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Nothing’s Carved In Stoneが1stアルバム再現を盛り込んだスペシャルワンマンで示した雄姿

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Nothing's Carved In Stone 撮影=RYOTARO KAWASHIMA

“BEGINNING 2021" feat.『PARALLEL LIVES』 2021.2.27 USEN STUDIO COAST

本来であれば、昨年2月に開催するはずだった『SPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING 2020”』が、新型コロナウイルス感染拡大の影響で止むを得ず延期を重ねてきたことはご存じの通りだが、1年越しのリベンジがこの日、ついに成就した(その際、ライブのタイトルが『“BEGINNING 2021" feat.『PARALLEL LIVES』』に改められた)。有観客ライブとしては昨年の11月15日以来、3か月ぶりだ。もちろん、Nothing’s Carved In Stone(以下ナッシングス)がコロナ禍の中で、活動を止めることはなかったが、1月1日に突然、配信リリースした新曲「Bloom in the Rain」に続いて、この日、生配信もしながら、ステージに立つ雄姿を見せてくれたことが、ファンにとってどれだけうれしかったことか。

感染防止ガイドラインに沿った開催とは言え、状況が状況だけに会場に足を運ぶ観客にも葛藤があったはずだ。それにもかかわらず、多くの人が会場でバンドを迎えたのだから、感謝の気持ちとともに「最近の中で一番うれしい奇跡」と村松拓(Vo/Gt)が言ったのも大いに頷ける。しかも、予告どおり2009年5月にリリースした1stアルバム『PARALLEL LIVES』を再現したライブが単なる再現で終わらずに、いろいろなことを想像させながら、今一度、ナッシングスというバンドの魅力を浮き彫りしたのだから、葛藤を乗り越え、このライブの開催を決断した意義はまちがいなくあったはず。

大喜多崇規(Dr)、日向秀和(Ba)、生形真一(Gt/Cho)と順々に登場して、音を重ねたところに村松が加わって、目下の最新オリジナル・アルバム『By Your Side』からのミッド・テンポのファンク・ロック・ナンバー「Blow It Up」で始まった演奏は、たたみかけるように生形が鋭いリフを閃かせた「Like a Shooting Star」でいきなりヒートアップ。「Blow It Up」の16ビートに体を揺らしていた観客が手拍子で応える。そして「行こうぜ!」という村松の掛け声から日向のベース・ソロ、生形のギター・ソロと繋げ、ぐっと演奏の熱を高めてからなだれこんだラスサビで、その手拍子は一際大きなものに! そこにハード・ロッキンでダンサブルな「Spirit Inspiration」を間髪入れずにお見舞いしたのだからたまらない。誰もがその瞬間を待ち焦がれていたようだ。序盤とは思えない大きな盛り上がりが生まれたことは言うまでもない。

しかし、もちろん本番はここからだ。「Nothing’s Carved In Stoneです。よろしく」という村松の短い挨拶に続いて、『PARALLEL LIVES』のジャケットがバックに映し出される。生形がギターをかき鳴らしながら、アルバムのオープニングを飾る「Isolation」のリフを奏で始めると、日向がそれに応えるようにベースをスラップする。演奏は一気に白熱。「カモン!」と村松が求めるまでもなく、観客はすでに声を上げたい気持ちを激しい手拍子に込めている。生形によるあまりにもエモーショナルなギター・ソロに気持ちがどうにかなりそうだ。雷鳴のようなドラムを轟かせる大喜多を中心に向かい合って、アウトロを演奏する4人が改めて印象づけたのは、一丸となったバンドの姿だった。

そこからナッシングスは『PARALLEL LIVES』の収録曲を曲順どおりに披露していった。これまで何度も書いてきたようにライブを観るたび、ナッシングスというバンドの印象が変わるのは、バンドのバックグラウンドの幅広さやプレイヤーとしての懐の深さの証だと思うのだが、その点でもナッシングスはこの日、驚きも含め、新鮮な感覚を味わわせてくれたのだった。約12年前にリリースした1stアルバムの再現ライブなのだから当たり前と言えば、当たり前かもしれない。しかし、曲によってはアレンジが更新されているものもあったとは言え、ナッシングスがこんなにもオルタナ以降のインディ・ロック色が濃い演奏を繰り広げたことには改めてびっくりだった。

