「図書館はすべての人が幸せに生きるために必要」 北九州市立図書館に45年間勤務・轟良子さん
西日本新聞社北九州本社が制作するラジオ番組「ファンファン北九州」。地元新聞社ならではのディープな情報&北九州の魅力を紹介しています。ラジオを聞き逃した人のために、放送された番組の内容を『北九州ノコト』で振り返ります。今回のゲストは、小倉郷土会副会長、北九州森鷗外記念会理事の轟良子さんです。
子どもにとって本が身近にあることが大事
甲木:野口さん、私、松本清張記念館の館長が新川帆立さんとトークショーしているのを聞いて、最近は新川帆立にすごくハマっていて、片っ端から彼女の本を読んでいるんですけど、野口さんは最近どんな本を読んでますか?
野口:こちらに赴任してきて、町田そのこさんのトークショーでご一緒させていただいて以降、ずっと町田さんの本を読んでいます。
甲木:そうですね。地元の作家さんですし、野口さんのご家族は親子揃って町田そのこさんのファンですよね。今日は本と非常に縁の深い方をゲストにお招きしております。それではさっそくお呼びしましょう。北九州市立図書館に45年間勤務されて、退職された今でも本の案内役をなさっている、轟良子さんです。よろしくお願いします。
野口:よろしくお願いします。
轟:よろしくお願いします。
甲木:轟さんと私は、20年ぐらいのお付き合いになります。私が記者として北九州に勤務していたときに初めて知り合って、当時も西日本新聞の地方版で文学作品の連載をして頂いたんですよね。
轟:そうですね。西日本新聞さんとはご縁が深いですね。嬉しいです。
甲木:何度も連載をお願いして、轟さんの夫が写真を撮られる方なのでご夫婦でご活躍されていますが、北九州はやはりこの地ゆかりの作家・俳人・歌人が非常に多いですよね。
轟:そうなんですよ。森鷗外、松本清張、火野葦平、杉田久女、たくさんの方がこの北九州から出てますよね。現在では、例えば村田喜代子さん、町田そのこさん。そして、はしもとえつよさんはもう7冊も書いている絵本作家なんですよ。
甲木:そうなんですね。はしもとさんは今もこちらに在住なんでしょうか?
轟:そうですね、小倉南区在住です。そしてこういう新しい方たちが、これからも出てくると良いと思いますし、北九州がもっと良い街になったらと思い書いています。
甲木:なるほど。ところで図書館勤務45年ということなんですけれども、もともと子どもの時から本が好きだったんですね。
轟:私が小学校に上がる前ぐらいに、本を詰めた黄色いトランクが図書館から子ども会を経由して自宅に届いていたんですよ。その黄色いトランクを開けたらお姫様の話などいろいろな本が自宅で直接読めて、長い間ではなかったんですけれども、「本って面白いなー」と思いました。トランクを開けるときのワクワク感もあって、ずっと本と一緒に歩くことになりました。
私はその頃、若松に住んでおりましたので、若松図書館が一時期そういうことをやっていたということです。私が中央図書館に就職した時、その時の係長さんから、「それは実は自分がやってたんだよ」と言われまして、「縁があったんだな」と思いました。やはり子どもにとって、自分の身近に本があるということはとても大事なことなんだと実感として思っています。
45年間の勤務の中で1番の思い出は『図書館戦争』の映画化
甲木:ところで、45年間ずっと図書館に勤務していらして、一番の思い出は何でしょうか?
轟:やはり『図書館戦争』という本が北九州市立中央図書館を舞台に映画化されたことです。
甲木:岡田准一さんが出演された映画ですね。
轟:はい。岡田准一さんが撮影の前にストレッチをするのを私、15分間横で見てたんですよ。なかなか足が長く、とても素敵な感じの方でしたよ。
もう一つ嬉しかったのは、リバーウォークに中劇場があって、中央図書館の開館40周年記念でトークショーが行われたんです。図書館戦争を描いたあの有川浩先生と、『図書館戦争』で玄田隊長を務めた橋本じゅんさん、彼はNHKの朝ドラ「ブギウギ」にも出演されておりました。そのお二人がトークショーをするということで、私は進行役を務めさせて頂きました。1000人以上の応募があったんですけど、当選した600人の方が皆さんとてもよく笑って下さったんですよ。本当に「幸せを共感できる場所はいいな」って、その時に図書館の良さを改めて思いました。
図書館は民主主義の要
甲木:轟さんが前おっしゃっていましたけれども、第二次世界大戦以前は図書館は有料だったり、一般の人は表に出ている本を見ることができず、頼んで見せてもらったり、あるいは貸し出しができなくて閲覧だけだったりとか、そういう図書館だったそうですね。
轟:そうなのですよ。それが戦後になってアメリカが、日本を民主化する方法の一つとして、手本となるアメリカ型の図書館を全国23カ所に作るんです。そして、個人が自分の意見を持つ為には、正確で、その人が必要な情報を“いつでも・誰でも・どこでも・公平に”受け取る図書館というのが必要だと言うことで、設置を推進して行くんです。私も図書館は、すべての人が幸せに生きるためには必要で大切な場所だと思っています。だから『図書館戦争』という映画の根本にもその思いがあるんです。「本を読む自由を守る」というのが『図書館戦争』の主題だったと思います。
甲木:今、私たちが知っている図書館が、もともとアメリカから導入されたものだったというのも、轟さんの話を聞いて初めて知りましたし、税金で建てられた図書館に誰でも無料でアクセスして、誰でも情報に触れられるという、当たり前と思っていることが、実は戦前はそうではなかったということがすごく驚きでした。
轟:戦前の読書会のことなどが文献で残っているんですけれども、その方たちは強制的に本を読まされて、勉強をしていくわけです。今の人から見たらありえないと思うようなことが、当たり前の時代だったんです。だから時代と本の関係というのは密接なので、何を選んで読んでいくのかというのは、情報化の時代だから、とても大切だと思っていますし、民主主義の要だと思います。いろんな人が自分の意見をちゃんと持って、話がお互いに自由にできるということです。多様性と今言われていますけど、そういうことが大事にされる時代が、やっときたのだなと嬉しく思っています。
甲木:初回から、とても良いお話をたくさん聞かせて頂いたんですけれども、本日はお時間になってしまいました。続きはまた、来週お伺いしたいと思います。本日は北九州市立図書館で長年お勤めになって、今も本の案内役を続けている轟 良子さんをゲストにお迎えし、お話を伺いました。轟さん、どうもありがとうございました。
野口:ありがとうございました。
轟: ありがとうございました。
〇ゲスト:轟良子さん (小倉郷土会副会長、北九州森鷗外記念会理事)
〇出演: 甲木正子、野口喜久子(西日本新聞社北九州本社)