【日本被団協 ノーベル平和賞受賞】谷川俊太郎「反戦の詩」 かこさとし「戦争の悲惨」… 子どもと大人たちへ「戦争と平和」を考える本【4選】
日本被団協が2024年のノーベル平和賞を受賞したことをきっかけに、今こそ読んでおきたい「戦争と平和を知る本」を紹介。被爆当事者について知る本のほか、谷川俊太郎さんや、かこさとしさんによる、戦争をテーマにした絵本も紹介します。
【写真】「ノーベル平和賞」10日に授賞式「日本被団協」とはどんな団体? 戦争体験を知る本12選今年2024年の「ノーベル平和賞」は、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が受賞しました。
平和賞の授賞式は、ノーベルの命日である12月10日に、ノルウェーの首都・オスロで行われます。
この記事では、日本被団協がノーベル平和賞を受賞したことをきっかけに、ふだんは子どもたちに伝えるのがむずかしい「戦争と平和」についてを考える本をテーマに、大人向けの作品・子ども向けの作品を取り上げます。
被爆当事者について知る本のほか、教科書などで子どもたちにも親しまれている詩人・谷川俊太郎さんや、絵本作家のかこさとしさんによる、戦争をテーマにした絵本も紹介します。
日本被団協 結成の経緯と歩み
日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)は、47都道府県のそれぞれにある被爆者団体の協議会。広島・長崎で原爆の被害を受けた被害者の生存者である「被爆者」の全国組織です。
原爆の被害者たちが自ら立ち上がり「日本被団協」を結成した経緯と、そのあゆみを知ることができるのが『被爆者からあなたに: いま伝えたいこと』(日本原水爆被害者団体協議会/編 岩波書店刊)。
『被爆者からあなたに: いま伝えたいこと』日本原水爆被害者団体協議会/編
ふたたび被爆者をつくらないために、被害の真実を訴え、原爆投下の責任を問い続けてきた被爆者たちによる、次世代へのメッセージが込められています。
谷川俊太郎による反戦の詩
2024年11月に、92歳で惜しまれつつもこの世を去った詩人・谷川俊太郎さん。谷川さんは戦時下に少年時代を過ごし、空襲や疎開も経験しました。
そんな谷川さんが戦争への思いをつづったのが、絵本『せんそうしない』(谷川俊太郎/文、えがしらみちこ/絵 講談社刊)です。
『せんそうしない』谷川俊太郎/文、えがしらみちこ/絵
「ちょうちょと ちょうちょは せんそうしない/きんぎょと きんぎょも せんそうしない/くじらと くじらは せんそうしない/まつのき かしのき せんそうしない」
「ちきゅうに いきる いきものの なかで/せんそうを はじめるのは にんげんだけ/それも おとなだけ」(『せんそうしない』より)
詩人・谷川俊太郎さんの言葉で語られる戦争への思いと、絵本作家・えがしらみちこさんによる透明な生命力のあふれた絵が融合した作品。人間の知恵はどこにあるのかを、静かに問いかける一冊です。
かこさとしが目撃した戦争の悲惨
絵本作家のレジェンドとして、たくさんの子どもたちに親しまれてきたかこさとしさん。
その著作は、『だるまちゃんとてんぐちゃん』『からすのパンやさん』をはじめ、『かわ』『宇宙』などの科学絵本も含め、600作以上に及びます。
そんなかこさんが、「戦争」をテーマにえがいた作品が『秋』(かこさとし/作 講談社刊)です。
『秋』かこさとし/作
『秋』は、太平洋戦争のとき、かこさんが体験した実話をえがいたもの。
当時、高校生だったかこさんが目撃したある出来事をとおして、戦争の悲惨さ、怒りと悲しみを、いつまでも忘れないよう子どもたちへ伝えようとした作品です。
『秋』の原型は1957年に紙芝居としてえがかれていましたが、書籍として刊行するため、かこさん自身が加筆や改訂を施していたものの、生前には出版が叶いませんでした。かこさんは2018年に惜しまれつつも亡くなり、その後2021年に、絵本として刊行されたのがこの絵本なのです。
平和を願うかこさんの強い思いが、文章と絵によって、美しく悲しく表現された一冊です。
子どもの本の作家たちが語る「戦争の真実」
戦争の体験は、子どもの本の作家19人のその後の人生に大きな影響を与えました。
『子どもたちへ、今こそ伝える戦争 子どもの本の作家たち19人の真実』(講談社編)は、絵本や児童文学など「子どもの本」の作家たちによる、自らの戦争体験を1冊に編んだアンソロジー。
収録されている作品は、長新太さん、和歌山静子さんをはじめとした、広く長く子どもたちに愛される名作をてがけた作家たちによるものです。
『子どもたちへ、今こそ伝える戦争 子どもの本の作家たち19人の真実』長新太、和歌山静子、那須正幹、長野ヒデ子、おぼまこと、立原えりか、田島征三、山下明生、いわむらかずお、三木卓、間所ひさこ、今江祥智、杉浦範茂、那須田稔、井上洋介、森山京、かこさとし、岡野薫子、田畑精一/著、柳田邦男/解説、講談社/編
子どもに物語を伝えることを仕事としている作家たちによる「自分自身の話」は、戦争の話をはじめて読むお子さんにも伝わりやすいことでしょう。ひとりずつのお話は短く、イラストも入り、読み進めやすくなっています。
この本は、子どもから子どもへのメッセージです。戦争を日常とした当時の子どもたちから、現代の子どもたちへ、その暮らしと思いが19人それぞれの視点で描かれています。
家族に戦争体験者がいない子どもが多くなった今こそ、戦争体験を語り継ぐためにも、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
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この記事で紹介する作品は以上ですが、「戦争と平和」をテーマにした作品はまだまだたくさんあります。ノーベル賞をきっかけに、あなたもぜひ本を手に取って、「戦争と平和」について考えてみませんか。