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集団が苦手な自閉症息子が「友だち大好き!」に!?不安を自信に変えた療育と園の連携【読者体験談】

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集団が苦手な自閉症息子が「友だち大好き!」に!?不安を自信に変えた療育と園の連携【読者体験談】

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

この記事で分かること

お子さんの集団生活への不安と「はじめの一歩」の踏み出し方幼稚園や学校と連携し、お子さんの特性や必要な配慮を事前に共有することの大切さ子どもの不安に寄り添い、その子のペースに合わせた「スモールステップ」を重ねていく支援の具体例どのようなことがお子さんの安心感と自信につながり、登園しぶりを乗り越えるきっかけになったのか

フリーズして動けない息子との日々

息子は現在9歳の小学3年生。2歳のときにASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。性格は寂しがりやで見栄っ張り、警戒心が強いけれどよく笑う子です。

2歳の頃から、人の姿を見るだけでフリーズして動けなくなることがありました。例えば、近所の公園。楽しそうな声が聞こえてきても、誰かほかの子の姿が見えた瞬間に、息子はピタッと足を止め、その場から一歩も動かなくなってしまうのです。スーパーマーケットでも同じでした。人がたくさんいると、決して中に入ろうとしません。

無理に連れて行こうとすると大暴れ。まるで体が石になったかのようにズシンと重くなり、抱き上げることも、ベビーカーに乗せることもできませんでした。歩くときはいつも帽子のつばを深くかぶり、必死に外界の情報を遮断しているようにも見えました。そんな息子の姿に、「この先、集団生活なんて送れるのだろうか……」という不安が、日に日に大きくなっていきました。

深まる集団への不安と、私たちが選んだ「はじめの一歩」

息子自身の不安も、成長と共に具体的になっていきました。ある日、息子が真剣な顔で私にこう尋ねてきたのです。

「ぼく、何歳になったら幼稚園に行くの?お兄ちゃんたちと一緒の幼稚園は嫌だよ」

まだ幼い息子が、ずっと先の未来を想像して不安に思っている……。その言葉に、私は胸が締め付けられる思いでした。この子の不安の強さを考えると、いきなり大きな集団に入れるのは難しいだろう。私たちは、年少の1年間は幼稚園には入らず、療育に専念するという道を選択しました。

週4日、朝10時から14時まで。自然に囲まれた、5人前後の少人数制の療育(発達支援施設)での日々が始まりました。

もちろん、最初は私から離れることにも時間がかかりました。集団が苦手で、人前で絵を描くことすらできなかった息子です。しかし、先生方は息子の特性を深く理解し、丁寧に関わってくれました。毎朝、教室に入る前の「エネルギーチャージ」と称した力いっぱいのハグ。到着してすぐには活動に入らず、おもちゃで遊ぶリラックスタイム。イラストを使った視覚的なスケジュール提示。こうした工夫のおかげで、息子は少しずつ「ここは安心できる場所だ」と感じるようになったのです。療育で自信をつけ、笑顔も増えてきた息子。しかし、本当の挑戦はここからでした。年中になり、いよいよ公立幼稚園へ入園する日が近づいてきたのです。

先生と二人三脚で見つけた、息子だけの「ちょうどいい」ステップ

幼稚園への入園を決めるにあたり、私が何よりも大切にしたのは「園との連携」でした。幸い、入園を決めた園には発達に理解のある先生がいらっしゃると伺っていました。事前の面談では、療育(発達支援施設)で作成してもらった個別支援計画書やサポートファイルをお見せし、「この子が安心して通えるようになるには、どうしたらいいでしょうか」と、一緒に考えてもらう形で相談させていただきました。

入園当初は、やはり登園しぶりが続きました。園に着いてもすぐに教室には入れず、みんなの活動を遠くから眺めているだけの日々。「楽しそうだけど、怖い」という気持ちがせめぎ合っているのが、小さな背中から伝わってきました。そんな息子の気持ちを、園の先生方は決して急かすことなく、温かく見守ってくださいました。

息子の話をじっくり聞き、様子を丁寧に観察して、つまずきの原因を探ってくれる。竹ぽっくりが怖くてできない息子のために、特別に低い手作りの竹ぽっくりを用意してくれる。新しい活動は「まずは見学からでOK」とし、息子ができそうなことを提案しながら、少しずつ輪に繋いでくれる。疲れたときは机の下にもぐって休憩しても良いことを、クラス全体の共通理解にしてくれる。
先生方が、息子のペースに合わせた「ちょうどいい」スモールステップを根気強く用意し続けてくれたおかげで、息子の心は少しずつ、少しずつ、開いていきました。

