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「自分の頭の中にいた人たちにようやく会えた、という感覚に近いかもしれない」── TVアニメ『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』原作者・今村翔吾先生×鳥越新之助役・梅田修一朗さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2026年1月11日(日)より放送中のTVアニメ『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』。火消組の頭取となった松永源吾が、個性豊かな仲間たちとともに、江戸の町で続く不審火の真相を追っていく本作は、迫力ある火事場の描写だけでなく、人と人とのつながりや信念を丁寧に描く時代劇として注目を集めている。

アニメイトタイムズでは原作者・今村翔吾と、鳥越新之助を演じる梅田修一朗による対談を実施。前半では、映像で語られた内容を記事向けに再構成し、アニメ化を迎えた率直な印象や、キャラクターに声が宿ったことで生まれた手応えを振り返ってもらった。後半では、物語や表現の核心へとさらに踏み込みながら、本作の魅力に迫る。

【写真】アニメ『火喰鳥』原作者・今村翔吾×新之助役・梅田修一朗インタビュー対談

「僕の頭の中にあった新之助の声そのまま」

──まずは今村先生から、今回『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』がアニメ化されると聞いたときの率直なお気持ちをお聞かせください。

今村翔吾先生(以下、今村):まずは「珍しいな」というのが正直な感想でした。時代劇のアニメって、ファンタジー寄りのものはあっても、ここまでリアル路線の作品ってあまりないと思うので。ただ、やっぱり嬉しかったですね。正直、アニメ化するとは思ってなかったので。しかもデビュー作ですし、自分が作家として初めて世に出した物語がアニメになるというのは、いよいよ感慨深いものがありました。

©今村翔吾/祥伝社/ぼろ鳶組一同

──続いて、梅田さんが最初に原作やシナリオをご覧になった時の感想や印象をお伺いできればと思います。

鳥越新之助役・梅田修一朗さん(以下、梅田):僕自身、過去に日本の時代劇にそこまで触れてきたわけではなかったんですが、そんな自分でも当時の空気感を自然と想像できる作品だなと感じました。原作者の今村先生を隣にしてお話しするのは少し恐れ多い気持ちもあるんですけど、それでも「骨太な作品だな」という印象は強くて。

初めて日本の歴史に触れる人でも「こういうことがあったんだ」と知るきっかけになるし、同時にエンタメとしての軽快さもあって、すごく読みやすい。読後感のある作品だなという印象でした。

──物語が進むにつれて、印象に変化はありましたか。

梅田:最初はお頭の源吾さんの視点で物語が進んでいくんですけど、新之助を演じる身としては、新之助の心情に思いを馳せながら読んでいきました。1人1人にしっかりバックボーンが描かれているので、感情移入しやすいなと。

今村:全体を通して考えると、一番変化が大きいのは新之助な気がしません?

梅田:そうですね。

今村:そう考えると、一番難しい役だったんじゃないかなとも思います。

梅田:いちファンとして読んでいても、新之助は自然と好きになるキャラクターだなと思っていました。

今村:事実として、サイン会に来てくださる方の反応を見ると、新之助が一番人気なんですよ。シリーズを通しても、新之助は常に上位で、深雪と1位2位を争っているイメージがありますね。

梅田:深雪さまと新之助が争っているんですか!?(笑)

今村:そうそう。特に女性ファンに人気の高い印象ですね。

──今村先生が新之助というキャラクターを描くうえで、特に意識されていたことはありますか。

今村:新之助は、火消しの中でも一番“素人”の立場から始まる存在なんですよね。物語自体は、登場人物全員の成長を描いているつもりではあるんですけど、その中でもいちばん分かりやすい成長の軸になっているのが新之助だと思っています。火事場など重苦しいシーンも多い中で、新之助がいると少し安心できるというか、ムードメーカー的な存在として描いているつもりではあります。

©今村翔吾/祥伝社/ぼろ鳶組一同

──梅田さんは新之助の魅力をどのように捉えていますか。

梅田:先生がおっしゃっていた通り、お調子者なところがすごく愛らしいというか。読んでいて、見ていて、楽しいキャラクターだなと思います。だからこそ、自分の根っこにあるものと向き合うシリアスな場面が、より際立って魅力的に見えるんですよね。

今村:すぐ調子に乗るところが、新之助の良いところでもあり、悪いところでもあり(笑)。いろいろなキャラクターに思い入れを寄せる人がいると思うんだけども、いちばん多くの方が感情移入しやすいキャラクターなのかもしれないですね。

──梅田さんは演じる上ではどのようなことを意識していますか?

