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偏食の原因は?子どもの好き嫌いはワガママじゃない!?離乳食期から学童期まで発達段階別の対応を解説

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偏食の原因は?子どもの好き嫌いはワガママじゃない!?離乳食期から学童期まで発達段階別の対応を解説

監修:井上雅彦

鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

偏食はなぜ起こる? 子どもの好き嫌いは「防衛本能」って本当?

特定の食品への好き嫌いを極端にはっきり示すことを、一般に「偏食」といいます。
偏食のある人の食事風景を目にすると、「わがまま」「親のしつけが悪かったんだろう」「食わず嫌いでは?」などと眉をひそめる人が多いかもしれません。けれど、発達途中の子どもの食に目をうつせば、偏食は決して珍しいことではなく、多くの子どもが通る道です。偏食はなぜ起こるのでしょう? 

大人にとっては、食事は栄養補給の手段であると同時に楽しみの一つ。「おいしいものを食べるために頑張っている!」という人も多いでしょう。

でも、幼い子どもたちにとっては、食べることは不安を伴う行為でもあります。食べるということは、体の中に異物を入れるということ。もし腐っていたり、毒物だったりすれば、命が危険にさらされてしまいます。
食べたことのない食材を警戒するのは、「本当に食べていいのか分からない」と本能が危険シグナルを発するから。

「青い色は未熟でおいしくない?」
「酸味は腐敗のサイン?」
「苦味やえぐみは毒の可能性がある?」

こうした本能的感覚は、体が未熟で免疫力も低い子どもにとっては、生き抜くために大切なもの。さまざまな味や食感を楽しめるようになるには、経験と学習を積み重ねることが必要です。ぺっと吐き出したり、見るだけで食べなかったりすることも、乳幼児期の子どもにとっては「本当に安全?」と確かめるための大切な経験なのです。

好き嫌いをなくそうと「全部残さず食べなさい!」と叱ったり、「どうして食べられないの?」と責めたりするのは、逆効果になることも。怒られながら食べる食事が楽しいはずはありませんね。嫌な記憶と結びついて、ますます偏食が進んでしまう恐れもあります。子どもの偏食が気になるとき、大人はどんなアプローチをするといいのか。発達段階別にポイントを見ていきましょう。

離乳食期の偏食克服は、「食べにくさ解消」が最大のカギ

「同じものばかり食べたがる」
「苦手な食材があるとお皿のはじによけたり、口からペッと出したりする」

離乳食が進んで3回食になるころから、こうしたお悩みがよく聞かれるようになります。離乳初期はスムーズに食べていた赤ちゃんでも、成長するにしたがって「緑の野菜が苦手」「お肉を食べたがらない」など、特定の食材への好き嫌いをはっきり示すようになることも少なくありません。

乳幼児期は、まだかむ力が弱く、消化機能も未熟です。奥歯まで生えそろっていなければ、繊維質の野菜や肉をすりつぶして食べることはできません。また加熱しすぎてパサパサした魚や肉は飲み込みづらく、口の中にいつまでも残ってしまうことも。

離乳食には、発達段階に合わせたかたさ・大きさの目安がありますが、目安どおりに調理しても食べにくそうな場合は、より小さめ、やわらかめを意識するとスムーズに食べられるようになるでしょう。離乳食期をすぎたあとも、食べづらそうにしている食材やメニューがあれば、小さく刻んだり、とろみをつけたり、やわらかく煮込んだりするといいでしょう。

食べ慣れていない食材や調理法は、赤ちゃんにとっては未知のもの。信頼する大人が食べている姿を見ることで、「これは食べても安全なんだ!」と確認でき、「食べてみよう」という意欲につながります。3回食になり、食べられる食材が増えてきたら、大人の食事と同じ食材で離乳食をつくり、いっしょに食卓を囲むのもおすすめです。

赤ちゃんの偏食は、「見慣れていないから」「食べたことがなくて不安だから」という可能性も高いものです。ペッと出されたり、残されたりするのはがっかりしてしまうものですが、めげずに何度も食卓に登場させてみましょう。たとえ食べられなかったとしても、ほかの人が食べる姿を見るだけでも、赤ちゃんにとっては大きな経験になります。何度も繰り返し目にするうちに、ふとしたタイミングでパクッと食べられるようになることも。ただし、「食べなさい」と無理強いするのはNG。「食べられたらラッキー!」くらいのおおらかな気持ちでトライしてみましょう。

幼児期の偏食克服のポイントは? 気分を乗せる声かけも大切!

