駿河湾フェリーがネーミングライツ 条件は年間1000万円超 巨額赤字に県民は…
■黒字化の目安は輸送人員18万人 昨年度は9万9849人
事業の立て直しが急務となっているふじさん駿河湾フェリーがネーミングライツの募集を開始した。年間1000万円以上を条件とし、赤字解消の新たな財源とする考え。ただ、フェリーの売上を伸ばす具体的な道筋が見えず、県民の目は厳しい。
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駿河湾フェリーは昨年度、6375万7000円の赤字となった。赤字の要因には新型コロナウイルス感染拡大で落ち込んだ団体客が回復していないことなどを挙げている。
昨年度の輸送人員は9万9849人で、前年度から約8200人減少した。駿河湾フェリーは黒字化の目安を18万人としているが、半分ほどにとどまっている。
赤字解消の一手として、新たに導入するのがネーミングライツ。駿河湾フェリーに愛称をつける権利で、企業名や商品名の知名度アップが期待できる。
ネーミングライツは、愛称の一部に「駿河湾フェリー」または「富士山(ふじさん)フェリー」を使用することが条件となっている。愛称はターミナル施設で表示したり、ホームページやチラシといった広報物などで使用したりできる。
■8月30日までネーミングライツ募集 愛称は10月1日から使用
愛称は10月1日から使用開始となる。募集金額は年間1000万円以上。8月30日まで募集している。ネーミングライツを取得した企業は、フェリーの2階特別室に付帯するデッキスペースを無料利用できるなどの特典が付いている。
駿河湾フェリーは2019年度、経営不振によって民間企業から一般社団法人ふじさん駿河湾フェリーに運航が引き継がれた。この法人は静岡県と周辺自治体で構成されており、年間1億円あまりに加えて、2026年度までの3年間に計2億6000万円を負担している。つまり、税金が投入されているのだ。年間輸送人員が23万人になれば行政の支援は不要と試算されているが、現状を見る限り現実的な数字ではない。
黒字化が見えない状況に、県民からは悲観的な意見が並ぶ。インターネットなどでは「県民や市民に負担させてまでフェリーを維持する意味があるとは思えない。需要が高まって黒字化するビジョンが見えない」、「ネーミングライツで根本的な問題は解決しない。廃止にすべき。民間企業が断念した事業を自治体が立て直すのは無理」などの声が上がっている。
また、昨年度に約4500万円をかけてフェリーを土肥金山にちなんだ金色に改修したことに対しても「赤字なのに、お金をかけるところが間違っている」、「フェリーの見た目を変えて集客につながるという考え方が安易」といった指摘もあった。
ネーミングライツをきっかけに赤字解消へとつなげていけるのか。駿河湾フェリーに対する県民の目は厳しさを増している。
(SHIZUOKA Life編集部)