梅田:僕自身も新之助として、皆さんと関わるのを楽しむというのは大事にしたいなと思っていて。キャストの皆さんも、以前からご一緒したいと思っていた方ばかりで、まず純粋に嬉しかったですね。その中で、自分もこの座組の一員として、芝居の上ではしっかり食らいついていく、肩を並べて作品を作っていくんだ、という気持ちで臨んでいました。そういうところが、新之助の真面目な部分と通じていたらいいなと思っています。

©今村翔吾/祥伝社/ぼろ鳶組一同

──では第1話をご覧になった感想をおうかがいできればと思います。

今村:これは初めてお会いした時も思ったんですけど、「めっちゃ新之助や」って思いました。僕の頭の中にあった新之助の声そのままで、正直、驚いたぐらいです。

梅田:えっ本当に嬉しいです。

今村:お世辞じゃなくて、本当に思ったことで。アフレコ現場にも後で行かせてもらった時に、「新之助、めっちゃ新之助じゃなかった?」と言い合いながら帰宅したくらい。新之助に限らず、他のキャラクターもそうで。僕がイメージしていたもの、あるいはそれを超えてくる部分もあって。自分の頭の中にいた人たちにようやく会えた、という感覚に近いかもしれないです。

梅田:うわ……もう、声優冥利に尽きるお言葉です。

今村:第1話を見て、もっと続きを見たいなって思いましたし、ちょっと忘れていたところがあったので(笑)、自分が書いたものなのに「こんな感じやったな」と新鮮な気持ちで見られました。これは続きも見ていきたいな、って素直に思いましたね。

梅田:僕としてもそうですね。1話を見て、新之助の芝居や印象の部分で、「あ、しっくりくるな」って感じたところがあって。もしかしたら、自分にとって出会いのキャラクターになるかもしれないな、と思っていたので、そういうお声をいただけて嬉しいです。

今村:最初の第一声、新之助が出てくる声のところをぜひ聞いてほしい。「新之助や」ってなるんですよ。1話からワクワク感があって、もし全部配信されてたら、一気見しちゃいそうな感覚はありましたね。

梅田:よかったです。新之助のパーソナルな部分として、お調子者で軽快なところはもちろんなんですけど、その中でも相手をちゃんと見ようとしているんですよね。しっかり相手を見ているぞ、というところも伝わったらいいなと思っています。

今村:振れ幅が大きいんですよね、新之助は。

梅田:ねえ(笑)。

今村:ねえ(笑)。

梅田:先生といっしょに「ねえ」って言えるのが嬉しいです(笑)。

今村:思えば深雪も振れ幅が大きいんだよね。振れ幅の大きいキャラクターが分かりやすく人気が出るのかもしれない。そう言うとお頭に怒られそうやけど(笑)。でも、お頭はお頭で、中心にいて、みんなをまとめる存在としていられたら、それでいいんかなって。1話を見て、本当に良かったなって思いました。

©今村翔吾/祥伝社/ぼろ鳶組一同

名前が似ているふたりが、同じ現場に立つまで

──ちなみに、アフレコ現場はどのような雰囲気だったのでしょうか。

梅田:初回は今村先生も来てくださって。源吾を演じられている梅原(裕一郎)さんの、どっしりとした感じがあって。ご本人は多分、「いや、どっしりしているつもりはないよ」っておっしゃると思うんですけど、あの毅然とした感じが、緊張感というより、自然とみんながまとまる雰囲気を作ってくださっていたなと思っていて。僕は隣にいる方に「ここどうっすかね」「最近どうっすかね」などと話したり、(加持星十郎役の小野)賢章さんとはラーメンの話をしたり。実は僕は梅原さんとは、メインでしっかりご一緒するのは初めてだったんです。