離乳食を卒業すると、幼児食へとステップアップします。

幼児期も、まだかむ力や味覚は発達途上。いろいろな味や食感を体験しながら、食の世界を広げていく段階にあります。なじみのない食材、はじめて目にするメニューには、警戒心を抱いたり、進んで食べようとしないことも当然あります。また自己主張が強くなり、「これはイヤ!」「○○は食べたくない!」と断固として拒否することもあるでしょう。

子どもの食べる様子を観察しながら、食事を楽しみながら好き嫌いを少なくできるよう、工夫してみましょう。

「もぐもぐと咀嚼するけれど、飲み込めずに出してしまう」「口に入れるけれど、かみにくそうな表情をしている」。こんなときは、かたさや大きさを見直してみましょう。

ほとんどの食材が食べられるようになっていますが、咀嚼力は大人と同等とはいきません。大人と同じメニューでも、子ども用はこまかく刻んでやわらかく火を通す、食べやすくカットするなどの工夫が必要です。

苦手な野菜はこまかく刻んでホットケーキやハンバーグにまぜたり、具だくさんのシチューに入れてよく煮込み、素材の味を分かりにくくしたりと、「嫌い!」と意識せずに食べられるように調理すると食べられるようになることも。

また、好きなキャラクターのお皿に盛りつけたり、かわいい型で抜いて見た目を楽しく演出するのもよいでしょう。見た目の楽しさが、子どもの「食べてみたい」という気持ちを後押ししてくれます。

ひと口でも苦手な食材を食べられたら、「すごい!」「食べられたね」と大げさなくらいほめてあげましょう。ほめられたことが自信となり、「次も食べてみよう」という意欲につながります。

また、「お肉、おいしいね」「野菜の色、きれいだね」と好奇心を刺激するような声かけをしていくのもポイントです。偏食が気になると、つい「全部食べられるかどうか」にばかり意識が向いてしまいますが、自分が食べる姿をじーっと見つめられながらの食事は子どもにとっても気詰まりなはずです。「そのうち食べられるようになる」と気楽に考え、会話を楽しみながら食事をしましょう。

学童期の偏食克服には「いっしょにつくる」もおすすめ

学童期に入ると、かむ力もぐんと発達し、経験の積み重ねで「苦手だった食材が食べられるようになった」ということも出てくるでしょう。その一方で、嫌いな食材については、本人にも苦手意識が強くなり、どんなに調理法に工夫をしても頑として食べようとしない、ということもあるかもしれません。

苦手な食材を出すときは、完食しやすいようにあらかじめ量を少なくします。頑張って完食できたら「お皿、ピカピカになったね!」「がんばったね!」とたっぷりほめてあげましょう。もちろんひと口だけでも食べられたら、大きな一歩! 完食することを無理強いせず、食べてみようと思ったことをほめてあげましょう。

いっしょに買い物にいったり、調理をしたりするのも、子どもの食の世界を広げる体験です。苦手な食材でも「自分で選んだ」と思うと、どんな味なのかが気になったり、少しでも食べてみようと興味がわくものです。

また、調理をいっしょにするのもおすすめ。食材の色の変化を見たり、においをかいだり、グツグツ、ジュージューという音を聞いたりと、調理は五感への刺激にあふれています。できあがった料理には、愛着もひとしお。喜んで食べてくれる家族の顔をみれば、ますます「自分も食べてみよう」という気持ちが動かされるはずです。

挑戦する料理は、難しいものである必要はありません。野菜をちぎってサラダにするだけでも十分! 子どもがつくってみたいと思うもの、簡単にできそうなものからトライしてみましょう。

苦手なメニューでも、いつもとは違う雰囲気のなかでなら、思わず楽しく食べられることもあります。たとえばお弁当を持って公園でピクニックをしたり、友達を招いてホームパーティをしたりなど、気分が盛り上がるイベントの中のメニューに苦手食材も入れておくのも一案。食べられたら、しっかりほめて達成感を感じられるようにするのもポイントです。

発達障害がある子どもには、偏食の悩みが多い?

発達障害や感覚過敏がある場合は、新しいものや知らないことに不安や緊張を感じやすく、偏食がひどくなりやすい傾向があります。(ただし、偏食があるからといって必ずしも発達障害があるとは限りません)

また、感覚過敏があると、苦みやえぐみ、酸味などを強く感じて、食事がおいしいと感じにくいこともあるほか、食材の色がどぎつく見えたり、食感が気持ち悪いと感じて食べられなくなるケースもあります。たとえばトマトの種のつぶつぶが目に飛び込んできて「こわい」と感じたり、揚げ物の衣が口にささって「痛い」と感じたり、感じ方はさまざまです。食べ物の食感や味わいだけでなく、金属製のスプーンやフォークの冷たさにびっくりしてしまったり、口当たりが気になってしまって、食事に集中できないという子もいます。

