人気の検索ワード1位は「ECサイト 運営」。人気業界「EC」の求人トレンド|求人ボックス調査
今年の7月5日にアメリカのAmazonが設立から30年を迎えた。今や生鮮食品から家事代行サービスまで様々なものが購入でき、多くの場所に配送されるようになった。日本のEC業界は、1997年に楽天の前身であるエム・ディー・エムが楽天市場を開始し、その後2000年代のインターネットの普及、2010年代のスマートフォンの普及によって大きく成長してきた。生活を支える重要なインフラとなったECの裏側では、企画・運営・梱包・配送・カスタマーサービスと様々な仕事があり、多くの労働者によって成り立っている。昨今のEC関連職の給与の動きはどのような動きが見られるのか、求人ボックスに掲載されたEC関連職種の求人給与データを基にトレンドを調査し、その結果を紹介する。
BtoC EC市場規模は約22.7兆円
経済産業省が発表した「令和4年度 電子商取引に関する市場調査 報告書」によると、2022年度の国内BtoC-EC市場規模は、前年から2兆499億円増加し、22兆7449億円だった。物販系分野に絞ってみると、市場規模は13兆9997億円で、およそ61%を占めている。2022年度以降、コロナ需要が落ち着き、対面イベントや店舗販売など、リアル回帰の動きが顕著になっている。物販系分野は、伸び率は鈍化しつつも増加する結果となった。
これまでネットでの買い物経験がなかった人でも、コロナ禍を経て通販・ECの利便性を享受した利用者も多いであろう。今後もECは生活に欠かせない存在であり、市場は広がると考えられる。
【2023年 EC大手の流通額】楽天6兆円、LINEヤフー3兆円
ECは、大きく分けると「ECモール」と「自社EC」の2つある。前者はテナントが出店し商品を販売するインターネット上のショッピングモールで、後者はメーカーやセレクトショップなどが自社のネットショップを構築し物品やサービスを販売する。ECモール大手3社の流通額もしくは売上高は以下。
楽天の国内ECにおける2023年度流通総額(※1)は、6.0兆円で前年比6.9%増。楽天トラベルの国内宿泊流通総額は、コロナ拡大以前の2019年対比で42.7%増加。 LINEヤフーの国内物販系の2023年度取扱高は、3兆380億円で前期比1.7%増。そのうちショッピング取扱高(※2)は、前年比1.7%減の1兆6658億円、国内サービス取扱高(※3)は4.8%増の6429億円だった。 アマゾン日本事業の流通額は公開されていないが、6〜7兆円程度と推測されている。2023年(2023年1-12月)売上高(※4)は、260億200万ドルで前年比6.6%増、日本円に換算すると3兆6662億8200万円だった(2023年の平均為替レートを1ドル=141円で換算)。
2023年はコロナ禍の巣ごもり消費と比較をすると、ECの中でも物販の需要は落ち着いているが、旅行や外出機会の増加は復活している。
(※1)市場、トラベル(宿泊流通)、ブックス、ブックスネットワーク、Kobo(国内)、ゴルフ、ファッション、ドリームビジネス、ビューティ、Rakuten24などの日用品直販、Car、ラクマ、Rebates、楽天西友ネットスーパー、楽天チケット、クロスボーダートレーディングなどの流通額の合計。
(※2)「Yahoo!ショッピング」「LINEギフト」「ZOZOTOWN」「LOHACO」などの流通額を合算
(※3)「一休.com」「Yahoo!トラベル」「Yahoo!ロコ」「出前館」などの流通額を合算。
(※4)売上高には、直販、マーチャントの販売手数料収入、定期購入サービス、AWSなどが含まれる。
【EC業界に関する仕事探しの検索キーワード】1位は「運営」
求人ボックスにおける、検索回数が多かった「EC」または「通販」と合わせて検索されているキーワード1位は「運営」、次いで2位「アパレル/ファッション」、3位「未経験」と続いた。
ECの運営には多岐にわたる業務が含まれている。商品管理、ウェブサイト更新、キャンペーンなど販促企画を中心として、企業によってはマーケティング、注文管理、顧客対応も担当する。
アパレルやファッションを含んだ検索キーワードは今回のランキング内に4回登場し、その人気がうかがえる。アパレルのECが求職者に人気の理由として、ファッションへの興味を仕事に生かせること、急成長する市場で安定した需要があることが考えられる。
また、ECに関連する仕事は多岐に渡り、特別な資格が不要な事務的作業のほか、マーケティングやWEBデザインなど別業界の経験を活かせる業務などがある。EC業界未経験者可とする求人も多くあること、そして成長産業でキャリアアップしたいと考える人もいることから、「未経験」求人を探す人も多かった。
検索動向の集計・算出方法:「求人ボックス」利用ユーザーが、2023年4月1日から2024年3月31日の期間に、「求人ボックス」内で仕事探しを行う際に、「EC」または「通販」と合わせて入力した検索キーワードの検索数上位をランキング化。
【年収ランキング】EC業界の職種1位は「EC事業開発」578万円
求人ボックスに掲載された求人のうち、EC業界の関連職(※5)の求人給与を調査した。
平均年収が最も高かったのは「EC事業開発」の578万円だった。事業開発は、ビジネスの構築と拡大を担当する職種で、市場調査、ECストアの立ち上げ、マーケティング戦略の策定と実行、顧客体験の向上などを通じて、事業の成長および売上の最大化を目指す仕事である。経営や業界知識が求められ、また高いレベルの問題解決スキル、コミュニケーションスキルなどが必要である。企業は同様の事業開発経験者を採用したいことから、年収が高くなる傾向にある。
次いで2位は「ECサイト エンジニア」の573万円、3位「ECコンサルタント」549万円だった。
求人給与の集計・算出方法:求人ボックスで過去掲載した求人情報に基づいて中央値を算出。(2024年7月掲載情報)