兄もそこで働いてたんです。「お前、内地に行け」「はぁ？ いかねぇよ」「うるせー！ もうチケットも取ったから！」って。
JK：母子家庭だから責任感があったのね。厳しさがすごいわね。
内藤：めちゃめちゃ厳しい人でした。父親代わりをしなきゃいけないって言ってたこともありますし・・・ま～ぁ生まれてこの方一度も褒められたことないです。
JK：今でも？ チャンピオンになっても？
内藤：それが（^^;）プロボクサーになったのも、20歳のとき、たまたま現場仕事でお昼休みに近くの本屋さんに行って、なぜか格闘技の本を買ったんです。そしたらボクシングジムの紹介があって、自分の家に近いところにジムがあることが分かって。「こんな近くにプロジムがあるのか！」と思って胸がどきどきしたんです。学生の時にいじめられてたんですよ。大人になっても、田舎に帰ったらまたいじめられるんじゃないかと怖くて、それを払拭できるんじゃないかと。
JK：強くなんなきゃ、ってね。
内藤：それで勇気を振り絞って・・・ただ親に言ったら怒られるのは目に見えてたんで、親にはずっと内緒でボクシングジムに通ってました。そこで約1年がんばったんですけど、また別のジムに行って本格的に練習して。僕やるとなったら結構まっすぐになっちゃうんで（^^） ちょっと遠回りしたんですけど、やっと22歳でプロテストの話をもらったんですよ。「やっときたか！ でもさすがに親に言わないとダメかなぁ～」と思って、とうとう言ったんですよ。「俺さ、東京でスポーツジムに通ってるんだ」「んん？ 何のジムだ？」「ボ、ボクシングのジム」「お前、何やってるんだ、殴り合いさせるために上京させたんじゃないんだ！」
JK：親からすれば、殴り合いって感じするわよね（笑）
内藤：「ちくしょう、俺のこと勝手に追い出したくせに、何言ってんだ！」って。そこからしばらく話しませんでした。その数か月後にプロテストに受かって、電話で「プロテスト受かったよ」って言ったら、親もあきらめてて「絶対人なんか殴るなよ。喧嘩なんかしたら承知しないぞ」って。それでデビューして、って感じです。
JK：この10分ぐらいの間にものすごいストーリーを聞いたわ！
出水：デビュー戦についてお伺いしたいんですが、1ラウンドKO。デビュー戦でこれだけセンセーショナルに勝てる選手ってそうそういないんじゃないですか？
内藤：僕2つのいじめに遭ってたんです。ひとつはグループ、ひとつは身体の大きい不良から暴力と金。でもボクシング毎日々々練習して、精神的にも肉体的にも強くなっていったんですよ。ボクシングって同じ体重の人としかやらない。ハンデがない。同じウェイトだと意外と強かったんですね。運動神経は自信があったんです。作戦も考えましたね。こう見えていろいろ策士というか（笑）フェイントもKOパンチも、最初から考えてた通りに当たって。
JK：えっ、そうなの？！ 作戦通り？！
内藤：こう構えて、ボディねらいだ！って、最後にジャブボディを目線と一緒に、右手を思いっきり顔面にパーンッ！って。それでダウンを取って、その後また倒して。
JK：かっこいい！ それが運命だったのかもしれない。いままで試練がたくさんあったじゃないですか。それがあるから、吹っ切れて今！って。
内藤：そうそう、おっしゃる通りで、ずっとネガティブなマイナス思考の人間が、ボクシングを始めて、いろんな人に出会って・・・一度同じジムの人に指摘されたことがあるんです。「内藤君っていつもマイナス思考だよね。俺はプラス思考でしかないよ」って。それを聞いた時に「何をバカなこと言ってるんだ、お気楽だ。それが人間をダメにするんだ」って思って。でも後からボディブローのようにじわじわ効いてきて、「そういう風に考えられたらいいな、自分もそうなってみたいな」って考えた結果、「プラス思考を心がけよう！」って。でも臆病なところもあって。やっぱり上に行く人って臆病だと思います。
JK：ちょっと調子に乗るとダメですよね、見透かされるから。謙虚でいかないと。
内藤：そうそう。あとは「まだまだ精神」があったんです。うちの母親がすごく厳しい人で、運動会で一等賞とっても「そんなのはまだまだだと思え！ 上には上がいるんだ、満足するんじゃない！」って。侍っぽいんですよ。
JK：かっこいいわね！
内藤：でも、それを見習ってる自分がいました。ただ、世界チャンピオンになるかならないかの時、一生懸命練習してて、トレーナーに「明日はオフにしよう」って言われたんです。今までは週1の休みだったんですが、「これからは週休2日にする」って。「その代わり残り5日は厳しいトレーニングが待ってるぞ。週明けからスパークリングだから明日は休め」って。でも僕は精神的にチキンだから、次の日練習しちゃったんですよ。やめろって言われたのに。それでスパークリングしたら、トレーニングに「昨日休んだはずなのに、あんまり出来が良くなかったな」って言われちゃったんです。
JK：へぇ、そんなもんなんですか。
内藤：それで僕もよかれと思って、「実は昨日、がんばってトレーニングやったんですよ」って言ったんです。すごいなと言われると思って。そしたら顔が曇って、「俺が練習休めって言ったのに休まなかったってことは、明日練習やれって言われてさぼったことと一緒なんだよ！！」って言われて。「俺は計算してトレーニング内容を伝えてるんだ、やればやるほどいいっていう時代じゃないんだ！ お前、それを・・・」って怒られて。でも怒られてからは絶対守ろうって決めて。
JK：努力すればいいっていうのとは違うんですね。でもそういう厳しい環境で着々と力をつけたわけだから、いい人に出会ってますね。
内藤：本当、そうなんです。まずは自分に勝たないと。なんでもそうだと思いますけどね。
==OA楽曲==
M1. Romanticが止まらない / C-C-B