紙幣探知犬がマネロン目的の不正な現金持ち出しを食い止める
今月から、成田空港にて、お金の匂いをかぎ分ける優秀な犬、「紙幣探知犬」が導入されました。なぜなのか、詳しいお話しを財務省 関税局監視課 村上裕一課長補佐に伺いました。
紙幣探知犬
財務省 関税局監視課 村上裕一課長補佐
最近、マネーロンダリング対策の重要性が国際的に強調されておりまして、国際的に国境での現金の持ち出し等に対する対策の強化が求められているところです。こうした事情を背景にいたしまして税関では、多額の現金を海外へ向け、不正に持ち出すような事案に対応するため、今般、新たに紙幣探知犬を導入することにいたしました。では一定の金額を超える現金を携帯して出国する方々には、支払い手段の輸出申告というのを求めております。今回の紙幣探知犬の導入によりまして、多額の現金が無申告で輸出されることを防ぐことに繋がればと考えておりまして、犯罪者やテロリストなどへの不正な資金の流れを断つことに繋がることを期待しているところです。
近年、詐欺グループなどが資金洗浄、「マネーロンダリング」目的で多額の現金を手荷物に隠して海外へ持ち出すなどのケースが多く、水際対策の強化が必須になっている。
国際的にも核やミサイルなどの脅威が増している中で、犯罪者やテロリストに不正な資金が渡らないようにするためにも紙幣探知犬導入して対策の強化を図る取り組み。
成田空港からスタートさせ、今後についてはまだ確定していないとのこと。
その紙幣探知犬ですが、どのように訓練された犬なのか、探知犬を訓練する職員、ハンドラーと探知犬の関係についてなど、詳しいお話しを実際に訓練を行っている東京税関麻薬探知犬訓練センター室の大和(おおわ)喜美枝 麻薬探知管理官に伺いました。
どんな訓練
東京税関麻薬探知犬訓練センター室の大和喜美枝 麻薬探知管理官
探知犬とペアを組んで検査を行う税関職員であるハンドラーとともに、約1ヶ月間の訓練を行いました。紙幣探知犬は元々麻薬探知犬ですので、短い期間で訓練を終えております。ダミーと呼んでいるタオルを頭上に丸めたものを使って、ハンドラーが犬と遊んで、たくさん褒めることを続けると、犬はダミーがあれば、ハンドラーが遊んでくれることを覚えます。このダミーに麻薬や紙幣の匂いを付着させて一緒に遊ぶことで、犬はダミーでハンドラーと遊びたくて、紙幣等の匂いを探すようになります。探知犬とハンドラーの信頼関係っていいますかそういうところを見ると感動しますね。実際に現場行って探知してそっから不正薬物が激アツになるっていうところを何度も見ていますので、すごくやりがいのある職場だと思います。
もともと麻薬探知犬になるために4カ月訓練が行われ、試験に合格し、麻薬探知犬として活躍している犬に、今度は「紙幣の匂い」を覚えさせる訓練を1カ月行った。
訓練するのは一緒に現場で検査を行う税関職員。いわば「パートナー」。
厳しい訓練かと思いきや、ダミーのおもちゃでパートナーと遊びたくて匂いを覚えると言う訓練の進め方を行う。
ただ、今は精密機械などが発達していきている世の中、なぜ犬なのか、再び大和さんに伺いました。
東京税関麻薬探知犬訓練センター室の大和喜美枝 麻薬探知管理官
1度に大量のものを探すっていうのが、麻薬探知犬の特徴だと思うんですよ。機械だと1個1個流さなきゃ見れないとかあるじゃないですか。ある程度大型犬ですから縦横あの広域に渡って走り回って匂いを探すので短時間で大量のものを検査できるっていう。人間のもう何万倍、かなり嗅覚がすごく優れていますから、強い匂いであれば遠くでも匂いを検査できるっていうメリットがあります。
今麻薬探知犬、紙幣探知犬として活躍する犬の犬種はシェパードとラブラドールレトリバー。大きな犬が、圧倒的嗅覚を持って広範囲に走りまわる。
また匂いは風に乗ってやってくることもある。そうなると、いちいち機械などに通して検査するよりも効率がいいとのこと。
また、アメリカやカナダ、オーストラリアではすでに紙幣探知犬を導入し活躍しているとのこと。今後成田での日本で訓練をうけた紙幣探知犬の活躍に期待です。
そんな紙幣探知犬、なんと現場にデビューすると7年間は活躍し、能力を衰えさせないために、現場に出ながら日々訓練を継続するんだとか。では、引退してからはどのように過ごすのでしょうか、再び大和さんのお話し。
東京税関麻薬探知犬訓練センター室の大和喜美枝 麻薬探知管理官
引退したあとは、大事に飼っていただける方にお譲りする。
多くは元ハンドラー(訓練する職員)。一緒に仕事をした職員なので、引退したら飼いたい
ということが多い。あとはハンドラーの家族。7年間、一生懸命働いてくれた探知犬なので、
大事に飼っていただける方にお譲りしてます。
税関の職員さんなので異動もあり、7年間の間に担当が2人、3人と変わる可能性の方が高い。
ある麻薬探知犬の場合、今まで担当したその2、3人のハンドラーさん全員が飼いたくて
話し合いになることもあったそう。ハンドラーと探知犬の絆は強いんです。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:竹内紫麻)