ヘッドハンティングとは?引き抜きとの違いやメリット、注意点を解説
近年、ヘッドハンティングによる転職が日本においても一般的になりつつあります。一般的な転職や引き抜きとどう違うのか、疑問に感じている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、ヘッドハンティングの概要や日本で広まっている理由、ヘッドハンティングの流れについて分かりやすく解説します。ヘッドハンティングを通じて転職するメリットとデメリットに加え、実際にヘッドハンティングを受けた際の注意点にもふれていますので、ぜひ参考にしてください。
ヘッドハンティングとは?
ヘッドハンティングとは、経営幹部や専門職などの優秀な人材を他社からスカウトする採用方法のことです。まずは、ヘッドハンティングと転職サービス・転職エージェント、引き抜きとの違いを押さえておきましょう。
転職サービスや転職エージェントとの違い
転職サービス・転職エージェントとヘッドハンティングは、それぞれ異なるアプローチで転職の支援を行います。転職サービス・転職エージェントを利用する際には、求職者が自ら登録を行い、経歴やスキルを提供することからスタートします。その情報をもとに、キャリアアドバイザーが求職者の希望や適性に合った企業の提案を行うという流れです。
転職サービスやエージェントによっては、主にハイクラス人材を対象としている場合もありますが、一般的に多くの業種や職種にわたり、幅広い層の求職者に対応するのが特徴のひとつ。
一方、ヘッドハンティングは、 企業やヘッドハンターが特定の人材をターゲットとしてスカウトする方法 です。転職活動をしていない人に対してもアプローチが行われ、特に高い専門性やスキルを持った人のほか、経営層などが対象となることが一般的です。
引き抜きとの違い
引き抜きとは、他社で働いている人材を企業が直接スカウトすることを指します。ヘッドハンティングの場合は対象者と企業とのあいだに仲介者であるヘッドハンターを挟むケースがあるのに対して、 引き抜きは企業が直接行う という点が大きな違いです。
また、ヘッドハンティングは一般的に専門性やスキルを持った人、経営層などが対象になります。一方で、引き抜きの対象者には、必ずしも専門性やスキル、役職など条件があるわけではありません。
ヘッドハンティングで年収は上がる?
ヘッドハンティングを通じて転職する場合、年収が上がる可能性は高いといえます。転職する意思があるとは限らない優秀な人材を他社からスカウトする場合、 対象者にとって転職するメリットが感じられるかが重要なポイント となります。そのため、ヘッドハンティングの際には現職よりも高い年収を提示されるケースが多いでしょう。
加えて、新しい職場でのキャリアアップが期待できたり、より大きな仕事を任されたりと、給与以外の面でも魅力的な条件を提示される可能性があります。
ヘッドハンティングが日本で広まっている理由
ヘッドハンティングは、元々アメリカで考案された採用手法ですが、近年日本においても広まっています。その主な理由としては以下の3つが挙げられます。
人材が不足しているから
ヘッドハンティングが日本で広まっている理由のひとつは、深刻な人材不足です。日本では、少子高齢化による生産年齢人口の減少が進み、高い専門性やスキルを持つ人材や、経営層の候補となる人材を確保することが難しくなっています。多くの企業が限られた優秀な人材を求めて採用活動を行っており、採用市場は一層厳しい状況です。
また、優秀な人材はすでに安定した環境で働いていることが多く、みずから転職活動を行う動機が低い場合があります。
こうした人材は、転職サービスや転職エージェント経由では見つからない可能性が高いため、ヘッドハンティングを活用して積極的にアプローチする必要があるのです。
高度な専門性やスキルを持った人材が求められるから
多くの企業にとって、高度な専門性やスキルを持った人材の獲得が難しいという事情も、日本でヘッドハンティングが広まっている理由です。例えば、「日本語に対応した自然言語処理エンジンの開発経験が豊富なエンジニア」を採用したい場合、対象者はごくわずか。そのため、こうした人材がみずから転職を希望すれば、多くの企業からオファーを受けることが予想され、獲得するのは難しいでしょう。
このような人材を獲得するためには、ヘッドハンティングを行い、競合他社より素早く優秀な人材にアプローチすることが必要なのです。
経営者の後継者が不足しているから
多くの企業が後継者問題に直面しつつあることも、ヘッドハンティングが注目されている理由のひとつです。親から子へと経営を引き継ぐ慣習は薄れていることから、後継者となる人材の育成に頭を悩ませている経営者は少なくありません。