今村:名前、似てるってよう言われるよね。

梅田:めちゃくちゃ言われます(笑)。

今村:“梅”被り、珍しいよね。

梅田:珍しいですし、しかも「いちろう」まで一緒なので。

今村:でも縁起ええと思いますよ。時代劇とか時代小説って、昔から「郎」が付く名前は売れる、みたいなジンクスがあって。池波正太郎、司馬遼太郎、山田風太郎……みんな「ろう」がつく。だから「ろう」が付くのも、縁起の良さがあるんちゃうかなって。結果的に時代劇っぽいキャスティングになったなと思っています。

梅田:へえ! それはすごくいいご縁ですね。梅原さんには「こうやって隣に並べるの嬉しいですし、『火喰鳥』では梅梅コンビでやっていきましょう!」と言ったら、(冷静な声で)「うん」って言ってくれて(笑)。

今村:あはははは、あんな感じやね。

梅田:今後。乞うご期待ください(笑)。

今村:梅原さんから、収録自体もかなりスムーズに録れたって聞きました。

梅田:本当にそうですね。収録はテスト→本番って進めていくんですけど、テストの熱量をそのままに、本番で一気に録る感じで。

今村:アニメーションはまだ途中までしか観られていないので、早く続きが見たいなあ。新之助、後半どうなってんやろと。

梅田:それは僕も本当に見たいです。2話までの間に新之助のお父さんとの関係性も少し描かれていると思うんですけど、その先も気になりますよね。

©今村翔吾/祥伝社/ぼろ鳶組一同

──今村先生はアニメのアフレコ現場をご覧になるのは初めてでしたか?

今村:初めて! ずらっと並んで、入れ替わり立ち替わりマイク前に立って、まるで上杉謙信の車懸りの陣みたいな感じで。「すげえ!」って思いました。ある意味、舞台に近い感じもあって、ほぼ一発録りみたいな感覚もあった。ドラマとはまた違う団結力が見られて、すごく良かったですね。

梅田:嬉しいです。

──では、せっかくの対談なので、お互いに聞いてみたいことがあればぜひ。

今村:(梅田さんに)初めてお会いした時に、ちょうどその前後で主演されていたアニメを見てた時期やったんですよ。だから挨拶した声を聴いたときに「うわっ! 同じ声が来た!」と思ったんです。梅田さんは地声と(キャラの声が)似ているタイプじゃないですか? やっぱり違う人もいます?

梅田:そうですね。ガラッと変えられる方もいます。僕は声から作るというより、お芝居から作っていくことを意識していて。それは皆さんもそうだと思うんですけども。キャラクターのパーソナルな部分を考えた結果として出てきた声を、大事にしたいなと思っています。

今村:なるほど前日まで、別の作品で見てたから余計にそう感じたんかもしれないけど、「そのまんまや!」とそれに驚いたというか。もちろん演技は全然違うんやけど、声の質自体は結構近かったから。

梅田:そうですね。近いかもしれないです。

今村:何か僕に聞きたいことはありますか?

梅田:役者って自分で物語を書くことはないじゃないですか。どのクリエイターの方にも通じると思うんですけど、ゼロからイチを作る時のエネルギーって、どこから来るんですか。

今村:テーマですね。いろいろなタイプの作家がいると思うけど、まずテーマを決める。時代が違っても人間は同じことを何度も繰り返しているから、同じような困難に直面した昔の時代で、それを一番表現できる場所はどこだろう、って考えるんです。

