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捨てるはずだった廃棄物をエサにしてカブトムシを育てる

TBSラジオ

お盆が明けて夏休みも後半戦ですが、今日は、子どもたちに人気の昆虫「カブトムシ」のお話です。といってもこの話、カブトムシが環境問題にもひと役買っているということなんですが…。

「カブトムシ」の力でゴミを減らす

週末、千葉の「船橋競馬場」でイベントを開催していた「名成(めいせい)レーシング」の鈴木 伸明さんに聞きました。

名成レーシング・代表取締役 鈴木 伸明さん

「船橋競馬場から出た廃棄物」を使って、カブトムシを育成していこうっていうプロジェクトなんですけど、藁とか、おがくずとか、かんなくず、木を削ったものですね。を「馬の寝床」にするんですけど、そこで馬たちがフンとかおしっこをして、その廃棄に困ってる。

調教師の先生がボヤいてたっていうか、「これ困るんだよな、捨てる場所もなくて。ゴミとして捨てると高いしな」みたいな。

それを今、発酵させたものを食べさせてる。

まだ現時点では「船橋競馬場産」っていうのはできてないんですけど、来年以降で、船橋産ヘラクレスが誕生できたらっていう思いから、競馬場でカブトムシのイベントをさせてもらってるっていう流れです。

僕、虫触れないんで、こんなカブトムシそんな人気なんだな、っていう感じです。

<「TOMUSHIのカブクワすごいぞ!!」展(船橋競馬場の特設会場にて。開催時間は10時~16時。7月18日~8月30日まで)>

<会場内ではカブトムシやクワガタ、全17種類、約20匹が展示されています>

鈴木さんは、競走馬の寝床に使う「稲わら」などの資材の販売業者で、不要になった稲わらを「幼虫」に食べさせて、「競馬場生まれのカブトムシ」を名物にしたい!として始まった取り組みです。

つまり、ゴミも食べてもらうし、競馬場にお客さんも呼んでもらうという働き者のカブトムシですが、実は結構な大食漢。だいたい1年の寿命の中で、一生涯に500グラム~2キロのエサを食べるため、仮に年間500匹育てる場合、およそ1000キロ(1トン)の廃棄物を、一年間で消費してくれる計算になります。

しかも一匹のメスから、数10個~100個の卵が産まれるので、一度軌道に乗ると、どんどん増えてくれます。

カブトムシそのものが、新たな収益源の一つに

競馬場生まれのカブトムシは、まずは数を増やしていく段階ということですが、こうした廃棄物をカブトムシに食べてもらう取り組み、さらに進んだところもありました。

宮城県でシイタケ栽培を手がけている、「ほっとファーム」の後藤 亮一さんに聞きました。

「ほっとファーム」 後藤 亮一さん

シイタケを発生させるための「土台」が必要なんですけど、木のくず「おが粉」を加工して固めてブロック状にしたものですね。

シイタケを採り切ると廃棄しなきゃいけなくなるんですけど、その廃棄したものが、カブトムシのエサになる。

うちで今、1万匹近い幼虫を育ててるので、食べる量も結構な量になりますね。

で、その大きくなって成体になったものを、今度は、消費者の方に販売をします。

ざっくり言っても数百万ぐらいの利益にはなりますね。

シイタケじゃどう頑張っても届かないぐらいの利益が出るようになりますね。「カブトムシ事業部」っていうのが既に存在してて、日々、飼育であったりですとか、そういうのを行っている感じですね。

そもそもシイタケ栽培で出る廃棄物を食べてもらうために、カブトムシを連れてきたんですが、これが口に合うようで、よく食べるし、よく育つ。

この農園だけでも、年間200トンの廃棄物が出ていて、処分するだけで数百万円の費用がかかっていたそうですが、ここにカブトムシの幼虫を投入すると、相当な"かさ"を減らしてくれるそうです。

しかも、育ったカブトムシをペットとして販売したり、魚のエサの原料などとして活用することで、新たな収入源にも繋がります。

有機廃棄物の処理に特化したカブトムシを開発

ただ、まったくの初心者の後藤さんが、どうしてこんなにうまくいったのかと言うと、ノウハウを提供しているカブトムシのプロの存在がありました。

カブトムシに特化した青森県の会社、「株式会社TOMUSHI(トムシ)」の石田 陽佑さんに聞きました。

株式会社TOMUSHI・代表取締役 石田 陽佑さん

我々がどういうことを目指してやったかっていうと、まずカブトムシって出荷するまでに基本、1年間かかるわけですよ。

で、この1年間のスピードをできるだけ早くできたら、より効率が上がるよねという話で、なのでこれを品種改良することによって、成長速度が速いカブトムシが作れないかっていうことを、創業当時からかなり力を入れてやってきたんですね。

その結果、いま、大体4ヶ月~5ヶ月ぐらいで成虫にすることができるっていうのが、今技術としては持っていると。3倍~4倍ぐらい早く成長してもらって、出荷まできるというようなところまできてますね。

本当、物心ついたときからずっとカブトムシが好きで、「ただのペットだろ」っていうことをよく言われてたんですけど、これが社会には必要とされているビジネスになるんじゃないかなというところで、より力を入れて今の事業に転換していったと。

カブトムシの交配を重ねてエサをよく食べる個体を作ることで、成虫になるまで通常1年かかるところを、4か月のスピードで成長する品種を開発しました。

いまは、全国40カ所の農家や、食品ロスを手掛ける事業者と連携して、カブトムシに廃棄物を食べてもらっているそうですが、将来的に、カブトムシが社会課題を解決する救世主になるあるかもしれません。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:田中ひとみ)

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