ヘッドハンティングを通じて、他社で経営の経験を積んだ優秀な人材を見つけ出せれば、後継者の役割を担ってもらえる可能性があります。即戦力となる経験豊かな人材を確保できるほか、外部からの新たな視点を経営に取り入れられることも大きなメリットといえるでしょう。
ヘッドハンティングの方法
ヘッドハンティングには、企業が直接行う方法と、専門のヘッドハンティング会社に依頼する方法の2つがあります。それぞれの採用方法について具体的に見ていきましょう。
企業が直接行う
企業が特定の人材を直接スカウトする方法では、取引先や競合他社に在籍している人材など、すでに実績やスキルが業界内で高く評価されている人材が候補となるケースが多いでしょう。
対象となる人材の専門性やスキルをすでに把握していることに加え、対象者側もその企業の内情をある程度把握していることも少なくありません。したがって、採用のミスマッチが発生しにくいメリットがあります。
専門の会社に依頼する
ヘッドハンティングを専門に扱っている会社へ依頼するという方法もあります。ヘッドハンティング会社は、主に次の3種類に分類されます。
<ヘッドハンティング会社の種類>
サーチ型:転職サービスに登録していない人材を探してスカウトする マッチング型(登録型):転職の意思がある人材と企業の人材ニーズのマッチングを行う 業界特化型:特定の業界に特化して優秀な人材をスカウトする
このようなサービスを利用することで、企業が自力で人材を探す手間が省けることに加え、希望する人材を効率良く見つけることができます。
ヘッドハンティングの流れ
企業がヘッドハンティング会社に依頼してから、求職者に内定が出るまでの一般的な流れは次のとおりです。
<ヘッドハンティングの一般的な流れ>
1.企業がヘッドハンティング会社に依頼 2.求職者がヘッドハンティング会社に登録(サーチ型の場合を除く) 3.企業と求職者がマッチしたら面接を設定 4.企業から求職者にオファーの提示、入社条件のすり合わせ 5.内定
ヘッドハンティング会社に依頼することで、ヘッドハンターが求職者とのマッチングや面接の設定のほか、条件のすり合わせなど、時間のかかる作業を代行してくれます。また、求職者へのフォローや現職を円満退職するためのサポートなども行ってくれる場合があります。
ヘッドハンティングされやすい人材
実際にヘッドハンティングされやすいのは、どのような人材なのでしょうか。次に挙げるいずれかの条件にあてはまる人は、ヘッドハンティングされる可能性が高いといえます。
上級管理職に就く人
部長クラスなどの上級管理職は、ヘッドハンターから注目されやすい立場にあります。 企業内で上級管理職を任せられる人材が不足している場合、ヘッドハンティングを通じてほかの企業から上級管理職を迎え入れることも多い からです。
通常の転職サービスや転職エージェントでは、管理職の経験が浅い人材やキャリアにブランクがある人材も含めて幅広い候補者が集まるため、即戦力となる上級管理職を見つけるのが難しい場合があります。
一方、ヘッドハンティングは、他社ですでに実績を上げている上級管理職がターゲットになるため、即戦力として活躍できる、経験豊富な人材を効率的に採用することができるのです。
高度な専門スキルを持つ人
高度な専門スキルを持つ人材は、管理職経験の有無にかかわらずヘッドハンティングの対象となる可能性 があります。高スキル人材は転職市場において希少な存在であり、転職意思のある人材をタイミングよく採用できるとは限らないからです。
高スキルの人材が転職を考え始めると、多くの企業から引く手あまたの状態になりがちなので、転職を潜在的に考えている層にもヘッドハンティングを利用して積極的に採用活動が行われています。
ヘッドハンティングを受ける人のメリット
ヘッドハンティングは、受ける人にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。ヘッドハンティングによって転職する場合の主なメリットを見ていきましょう。
好条件で転職できる可能性がある
ヘッドハンティングを受ける主なメリットは、 通常の転職活動を行うよりも、より良い条件での転職が可能 であることです。ヘッドハンティングを通じたオファーは、現在の職場での待遇を上回る魅力的な条件が提示されることが一般的。
また、ヘッドハンティングの対象者が現時点で転職を考えていない場合もあるため、転職を決断するためには十分なメリットが伴う必要があります。企業がどうしても獲得したい人材であれば、それに見合った待遇を提供することも珍しくないでしょう。
キャリアアップしやすい