『火喰鳥』で言うと……日本は災害の多い国で、どうしようもないことも多いけど、災害だからこそ「どうにかできる人が、どうにかできる」場面もある。被災地で頑張っている自衛隊の方や消防士の方の姿と同じことが、江戸時代にもあったよ、っていうのを描けたらいいなと思って。今よりもっと困難だったはずやしね。「何度でもやり直せる」「立ち上がれる」「復興できる」みたいなテーマが先にあって、そこから書いていった感じです。

キャラクターに関しては、なんとなくアニメ的に考えてる部分もあるかもしれません。だから、梅田さんの声がハマりそうなキャラクターは、僕の小説の中にだいたい一人はいる気がするんですよ。

梅田:そうやって今後「あ、新之助の人だ」みたいな関わり方ができたら、すごく嬉しいです。

今村:僕自身がアニメを見て時代小説を書く、たぶん最初の世代やと思うんですよ。10代の頃に、夕方からアニメをはしごして見てて、同時に時代小説も好きで、っていう世代。だからこそ、アニメと時代小説を融合させるのが、比較的うまくできる世代なのかなって。僕より上の世代、50代、60代になると、アニメにそこまでどっぷり、っていう人は少ない印象がありますね。僕らは両方を違和感なく統合できるようになった世代なのかなと感じています。

梅田:原作を読んでいても、自然とキャラクターの声が聞こえてきやすいな、とは感じていました。そういうところも関係しているのかなと、今お話を聞きながら思いました。

今村:それと時代小説って、実は「大人向けのラノベ」みたいに言われることもあるぐらいで、共通点は多いと思ってて。今、ラノベがアニメになることも多いし、時代小説も実はアニメ化しやすい題材なのかもしれないですね。

梅田:皆さん、期待してる展開もあったりしますものね。

今村:そうそう。結局みんな、水戸黄門の印籠が見たいよね、みたいなところがあって。『火喰鳥』で言うと、お頭の一言が、ある意味その印籠なんですよね。

梅田:「喰ってやる!」。

今村:そうそう。あれが出ると、大体物語は解決します(笑)。あの言葉は結構、何回も出てくるよね。

梅田:結構出てきたと思います。お頭の隣で、よく聞いてました。

今村:「喰ってやる!」のバリエーション、大変そうやなと思って(笑)。

梅田:そうですね、いろいろなバリエーションがありました。

今村:逆に新之助は新之助で、喋りが多いような気がします。

梅田:お頭の隣でワチャワチャしたり、説明係みたいな役割もあったり。

今村:そうそう。ガイドラインみたいな感じもあって、大変やったんちゃうかな。

梅田:でも、楽しかったです。

©今村翔吾/祥伝社/ぼろ鳶組一同

──では改めて、このアニメ『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』の魅力を挙げるとしたら、どんなところでしょうか。

梅田:アニメならではの魅力で言うと、やっぱり声がつくところだと思います。今回はCGアニメーションでもありますけど、その印象は先生としてはいかがでしょうか。

今村:CGの表現もどんどんレベルが上がってきていて、火事場の動きや炎の表現を考えると、むしろCGじゃないと難しい時代になってきてるのかなって思います。今CGは転換期だとは思うのですが、CGが育ってきたからこそ『火喰鳥』ができた、という感覚はありますね。集団での動きも多いですし、50人規模になる場面もある。そういう意味では、CGが重要なのかなと。

梅田:CGならではの迫力がありますもんね。思わず息を飲むような臨場感も、アニメ映像、CG映像ならではの魅力かなと感じています。

今村:あとは、極端な話、5歳、6歳でも見られるところですね。時代小説だとさすがにそうはいかないけど、この作品は小学生から、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんまで、ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんまで、全世代が一緒に見られる。今は“お茶の間”という表現はしないけれども、同時に見られるっていうのが、このアニメのいいところかなと思っています。

──では一度ここで、これからアニメをご覧になる方に向けて、メッセージをいただければと思います。

梅田:先ほど先生もおっしゃっていましたが、誰でも見られる、もしかしたら何話からでも見られるアニメーション、物語になっていると思います。気軽に見ていただいても、きっと息を飲むような迫力を感じてもらえる作品になっていると思いますし、新之助のこれからの成長や、また違った一面が見られる瞬間も訪れると思いますので、ぜひその先まで楽しみに見ていただけたら嬉しいです。

