【県内アートさんぽ特別編】 熱海発の「サメ映画」 「温泉シャーク」企画・原案・製作の永田雅之さんミニインタビュー
7月5日公開の映画「温泉シャーク」。熱海市ならぬ「暑海(あつみ)市」の温泉から出現する凶悪な古代ザメが、無差別に人間を襲う。大量のサメの襲来に対処するため、市長が、そして政府が下した決断とは―。
B級パニック映画の装いをまとっているが、骨太の脚本と古き良き時代の特撮技術への偏愛は、間違いなく「本格派」。熱海各地でロケを敢行していて、静岡県民なら見覚えのある場所が多数出てくる。
企画・原案・製作の永田雅之さん(PLAN A代表)に、完成に至る道のりを聞いた。(聞き手:教育文化部・橋爪充)
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ー海や温泉といった熱海市の地域資源とサメ映画を組み合わせるという奇想天外な発想は、どこからきたんですか?
「7年前に熱海に引っ越してきて、この地域を舞台にして何か映像ができないか漠然と考えていました。テレビ番組やCMの製作をなりわいにしていますが、短編映画を3本作った後、2021年ごろに『温泉シャーク』の設定を思いつきました。熱海の名物は温泉、海。海なら『サメ映画』だろう、と」
ー2019~21年は「熱海怪獣映画祭」の代表も務めていましたね。
「『温泉シャーク』脚本・監督の井上森人さんとの出会いはまさに、怪獣映画祭だったんです。こういう企画がやりたいと話したら、『やります』と言って脚本を書いてくれた。その後、新型コロナウイルスの感染拡大や伊豆山の土石流災害があって、一時中断していました。2022年の年末に井上監督が『やはりやりたい』と申し出てくれて、翌年の年始からプロジェクトが再スタートしたんです」
ー紆余(うよ)曲折あっての完成だったんですね。
「熱海を盛り上げたいという気持ちがずっとあった。結局、強い意志が映画を完成に導いたのではないかと。熱海の地域資源を使って、みんなの心にひっかかるものを作りたい、という意志です」
ー熱海への思い入れの強さを感じます。
「映画を作ることが目的じゃないんです。『東洋のモナコ』と作品の中でも言っているけれど、そんな町になったら楽しいだろうなと。映画はその目的を達するための過程の一つです」
ー2023年6~7月のクラウドファンディングでは1000万円以上集まりました。
「皆さんに『温泉シャーク』というムーブメントを楽しんでもらいたい、という思いでした。サメ映画なので、しっかりサメが出てきた方がいい。支援1口につき、1匹サメを出すとお約束しました。そうしたら432口も集まった。だから映画では432匹以上のサメがちゃんと出ています」
ー特撮部分は福島県須賀川市で撮影していますね。
「ゴジラやウルトラマンの生みの親である円谷英二さんの古里です。地元の多大なご協力をいただいて、とてもありがたかった。これを機に、怪獣映画祭の熱海市と須賀川市のつながりが深まればいいですね」
ー完成した今、手応えはいかがですか。
「子どもから大人まで、幅広い世代が楽しめると思います。サメ映画はニッチなジャンル。でも、この映画を全国公開して多くの人が見れば、また新しいサメ映画が生まれてくるんじゃないかと期待しています」
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「温泉シャーク」は清水町のシネプラザサントムーンで上映中。