「Isolation」から繋げた「Silent Shades」をはじめ、単音フレーズで攻める生形のプレイは、ポスト・ロックなんて言葉も連想させた。また、「November 15th」は正調エモなんて言いたい、音源に忠実なアレンジと懐かしい過去のライブ映像を映しながらという演出があいまって、この日一番と言ってもいい、それこそエモい見どころになった。

当時、彼らがどんな音楽に影響を受けていたのかが想像できる、ある意味青さも感じられる曲の数々が新鮮だった。プログレ・メタル、あるいはマス・ロックに通じるところもある「Words That Bind Us」や、アルバムの最後を締めくくる「Tribal Session」「End」という2曲のインストを聴きながら、求道的なテクニシャンが揃ったバンドだけに、そのままオルタナ~ポスト・ロック路線を突き詰めることもできたのでは?とふと想像が膨らんだ。

しかし、誰もが知っているように彼らはその道を選ばなかった。なぜなのか? それはもう単純明快に、それだけじゃ満足できない4人だったからだが、『PARALLEL LIVES』をリリースしてから現在まで、メンバーたちがそれぞれのルーツにあるものや新たな興味をバンドに持ち込みながら、ライブを観るたび印象が変わるようなユニークな音楽性を作り上げてきた事実をこうやって今一度、意識することにこそ再現ライブに挑んだ意味があったんじゃないか。プレイを見てもわかるとおり、それぞれに個性の強い4人だ。そのアンサンブルは、僕らが考えている以上に絶妙なバランスの上に成り立っているのかもしれない。そう思うと、ナッシングスがここまで歩みを止めることなく続いているのは、ひょっとしたらある意味、奇跡なのかもしれない。

『PARALLEL LIVES』の再現ライブはそんなふうにナッシングスが、どういうバンドなのか、改めて考えるいいきっかけにもなったと思うが、アルバムの再現を終えたバンドは、「Gravity」「Out of Control」「In Future」とライブの定番曲をたたみかけ、現在のバンドの雄姿も存分に見せつけたのだった。

そして、ここまでMCを挟まなかった村松が「今だけは何もかも忘れて1つになりませんか?」と観客に語りかけ、披露したのが「きらめきの花」。村松の言葉に応え、観客が精一杯手を振るアンセミックな光景を目の当たりにしながら、『PARALLEL LIVES』の頃の彼らだったら、これはありだったろうか? 「(みんなの思いは)届いてます。また会いましょう」と村松が言ってから本編ラストの「Beginning」に繋げたバンドを観ながら、そんなことをちょっと思ったりも。

ちなみにバックに映し出した『PARALLEL LIVES』のジャケットは、オリジナルには村松の楽器だけ映っていないという理由で撮り直したものだったそうだ。「1stアルバムにめでたく参加できました(笑)」とアンコールの際、語った村松は続けて、3月に新曲「Wonderer」を配信リリースすることと、「できるかぎりみんなの街に行きたいと思ってます。できれば今日みたいな最高の夜をみんなと過ごしたい」と3月からツアーを行うことを発表。何度、延期・中止という辛酸を舐めてもライブにかける情熱が失われないことをアピールした。

「僕らは音楽を届けることで、みんなと繋がって楽しみたい。そんなことばかり考えています」

ナッシングスの存在理由たる想いを、バンドを代表して村松が語ると、バンドは最後に新曲の「Bloom in the Rain」ではなく、「Dream in the Dark」を演奏した。最後の最後は、この曲しかなかったのだろう。再会の約束を歌うこの曲しか!

取材・文=山口智男 撮影=RYOTARO KAWASHIMA

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