今村:時代小説が原作なので、ある意味、皆さんのおじいちゃん、おばあちゃん、もっと言えば、ひいひいひいひいおじいちゃん、おばあちゃんの時代に本当に起こっていた出来事を題材にしています。現実世界と地続きの物語だということを、少し感じながら見てもらえると、リアルさや物語の深さも、より伝わるんじゃないかなと思っています。それをアニメという形で、堅苦しくなく、気軽に見られるのがこの作品の良さだと思うので、まずは騙されたと思って見てみてください。

インタビュー後半はよりディープに迫る!

──ここからはカメラを抜きにして、改めてお二人にじっくりお話を伺いたいと思います。オーディションやキャスティングを経て、完成した座組をご覧になったとき、今村先生はどのように感じられましたか。

今村:いやもうすごいメンバーだなと。実は僕、新之助だけ誰が演じるか最後まで聞いてなかったんですよ。

梅田:そうだったんですね! そしたらキャストの選考には先生は立ち会われていなかったんですか?

今村:そうそう。だから「どんな人が来んのやろ」って思っていて。それで梅田さんのお名前を見て「あ、この方か」って。さっきも話したように、梅田さんが出演されているアニメを他にも見ていたので「いけそう」とは思ってはいました。ただ、想像以上に新之助がちゃんと新之助していて。担当編集にも「新之助、やばいよな」と言ってたくらいで。

梅田:ありがとうございます。

──最高の言葉ですね……。ではここからは、ストーリー前半の範囲で触れられるところを中心に、改めてお話を伺っていけたらと思います。

今村:まだ(現段階では)そこまでのアニメーションを見られていないんですよ。ギリギリまで作業をされているとうかがっています。仕上がりを楽しみにしているところなので、詳しくはお話できないかもしれませんが……。

梅田:前半は仲間を集めて、だんだんチームになっていく段階ですね。

──そうですね、星十郎も登場しています。

今村:仲間が集まっていくのが、"ぼろ鳶"のひとつの良いところじゃないかなと。

梅田:楽しいですよね。仲間を集めて、だんだんチームになっていく感じ。毎回新しいキャラクターが参加してワクワクしますよね。まるで戦隊モノみたいな。

今村:そうそう、まさに戦隊モノのような。原作も一冊の中で仲間がどんどん増えていくので、その変化を一人ずつフィーチャーできるのは、アニメならではやなって思いますね。

©今村翔吾/祥伝社/ぼろ鳶組一同

“火喰鳥らしさ”は制作現場にもあった

──新之助はもちろんですが、先生の中で、このあたりで登場するキャラクターで印象的な方は?

今村:みんな良いなと思っていて。声の部分で言うと、勘九郎さんの声(CV.諏訪部順一)を聞いてなくて、楽しみにしているところです。きっとカッコいいだろうなと。源吾も良かったし……全員に違和感がなかったです。

梅田:さきほど先生が選考には携わられていなかったというお話を伺いましたが、そのあとにそう言っていただけると参加している身としては本当にホッとします。

今村:いや、もうめっちゃいいと思っていて。原作者としては、選考に参加したい気持ちはあったんだけれども、そこはチームを信じて任せてた。結果、全部ハマってたから。さすがやな、と。

梅田:今のお話自体が、『火喰鳥』感がありますね。仲間を信じて、チームづくりをされている感じが。

今村:ああ、確かに。このアニメの制作って本当に異色で。まさに『火喰鳥』らしく、いろいろな立場の人が集まってきて、アイデアをすり合わせていったんです。脚本の打ち合わせには、僕自身も気づけば10回以上参加させてもらっていて。

