長岡を、若者が自分らしくいられる地域に。「スキコソ」の上田さん。
長岡市の殿町にオープンした「まちまち、ときどきカフェ。」は、地域の若者を応援するコミュニティカフェ。学校でも家でもない「サードプレイス」として、若者が自分らしくいられる居場所づくりをしています。こちらを運営しているのがこども・若者の活動支援事業などに取り組む「NPO法人スキコソ」。共同代表理事の上田さんに、法人を立ち上げた経緯や、活動に対する思いについて聞いてきました。
特定非営利活動法人スキコソ
上田 夏子 Natsuko Ueda
1998年上越市生まれ。長岡工業高等専門学校を卒業後、ゼネコンに就職。長岡市地域おこし協力隊を経て、今年7月に「特定非営利活動法人スキコソ」を共同設立。現在はデザイナーとしても活動。スイカが大好き。
それぞれの「好き」を持ち寄って表現する場所。
――上田さんが「スキコソ」を立ち上げるまでのことを教えてください。
上田さん:出身は上越市なんですけど、高校から長岡に通っていました。卒業後はゼネコンに勤めて、工事現場の現場監督をやっていたんです。その後はしばらく大阪にいて、Uターンして長岡市の地域おこし協力隊になりました。
――協力隊になることを決めたのには何かきっかけが?
上田さん:学生時代の恩師が勧めてくれたんです。私、勤めていたときに体を壊しちゃって。転職せざるを得なくなって、大阪で転職活動をしていました。その頃、たまたま母校に行く機会があって恩師に会ったんです。
――先生とどんなことをお話ししたんですか?
上田さん:働けなくなっちゃったんですって話をしたら、長岡で地域おこし協力隊っていう仕事があるから私に向いているんじゃないかって言われて。「じゃあ、やります」って答えました(笑)。楽しそうだなと思って。
――決断が早い(笑)
上田さん:ゼネコンの仕事も、外で体を動かせるし、いろんな人と関われるっていう理由で選んだので、もともと人と話すことが好きなんです。先生が勧めたのも、学生時代に学園祭とかに関わっていたことを知っていてくれたので、イベントとかお祭りとか、そういうの好きだろ、みたいな(笑)
――「スキコソ」はどういう経緯で立ち上げられた組織なんでしょうか。
上田さん:協力隊のとき「ミライエ長岡」を拠点に、学生の子たちからやりたいことを引き出して伴走するっていう活動をしていました。話を聞く中で、学生の子たちが「こういうものを作って売りたいんだけど、そういう場所ってないですか」みたいな相談をされることがけっこう多くて。
――なるほど。
上田さん:けど行政施設だと営利活動ができないので、それなら協力隊としてじゃなくて自分たちでやっちゃえって、マルシェを開くようになりました。そのマルシェの名前が「スキコソ」だったんです。自分たちの「好き」を持ち寄って表現するっていう活動だったので、NPOを立ち上げるときにそのまま名前を使いました。
――法人にされたのは、そうするとできることの幅が増えるから?
上田さん:それがいちばんですね。あと、もともとはみんなが集まっているだけの任意団体っていう形だったんですけど、法人になった方がもちろん社会的な信頼性も上がるし、活動がやりやすくなるからっていうことが大きいです。
若者が気軽に使える居場所づくり。
――今はどういう事業を展開されているんでしょう?
上田さん:4つの事業を展開していて、ひとつは子どもや若者の居場所づくり事業、あとは今までやっていたマルシェみたいな「こういうことをやってみたい」という活動の支援。それから子どもや若者が地域と交流できる仕組みづくりのお手伝い。あともうひとつは人材育成。これは大人向けで、中高生に関わるときにこうしたほうがいいよねっていうことを伝える講座をやったりしています。
――今日もお邪魔していますが「まちまち、ときどきカフェ。」というコミュニティカフェもはじめられたそうですね。
上田さん:ずっと学生たちから「自分たちが何かやりたいってときに、すぐに使える場所がない」ってずっと言われていたんです。「じゃあ作ります」って、ここをはじめました(笑)
――コミュニティカフェっていうと、普通のカフェとはちょっと違うんですか?
上田さん:普段はカフェとして営業しているんですけど、場所として貸出もしています。例えば、大学生の子たちがボードゲームをやりたいって言って1日借りたり、大学の送別会で使ったりしています。シェアキッチンとしても使えるので、「ちょっとお店をやってみたい」っていう人がいたらぜひ使ってほしいです。
――何か思いついたときにすぐ行動に移せる場所があるっていうのは、学生にとって嬉しいですね。
上田さん:あとは、全国的に広がっている「みんとしょ」を導入して、「本棚オーナー制度」というものもやっています。入口のところにある本棚を1箱2000円で貸し出していて、オーナーになると自分の好きな本を棚に入れられるんです。
――最近は県内でもちょっとずつ増えてきていますよね。
上田さん:全国で広がってきていて、自己表現をしたり、作家さんなら広報に使ったりもできます。いただいた2000円はここの維持費とか、学生たちの活動資金に回しているので、本棚オーナーになることで学生たちの応援もできますよっていう、大人が関われるような仕組みづくりもやっています。
いちばんの原動力は、人とのおしゃべり。
――まちづくりに関わるお仕事をされるようになって、何か気付いたことはありましたか?
上田さん:地元が上越で、前は「上越ってなんもないな」って思っていたんです。でもこういう仕事をするようになって、「そんなことないな」って思って。長岡が大好きですし、地元も、他の地域も、いいところがいっぱいあるなってよく気付けるようになりました。
――長岡での活動を通じて、他の地域の見え方も変わったんですね。あの、お話を聞いていて行動力がすごいなって思うんですけど、そのモチベーションってどこから来ているんでしょう……?
上田さん:え〜、何だろう(笑)。自分自身が楽しいのももちろんなんですけど、やっぱりいろんなところでおしゃべりをすることがいちばんの原動力になっているんじゃないかなって思います。
――やっぱり人とお話しすることが好きなんですね。
上田さん:なんでもない会話をしているときに「こういうのやろうぜ」ってノリではじめてっていうことがずっと続いている感じですね。あとは、自分の友達同士が仲良くなったときにめちゃくちゃドーパミンが出るんですよ。なんでかは分からないんですけど(笑)
――人と人をつなげることに喜びを感じるんですね。最後に、今後の目標があれば教えてください。
上田さん:法人としてはいろんな場所で居場所づくりをしていこうと計画中です。この「まちまち、ときどきカフェ。」では主に大学生と20代を中心とした居場所づくりを進めているんですけど、その他にも、小学生から高校生のための居場所づくりの必要性を感じています。家と学校の往復で、どっちにも居場所がないって子もいるし、やっぱ学校だとキャラを作っちゃうとか、家庭環境によって経験できることに差ができたり、いろいろあるじゃないですか。そういう子もそうじゃない子も、みんなが「いるだけでいい場所」を作りたいと思っています。
――最近だと「サードプレイス」って呼ばれ方もしますね。
上田さん:そういうふうに小学生や中高生が自分の「好き」や「やりたい」っていう気持ちを表現できたりする、自分らしくいられる場所を作りたいです。
特定非営利活動法人スキコソ
長岡市殿町2-5-1 ロイヤル長岡203