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子どもの便秘の原因は?よく使われる薬や家庭での対処法【医師QA】

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子どもの便秘の原因は?よく使われる薬や家庭での対処法【医師QA】

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

子どもの便秘(便秘症)とは?症状のチェックポイント、なりやすい年齢はある?

便秘とは、便が長い時間出ないか、出にくいことを言います。便秘のために、治療が必要な状態を「便秘症」と言い、便秘症が1~2ヶ月以上続いた場合を「慢性便秘症」と言います。

どのような症状で、どのくらい便が出ないと「便秘」なのでしょうか。

・週に3回より少なかったり、5日以上出ない日が続く
・毎日出ていても、出す時に痛がって泣いたり、肛門が切れて血が出る
・小さいコロコロの便や、軟らかい便が少しずつ、1日に何回も出る

上記のような症状や状態が見られる場合、便秘と考えられます。

子どもの便秘症状が気になりだした時期について、全国の1~3歳の子どもを持つ保護者1500名に対して行った調査によると、0歳が5割と一番多く、1歳、2歳、3歳と続いています。実際に便秘になりやすい時期は、

・乳児期:母乳からミルクに移行したとき
・6ヶ月頃~1歳頃:離乳食開始時期
・2歳頃~:トイレトレーニングの時期
・3歳頃~:就園・就学のタイミング

と言われています。

便秘の原因は?放っておくとどうなる?

排便機能は誕生時に完成しているものではなく、成長するにつれて発達していくものです。便秘症になると日常生活のQOLに支障をきたすこともあり、放置すると徐々に悪化する可能性もある疾患です。適切な治療をすれば排便コントロールがしやすくなります。

子どもの便秘の95%は「食事の問題」と「行動面の問題」で起こる機能性便秘であると言われています。

「食事の問題」としては、水分の摂取不足や繊維質の少ない食事を摂る傾向にあることが挙げられます。

「行動面の問題」としては、ストレスやトイレトレーニングへの抵抗などが挙げられます。遊びを中断したくない、以前の排便で痛い思いをしたから出したくないなど、便意を催しているのに排便しないこともあります。

自然な便意に従って排便しないと、やがて直腸に便が貯留した状態に慣れてしまい、便意を感じづらくなります。すると、ますます便が溜まって硬くなっていくため、始めは軽かった便秘が悪化する、という悪循環も起こりかねません。

また、まれに他の疾患や薬などによって便秘が起こる場合もありますが、腹痛や嘔吐などの便秘以外に目立つ症状が出るため、排便回数が減少する前に保護者が子どもを受診させているのが一般的です。

便秘症を放置し、だんだん悪くなっていくと排便機能が育たず、大人になっても改善しない場合もあります。さらに悪化してしまうと、肛門疾患や結腸癌などのリスクが増加するケースもあります。早期診断と積極的治療が重要です。

子どもの便秘のお悩みQ&A

「薬を飲んでくれない」「促しても排便につながらない」など、子どもの便秘は保護者の悩みの種でもあります。ここでは、小児科医の室伏佑香先生がQ&A方式で分かりやすく「子どもの便秘のお悩み」に答えてくださいました。

(質問)便秘の薬を飲みたがらないので、ジュースで飲ませてもいいですか? 虫歯が心配です。

(回答)虫歯、気になりますよね。夜寝る前やお昼寝前に歯磨きをしっかりすること、ジュースを飲んだ後に少量の水を飲む、またはうがいして流すことで、虫歯についてはリスクを減らすことができます。便秘を治すには処方された薬をしっかり飲むことが大切です。薬は便を軟らかく保つものや、腸の動きを活発にするものがありますが、便が詰まってから飲むよりも、溜まらないように毎日飲むほうが効果的です。ただし、水以外の飲み物との飲み合わせに気をつける必要のある薬もあるので、かかりつけ医に相談してください。