結果的に、僕自身も想像していた以上に制作に関わることになりました。このあとも色々と宣伝に登場します(笑)。原作者がここまで表に出てくることって珍しいとは思うんですよ。それだけこの作品に対する想いが強くて。「せっかく皆さんがここまでやってくれたんだから、自分にもできることは全力でやりたい」と。知ってもらわないと始まらないから。

──大事ですよね。

今村:「宣伝」と言葉にすると、ちょっとどうかなって思うところもあるんやけど、それでも僕はやっぱり大切やと思ってて。見てもらえたら、いい作品やと思うし、さっきの創作の話じゃないけど、(知ってもらわないと)何も始まらないから。「自分には合わないな」っていう人もいるかもしれない。でも、まず届けるっていうところに、僕も参加したいなと思っているんです。

実は同じ年に始まっていた、ふたりの物語

──『火喰鳥』を書かれたことで生まれた出会いを、今村先生はどのように受け止めていますか。

今村:縁だなというか。思えば、2017年にこの物語を書いていなかったらこうして梅田さんとお会いすることもなかったと思うと、間違いなく縁ですし、そもそも小説を書いていなかったら……などと考え出すとキリがないんやけども(笑)。でもすごく縁を感じる作品になったなって思います。特にデビュー作やからかな。あの頃の僕は、こんなことになるなんて全然思ってなかったから。

梅田:すごいですよね。それで言うと、僕、2017年の頃って養成所に入っていた時期なんです。事務所に所属できるかどうかが決まる年でしたね。養成所に通いながらオーディションを受けていて、その年にはじめてちゃんとお仕事をいただけた年でした。

今村:へええ、すごい。デビューが一緒なんだ。まさに縁だ。

──今村先生の場合、バックグラウンドが少し特殊ですよね。

今村:ほんまにそうで。もともとダンスを教えていたから。昔から「いつか小説家になりたい」って言葉では言ってたけど、正直、自分の中ではもう諦めてたんやと思う。教え子に家出を繰り返す子がいて、迎えに行ったときに自分なりに説得を試みたのですが、「夢なんかどうせ叶わん」と反発されて。で、「いや、お前、自分で諦めてるだけやろ」と言ったら「翔吾くんこそ諦めてるやん」と。

さらっと言われたその一言がきっかけで、「あ、俺、ほんまに諦めてるわ」って気づいて、翌日に仕事を辞めるって決めたの。それで30歳で「書こう」って決めて、そこから1〜2年後かな、北方謙三先生に出会って。そのとき「3ヶ月で書けなかったら、今の時代では喰っていけないぞ」って言われたんやけど、ちょっと調子に乗って「1ヶ月で十分です」って言ってしまったんよね(笑)。

それで1ヶ月で書いたのが『火喰鳥』。どうせ消える可能性もあるなら、後悔のない物語にしようって思っていた。どうせ書くなら誰かを応援できる小説にしよう、仮にこの一作で終わってもいい……そう思って書いた。だから、情念がこもっている気がする。

関係ない話やけど、今シーズン2を書いてて、デビューした頃のあの熱量に勝てるんかって、正直思うんよね。あの時の熱は、なかなか再現できへん。だから『火喰鳥』には、すごく僕の熱がこもってると思う。

──第2話に登場する「人の強さは、その人の弱さを知ることだ」といった言葉をはじめ、そういう言葉一つひとつにも、やっぱりすごい熱を感じるなと思っていて。

今村:ね(笑)。その熱をアニメで再現してくれてると思いますし、「言霊」とよく言いますけど……僕は言葉と文字ってすごく似てるものだと思ってるんです。言葉がないと文字にも起こせないから、実は言葉のほうが先で、それを特定の人に留めようと思って、残そうとしたのが文字なんですよね。だから、僕が扱っているのは言葉よりも後輩というか。

でも、今はまた言葉として残せる媒体があって、その循環が生まれている。一度、人の言葉を文字に起こしたものを、もう一回ちゃんと返してもらって、さらに良くしてもらう、みたいなイメージなんです。アニメはそれがすごく良かった。熱を一度冷凍して、解凍して、また受け取って、さらに良くしてもらった、そんな感覚ですね。