息子の世界を変えた「一緒に遊ぼう!」の一声、そして小学生になった今

一番大きな変化をもたらしてくれたのは、お友だちの存在でした。最初は幼稚園に遅刻をしていくと、すでにほかの子どもたちは活動が始まっており、息子は「みんな何をしているんだろう……」と、輪の中に入るのに緊張をしているようでした。
しかし、先生方が息子のことをクラスのみんなに伝えてくれていたおかげで、息子が一人でいると、多くの子が「一緒に遊ぼう!」と声をかけてくれるようになったのです。

以前はほかの子どもたちがいると公園にも入れなかった息子でしたが、幼稚園の先生方が少しずつクラスのお友だちとのかかわりの時間を作ってくれたおかげか、息子にとってお友だちから遊びに誘ってもらえることは「何よりうれしいこと」へと変わっていったようでした。

「今日、お友だちと遊べたんだよ!」と笑顔で報告してくれる日が増えるにつれ、あれほど大変だった朝の登園しぶりが、嘘のように消えていきました。

現在、息子は小学3年生になり、特別支援学級で学んでいます。幼稚園での成功体験は息子の大きな自信となり、今では「お友だちが大好き!」と笑顔で話してくれます。もちろん、環境が変わり、担任の先生との信頼関係を一から築き直さなければならない場面など、今でも課題はあります。子育ては一直線ではないと日々感じています。

それでも、周りの人の理解と少しの工夫があれば、この子は自分の力でちゃんと前に進んでいける。幼稚園で得たその確信が、今の私と息子を支える一番の力になっているのです。息子には、見栄を張らず、素直で柔軟な心を持って、大好きなお友だちとたくさんのことにチャレンジしていってほしいと願っています。

今、同じように悩んでいる保護者の方へ。一人で抱え込まず、ぜひ専門機関や園・学校の先生に相談してみてください。きっと、その子に合った「はじめの一歩」が見つかるはずです。焦らず、お子さんのペースを信じて、その歩みを応援してあげてほしいなと思います。

イラスト/プクティ
エピソード参考/ぺー

(監修:新美先生より)
ほかのお子さんがいるとフリーズしてしまうという息子さんの幼稚園入園への道のりについて聞かせていただきありがとうございます。

息子さんは、他者がいる場面で特に不安を抱きやすいタイプのお子さんだったのですね。公園や幼稚園など子どもたくさん集まる場所は、予測不能な動きをてんでばらばらにする子どもたちに圧倒されてしまったり、音やにおいなどの刺激・情報量の多さでパニックになりやすいのでしょう。そのようなタイプのお子さんが集団生活に踏み出すことは、大きなハードルがあり、決して一筋縄ではいかない道のりだったこととお察しします。

幼い息子さんが「ぼく、何歳になったら幼稚園に行くの?お兄ちゃんたちと一緒の幼稚園は嫌だよ」というのを聞いた時には、お母様もさぞ切ない気持ちになったことでしょう。それにしても、3歳の時点でそんな発言をするとは、賢いお子さんですね。

そこでお母様が専門機関と連携し、幼稚園に入る前にまずは少人数制の療育(発達支援施設)で家庭以外の集団生活の基礎を築かれたことは、とてもよい「はじめの一歩」だったと思います。療育(発達支援施設)という場で、お子さんの特性に合った支援を受け、安心できる環境で、家以外の場面、集団活動に慣れていくのに最適な場所だったのではないかと思います。また、療育の中で幼稚園に行ったときにどのような支援が必要かを見極め、それを幼稚園の先生に具体的に伝えられたこともよかったですね。

そして、入園。幼稚園のクラスメイトも、初めはよく分からないたくさんの集団でしかなく「怖い」と感じていたことでしょう。それでも毎日顔を合わせるうちに、一人ずつ、どんな子かなというのが見えてきて、さらに声をかけてもらって「お友だち」として認識できるようになると、不安も和らぎ、登園のモチベーションにもつながっていったのですね。園生活に慣れるのには、時間がかかります。体験談にあったように、お子さんのペースを尊重し、集団活動を強制させずに、お子さんに合わせたスモールステップを積み重ねていく行くことで、自分らしく幼稚園生活が徐々に安定していき、自信を育んで成長できたことは何よりですね。

新しい環境に踏み出すときは、同様の不安がつきものですが、この経験を生かして、しっかり準備して、環境を整えて、スモールステップで本人の歩みを見守り支えていけば、この先もきっと大丈夫ですね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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