(質問)トイレを怖がって入れずウンチができません。トイレトレーニングもうまくいかず、便秘気味になってしまっています。

(回答)無理強いは禁物です。便秘症発症のピークは 2~4歳のトイレトレーニングの時期とされます。排便時の痛みや、不適切なトイレトレーニングなどによる不快な排泄を繰り返すことで、意識的にあるいは無意識的に排便を避けるようになる可能性があります。トイレでできないお子さんは、はじめは着衣のまま便座やオマルに座らせてもかまいません。排便しなくても5~10分座っていることができたら褒めてあげたり、ご褒美をあげましょう。

(質問)現在6歳(年長)の娘がいます。未就園児の頃から3年ほど便秘の治療をしています。治療はいつまで続くのでしょうか?いつ治るのでしょうか?

(回答)適切に治療を行えば、数日~2ヶ月で「週に3回以上快適に便が出る」状態になることが多いです。その状態を続けていると1~2年の間に便秘症が治ることも少なくありません。大人になるまで治療を続ける必要がある場合もありますが、生活や食事に気をつけたり、正しく薬を飲んでいれば、日常生活を問題なく過ごせます。治療を継続していても便の回数が週に2回以下だったり、出すときに痛みや出血があったりするようなら、薬の量が足りない可能性があります。軟らかすぎる便が続く時は量が多いかもしれません。そのような場合でも、自分の判断で量を調節せず、排便日誌をつけて、医師に相談してください。

家庭でできる便秘解消法や薬での治療はどんなものがあるの?

便秘解消のために、家庭でできる対策は以下のようなものが挙げられます。

・睡眠
早寝早起きをし、規則正しい生活を送ることが大切です。

・食事
バランスのとれた食事を3食きちんと摂り、決められたおやつの時間以外には間食を避ける、こまめに水分を摂る、「野菜、海藻、 果物、芋類、豆類」など食物繊維を多く含む食材を取り入れる、などが大切です。

・運動
身体を動かすことで、腸の運動が活発になり、便通をよくすると言われています。

・決まった時間にトイレに行く
ただし、無理強いや長い時間かけることは避けます。便が出たら大いに褒めてあげましょう。便意を感じたら、トイレに行くことも大切です。

なお、赤ちゃんの場合、哺乳不足(水分不足)の場合もあるので、体重を測るなどで確認してみましょう。綿棒での肛門刺激や薄めた果汁を飲ませるなども、便秘改善の助けになります。

生活習慣や食事で便秘の症状がなくならない場合には、内服薬を使用することもあります。かかりつけ医の指示に従い、用法用量を守ってしっかり飲ませることが大切です。

子どもの便秘によく使われる薬(かっこ内は製品名)として、下記のものが挙げられます。

・浸透圧性下剤
【糖類】 
・マルトース(マルツエキス)
・ラクツロース(モニラックなど)
【塩類】
・酸化マグネシウム(カマ、カマグ、マグミットなど)
・水酸化マグネシウム(ミルマグ)
・刺激性下剤
・ピコスルファートナトリウム(ラキソベロン)
・センノシド(プルセニドなど)
・坐薬
・ビサコジル(テレミンソフト)
・炭酸水素ナトリウム+無水リン酸二水素ナトリウム(新レシカルボン)

内服薬以外には浣腸を行うこともあります。すぐに効果が得られるという利点がありますが、硬い便を排泄する際に肛門が切れて痛みを伴うこともあります。

週に3回以上、苦しくなく、痛くなく排便できることが治療の目標とされています。お子さんによっては、治療後2~3日に1回の排便で良好な排便習慣と判断することもあります。

まとめ

便秘は子どもに起きる疾患として頻度の高いものですが、「たかが便秘」と甘く見て放置してしまうと、悪化する可能性があります。「ウンチが出ない」「出すたびに痛い」状態が続くとそれがストレスになったり、園や学校生活にも支障をきたすことになりかねません。診断・治療を早くスタートすれば、のちの経過も良くなります。深刻になりすぎたり、心配しすぎる必要はありませんが、できるだけ早めにかかりつけ医に相談しましょう。

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