──それを“喰う”のが、ある意味、視聴者なのかもしれないですね。

梅田:いいですね、食べていただきたいです。

──おふたりのお話を聞いていると、4話の新之助のセリフにあった「人を信じるのに、時間の長さは関係ない」といったセリフがまさにそれを感じます。

今村:そう思う。僕、良くも悪くも、ある程度直感で人を見るところがあって。「この人嫌だな」とかのマイナスな意味ではなくて、「この人は大丈夫やな」って思う瞬間があるんです。で、(梅田さんとは)初めて会った時から、大丈夫やなって思ってました。アフレコのとき、ミキサールームにいた僕らに「この表現って、こういう意味ですよね?」といったことを聞きに来てくれたことがあって。その時点で、かなり読み込んでいて、理解度が深いなって思った。質問の質がすごいなと。あったよね、そういうこと。

梅田:ありました。たぶん新之助の一人称のことも伺ったような……。

今村:そうそう、それ。新之助って、普段は「私」で、キレたら「俺」になるのよね。そのオラつき具合というのが新之助が好かれるポイントで、僕自身も大事にしていたところで。それについてどこかで言わなあかんなと思ってたら、先に聞いてくれたのよ。ちゃんと理解してくれてるんだなって分かって。一人称をすごく大事にしていたところを、ちゃんと演じる段階で汲み取ってくれたのは、嬉しかったですね。

梅田:質問するって、ちょっと勇気がいる作業でもあるんです。「一緒に作り上げていくものだから(どんどん質問していいよ)」と言ってくださる方も多いんですけど、やっぱり皆さんが何時間もかけて作った脚本があって、アニメ用に製本されていて。そこにポッと来て「ここって……」って聞くのは、正直、迷いもあって。

今村:いや、でもすっごく良いことだと思うし、嬉しかった。難しいのが……例えば、アニメを見ている層からしたら「僕」って当たり前の一人称なんですけど、江戸時代には「僕」という一人称はないんですよね。でも、見る人の中に例えば祖父母世代の方がいたとしたら、「この時代に僕はないやろ」って思う人もいる。そのせめぎ合いはありました。

──今村先生は、どちらかというと、その両方を大事にされてますよね。

今村:できる限り、どちらも取れるなら取る。無理な時は決断する、という感じですね。でも「私」はいけるんですよ。「私」なら新之助のイメージは崩れない。しかも梅田さんがそれについてきちんと理解してくれていたから「あ、これは大丈夫やな」って思えた。

梅田:嬉しいです。

群像劇としての『火喰鳥』

──第4話には藤五郎が登場します。なんだか引っかかる独特の余韻を残しますよね。

今村:藤五郎の声(CV.三木 眞一郎)はまだ聴けていないんだけども、めちゃくちゃ印象に残る声になってるとは噂に聞いています。「すごく良い」と。

©今村翔吾/祥伝社/ぼろ鳶組一同

梅田:はい、素敵ですよ。『火喰鳥』のキャストの方々はぼろ鳶組以外のメインメンバー以外の方々も本当に素敵で。辻 親八さんが演じる金五郎さんも大好きです。

今村:いいよね、金五郎さん。ベテランから、いわゆる若手まで、本当にいろんな方に出演していただいているんですよね。こういう感じで揃ってるのは、なかなかないですよね。

──その中でも、深雪役を三吉彩花さんが演じられているのが印象的です。

今村:アニメは初めてって言ってたもんね。本人はめちゃくちゃ緊張していたそうで、練習もかなりしてたみたい。

梅田:そうですね。アフレコを通じて徐々にお話するようになって。そのときに「実は毎回お腹が痛かったです」というお話をされていて「えっそうだったんですか」と。

©今村翔吾/祥伝社/ぼろ鳶組一同

今村:そんなことを感じさせないくらい、すごく良かったよね。その一方、取材でスチール撮ってる時とかはモデルの本領発揮してて、ポージングのレベルがすごすぎて少し笑ってしまいました。アイテム使いがすごくて、「ああ、モデルでありながら役者なんだな」と。