キャリアアップがしやすいことも、ヘッドハンティングを受けることのメリットです。ヘッドハンティングによって人材を採用する企業の多くは、一般的な転職市場では出会うのが難しい優秀な人材を求めています。 企業にとって重要な役割を果たす希少なポジションでの採用を考えているケースも多い ことから、キャリアアップを実現できる可能性があります。
現職にとどまる場合には何年もかかるかもしれないキャリア形成が、ヘッドハンティングを通じて転職することで、すぐに実現することもあるのです。
ヘッドハンティングを通じて転職するデメリット
ヘッドハンティングを通じて転職する場合、いくつかのデメリットも存在します。ヘッドハンティングを受けた際には、次のような点に留意しましょう。
人間関係や環境に馴染めない可能性がある
ヘッドハンティングを通じて転職する際のデメリットのひとつは、新しい職場の人間関係や環境に適応するのが難しい可能性があることです。
ヘッドハンティングによる転職であっても、通常の転職と同じように新しい職場で新たな人間関係を構築し、環境に慣れ親しむ必要があります。したがって、スカウトされた企業の文化や社内の雰囲気について、転職前にできるだけ多くの情報を集めておくことが重要です。
転職者への期待が大きい
ヘッドハンティングを通じて転職した場合、転職先からの期待が大きくプレッシャーを感じることがあります。当初から「優秀な人材」「即戦力として活躍できる人材」という期待を背負って働くことになるため、企業側が想定していたパフォーマンスを発揮できなければ、失望感を与えてしまう可能性もあるでしょう。
このような状況を避けるためには、ヘッドハンティングのオファーを受けた際に、慎重に判断することが重要です。具体的な業務内容や期待されている役割について、入社前にしっかりと把握し、自分が転職先の期待に応えられるかを見極めましょう。
ヘッドハンティングを受けた際の注意点
ヘッドハンティングを受けた際には、いくつか注意したい点があります。安易に結論を出さず、以下の4点をよく確認してから判断することが大切です。
ヘッドハンティング会社を調べる
連絡してきたヘッドハンターが所属している会社については、必ずリサーチを行うようにしましょう。ヘッドハンターと名乗って連絡してくる人のなかには、ヘッドハンティング会社を装って高額商材を売りつける悪質な業者や、国の許可を得ずに営業している違法な業者も存在するからです。
まずは、ヘッドハンティング会社の社名を聞き出し、その会社のWEBサイトを確認します。不安であれば、国税庁の法人番号公表サイトなどで、法人番号の指定を受けた会社であるかを確認することも可能です。
募集要項を確認する
ヘッドハンティングを受けた場合には、条件をしっかりと吟味するようにしましょう。募集要項を細かくチェックし、給与や想定されている役職、福利厚生、休日休暇、残業時間などの詳細を確認してください。
また、自分が持っているスキルや経験が、求められるものと合致しているかどうかも確認が必要です。入社後のミスマッチを避けるためにも、企業が期待するパフォーマンスのレベルや業務内容についても、事前にしっかり理解しておきましょう。
キャリアプランと照らし合わせる
想定している今後のキャリアプランが、転職先の企業で叶えられるかについても慎重に検討してください。直近の待遇だけでなく、長期的なキャリア設計を見据えてヘッドハンティングの受け入れを判断することが大切です。
もし、将来の計画に迷いがある場合は、キャリアプランを再考する必要があります。自分が望むキャリアパスを明確にし、それを達成するために必要な条件を洗い出しましょう。そのうえで、転職先が提供する仕事内容や役職が自分のキャリアプランに合致するか再確認してください。
ほかの転職先も検討する
ヘッドハンティングを受けた際には、その企業だけでなく、 ほかの選択肢にも目を向けてみましょう 。転職サイトや転職エージェントに登録してスカウトや求人の紹介を受けることで、転職市場における自分の価値をより客観的に評価できるようになります。
場合によっては、ヘッドハンティングを受けた企業と同等、あるいはそれ以上の条件での転職先が見つかるかもしれません。複数の選択肢を比較することで、どのオファーを受け入れるかの決定がしやすくなるはずです。
まとめ
ヘッドハンティングを通じて転職することで、好条件での転職が実現しやすくなったり、キャリアアップの可能性が高まったりする可能性があります。一方で、通常の転職よりも転職先からの期待値が高くなりがちといったデメリットもあります。
ヘッドハンティングを受けて転職しようかどうか迷っている人は、ぜひ今回紹介した内容を参考にオファーを受けるべきかどうかを慎重に判断していきましょう。