また、「白いごはんは食べられないけれど、混ぜごはんなら食べられる」「学校では食べられないけれど、家なら食べられる」、反対に「白いごはんしか食べない」「学校以外では食べられない」など、その子なりのこだわりが強いケースもあります。

発達障害は外見からは障害の有無が分かりにくいため、なかなか理解が得られにくい障害です。発達障害の特性によって出ている偏食についても、「そんなの嘘だ」「家で食べられるなら、学校でも食べられるはずだ!」と責められてしまうことが懸念されます。学校の給食で毎日「好き嫌いなく食べなさい」という指導を受けつづけた結果、学校に行くこと自体が難しくなってしまうこともあります。

ただ、発達障害があるときの偏食は、単なる好き嫌いではなく、「痛み」「恐怖」「堪えがたい不快感」などと結びついていることも少なくありません。無理やり食べさせようとすれば、ますます不安や緊張が強くなり、食べられる食材や量がいっそう狭まったり、食べること自体に嫌悪感を持つようになってしまうことも考えられます。

偏食が激しいと、「栄養不足になるのでは」「成長に影響が出てしまう」と心配になるのも当然ですが、焦りは禁物。子どものペースに合わせて、ゆっくり少しずつ食べられるものを増やしていくことが大切です。

こだわりや特性に合わせたメニューで「食べられた!」を増やそう

発達障害の特性によって偏食が起きている場合は、まずは子どもが安心できることを最優先に考えましょう。偏食があっても食べられるもの、食べられる場所は、その子にとって安心できるもの。経験を重ねることで、安心を増やしていくことが大事です。

たとえば、感覚過敏があってかたいものやサクサクしたものが口内に刺さるように感じられる場合も、しっとり煮たり、蒸したりすればおいしく食べられることもあります。

「野菜の種や葉脈がこわい」という場合は、ポタージュスープのようにすれば不安がぐっとやわらぐかもしれません。えぐみや苦みを敏感に感じ取ってしまう場合は、葉野菜や肉類は下ゆでしてアクを抜いたり、トマト味やクリーム味など、好きな味に調味して食べやすくするのもいいでしょう。

子どもの声を聞きながら、不安を取り除き、不快感なく食べられるメニューにアレンジしていきましょう。
どうしても難しく特定の栄養がとりにくい場合には、サプリメントや栄養補助食品やジュースなどで補うなど、取り方を変える方法もあります。

買い物に行ったり、調理をしているところを見せたり、お手伝いをしてもらうのもおすすめです。食べることに直結しなくても、食べ物にまつわる経験を重ねることで、食に関する認知力が少しずつ上がり、ふとした瞬間に「食べてみよう」という意欲を持つことにつながります。ベランダ菜園で野菜を育てたり、食べ物が登場する絵本を読んだりするのもいいでしょう。

大人数での食事がプラスになるお子さんもいる半面、大人数だと食べられないお子さんもいます。食事をとる環境によって食べられるものや食べられないものが変わってくることもあるので学校や園と情報交換をすることが大事です。

文部科学省では、「偏食により食事量が極端に少ない、反対に特定の食品の食べ過ぎにより成長や栄養の摂取状況に問題がある児童生徒」を個別的な指導の対象としています。

学級担任や栄養教諭、養護教諭が、子どもの達成感や自信につながるような指導をすることを目指すもので、ほかにも特別支援教育コーディネータ、学校医などが連携することもあります。

一方では過度な偏食指導によって園や学校に行くことが苦痛になる子どももいます。園や学校での偏食指導においては先生方と相談・連携することが大切です。極端に全体の食事量が少ない場合の偏食指導は、慎重に進める必要があります。

また、地域の児童発達支援センターや子ども発達支援センター、児童相談所、発達障害者支援センターなどの専門機関に相談してみるのもよいでしょう。食事は毎日のこと。親子だけで抱え込むと、日々の食事が大きな負担になってしまうこともあります。専門家からのアドバイスを受けることで、新しいアプローチ法が見つかることもあるはずです。

スモールステップで少しずつアプローチを!

偏食が激しい子どもも、食に関する経験を重ねていくことで、だんだんと食べられるものが増え、食の世界を広げていきますし、偏食は時間が経てば解決する場合もあります。

偏食のことを考え、工夫してつくった食事を食べてもらえなかったり、早く片づけたいのに食事に時間がかかってしまうなどすると親としてもストレスが溜まりますよね。食事の時間が親も子も苦痛に感じてしまう場合には、一度偏食指導を休憩するのも一つの手です。

頭ごなしに「食べなさい!」と怒るばかりでは、食への拒否反応はさらに強まってしまいます。偏食克服にはある程度の時間がかかるものとおおらかに構え、「においをかげただけでもOK!」「ぺろっとなめるだけでも成長!」とスモールステップを大切に、子どもが達成感を得られるようにサポートしていきましょう。

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