梅田:三吉さんのことは、もちろんスターモデルとして存じ上げてはいたんですけど、今回ご一緒するにあたっては、あえて詳しい経歴などは調べないようにしていたんです。現場では、同じ立場で、同じ作品に向き合っていたかったので。でも、すべてのアフレコが終わったあとに渋谷を歩いていたら、スクランブルスクエアの大画面に三吉さんの映像がドーンと映っていて。「あ、そうだったんだ」って、改めて実感しました(笑)。

今村:すごいよね(笑)。今回、他業界からも参加してもらっていて、それもぼろ鳶組っぽいなと。

梅田:現段階だとまだ言えないところもありますけどね。

──『火喰鳥』は登場人物がかなり多いですよね。

今村:そうそう、『火喰鳥』は登場人物がめちゃくちゃ多い。今原作が13冊あるけど、今60人ぐらいいて、たぶん時代小説の中でも、かなりキャラクター数が多いんじゃないかなと思うくらいで。『火喰鳥』って、基本的には群像劇なんですよね。もう「ようこんだけ処理したな」って思いました。アニメで言うと、会議のシーンとか、みんなで話している場面がぱっと分かるじゃないですか。でも小説で4人、5人が会話するのを表現するのがめちゃくちゃ難しいんですよ。本当に難しい。

それがアニメになった時に、こんなにさらっと表現できてしまうんや、って思って。めちゃくちゃ苦労するところなんですけど、でも自分が思い描いてた「こういうことをやりたかった」っていうのを、ちゃんと形にしてもらえてるなって感じました。集団感を一目で見られるっていうのは、アニメのすごくいいところやと思います。

火の表現ひとつ取っても、小説では読む人それぞれが思い描くイメージが異なるけれど、アニメーションではその幅をある程度補完してあげることができる。だから「見る」「聞く」って、やっぱり強いなって思いました。源吾が寅次郎を探してるときに、新之助が飯を食ってる場面も好きなんですよ。言葉はないんやけど、それもまたよくて。

梅田:あっ、このタイミングで申し訳ないんですけども、聞きたいこと、もうひとつありました! 新之助のあの髪型はもともと決まってたんですか?

今村:いや、新之助の髪型は総髪と呼ばれるものになっているんだけども、小説には具体的には書いていたわけではなくて、曖昧になってたところで。総髪というのは実は(時代的には)レアで、ないわけではない。でも、アニメとして描くなら総髪のほうが今の読者さんや視聴者との親和性も高くなるだろうと思って、「剃らなくていいです」とお伝えしました。あの髪型は、新之助っぽくて可愛いですよね。

星十郎はもともと総髪で考えてたかな。ちょっと話がそれてしまうけれど……時代劇って「ちょんまげ」とか言う割に、昭和初期の作品でも、実はみんな取ってないことが多くて。そこをやいやい言い出したのが、実は平成なんですよね。昭和の時代劇はもっと自由だった。その後、堅苦しくなってしまったから、僕は昭和の古き良き活劇を、令和のアニメで復活させてくれたら嬉しいなって思ってます。

──最後に、今後の見どころをお願いします。

今村:とにかく新之助ですね。新之助の変化が、ここからさらに加速していきます。それから、アニメとしては終盤に、日本最大級の災害に、ぼろ鳶組が挑んでいくことになります。災害……日本最大の人災とも言えるかもしれません。そのクライマックスに向けて、ぜひ楽しんでほしいです。

梅田:新之助のいろいろな一面を、ぜひ楽しんでいただきたいです。史実に基づいた物語でありながら、それぞれのキャラクターに背景があり、立ち向かう相手についても、物語の中で丁寧に描かれていきます。その中で、ぼろ鳶組がどう向き合っていくのか、ぜひ楽しみにしてもらえたら嬉しいです。

インタビューの様子は動画でもチェック!

[取材・文/逆井マリ 編集・撮影/鳥谷部宏平]

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