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論語を読めば、元気になれる? 心の持ちようが変わる方法【学びのきほん 使える儒教】

NHK出版デジタルマガジン

論語を読めば、元気になれる? 心の持ちようが変わる方法【学びのきほん 使える儒教】

人からひどいことを言われる→傷つく。無視される→悲しくなる。怒鳴られる→ビクつく。当たり前に思えるこれらの反応も、「心のプログラミング(持ちよう)」を書き換えられれば、見え方が変わってくるかもしれません。

『NHK出版 学びのきほん 使える儒教』では、古典漢籍の道を究めた能楽師・安田登さんのガイドで、『論語』を中心とした儒教の考え方を使い、自分を変えていく方法を学びます。

難攻不落の古典と思われがちな儒教の経典を、「実用の書」として読み直す本書の「はじめに」より、著者の安田登さんによる「使える儒教」へのいざないを公開します。

 考えてみれば「不安」や「心配」、そして「悩み」があるって変ですよね。しかも、毎回、ほぼ同じようなことで不安になったり、悩んだりしている。

「それが人間だから」と言う人もいますが、そんなことはありません。だって、赤ちゃんには不安や心配はないでしょ。三歳くらいの子どもにもあまりない。それな
のに多くの大人にはある。

 私が能の稽古を始めたときに、大変なことの一つが謡(セリフ)を覚えることでした。

 それを師匠に言うと「一〇〇回謡えば覚えられる」と言われました。一〇〇回謡いました。ダメでした。次の謡も一〇〇回謡った。それでもダメだった。そこで私よりも何十年も前に入門した先輩に聞いてみました。すると、やはり一〇〇回謡っていると言う。「え、覚えられますか」と聞くと、覚えられないと言う。

 それは変でしょ。「一〇〇回謡う」という行為を何度やっても覚えられない。そうなると、明らかなのは「一〇〇回謡う」という行為が役に立たない、ということです。それなのに先輩は何十年も「一〇〇回謡う」ことを繰り返していました。

 でも、私たちが自分の心でおこなっていることもこれと同じです。人からひどいことを言われる→傷つく。無視される→悲しくなる。怒鳴られる→ビクつく。こういうことを何度も繰り返しています。

「人からひどいことを言われたら傷つくのは当たり前じゃないか」と言う人もいます。そんなことはありません。怒る人もいます。ひどいことを言い返す人もいます。無視する人もいます。言われたことから、自分にとっての有益な情報を引き出そうとする人もいます。人によってさまざまなのです。

 人によってさまざまなその反応は、自分の「心のプログラミング」による自動反応によって引き起こされています。本書では、『論語』を中心とした儒教の考え方を使って、「心のプログラミング」を書き換える方法を教えます。

 私は学生時代に中国古代哲学を学びましたが、正直に言って『論語』などの儒教はあまり好きではありませんでした。説教臭いし、辛気臭い。自由な思想で雄渾な文体である『老子』や『荘子』の方がずっと好きでした。

 しかし、あるとき儒教を見直してみようと思いました。それは、アルバート・ノーラン(一九三四~二〇二二)とカール・バルト(一八八六~一九六八)というふたりのことを知ったからです。ふたりともキリスト教の人です。

 アルバート・ノーランは、ある日、キリスト教の一派であるドミニコ会の総長に推されました。しかし、彼はアパルトヘイト(人種隔離政策)の激しかった南アフリ
カにいた。この悲惨な日々の中、虐しいたげられている黒人たちに寄り添うイエスはいるのか。本来は「よい知らせ」という意味である福音が本当に役に立っているのか。もし、そうでなかったらキリスト教は現代において意味がないのではないか。そう思って、イエスや福音を探し始めたのです。

 また、カール・バルトはスイス出身の牧師です。ある日、信徒の方たちに説教をしているとき、ふと気づきます。自分はイエスの言葉を伝えているのではなく、キリスト教の宣伝マンになっているのではないかと。そこで説教をやめてイエスの言葉をもう一度、真剣に読み始め、イエスと出会うとはどんなことなのかを深く考え
ます。 

 アルバート・ノーランがアパルトヘイトの中でイエスを探し、カール・バルトがイエスとの出会いを真剣に考えたように、私も現代の日本で『論語』は役に立つの
かを考え出しました。

 ちょうどその頃、引きこもりやニートと呼ばれる人たちと関わり始めました。彼らが『論語』で変わらなかったら、『論語』には意味がない。そう思って、彼らと
一緒に『論語』を読み始めました。

 すると多くの人たちが『論語』で元気になっていきました。彼らから話を聞くと、『論語』によって「心のプログラミングの書き換え」ができていたのです。

 そこで本書では、この方法を紹介していきたいと思っています。儒教のいいところは非常に実践的なところ。「やり方」も具体的に書いてあるので、儒教の基本と
合わせて心のプログラミングの書き換え方を学んでいきましょう。

本書では、価値観を新たにしていくこと、心の持ちようを変えること、心の変化で大きな物事を動かすことを、儒教から学びます。儒教の本質が分かれば、楽に生きる術が身につく。あるようでなかった儒教の入門書です。

著者紹介

安田 登(やすだ・のぼる)
下掛宝生流ワキ方能楽師。関西大学特任教授。著書に『能 650年続いた仕掛けとは』(新潮新書)、『すごい論語』『あわいの力』(ミシマ社)、『日本人の身体』(ちくま新書)、『見えないものを探す旅 旅と能と古典』『魔法のほね』(亜紀書房)、『別冊NHK100分de名著 読書の学校 史記』『別冊NHK100分de名著 集中講義 平家物語』『役に立つ古典』(NHK出版)など多数。
※刊行時の情報です

◆『NHK出版 学びのきほん 使える儒教』「はじめに」より抜粋
◆ルビなどは割愛しています

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