世界第2位の毛皮生産国ポーランド、毛皮農場を段階的禁止
2023年に殺処分された動物は約300万匹
ポーランド議会で10月、毛皮農場を禁止する「動物保護法」が可決された。そして先日、同国のカロル・ナヴロツキ大統領がこの法案に署名。ポーランドはEUで23番目の毛皮農場禁止国となった。
ポーランドはヨーロッパで最大、世界第2位の毛皮生産国だ。2015年にピークを迎えて以降、毛皮のために飼育される動物の数は減少しているが、それでも2023年に毛皮生産のために殺処分されたキツネ、ミンク、タヌキ、チンチラなどの数は、約300万匹にもおよぶ。
アニマル・インターナショナルによると、ポーランドで生産された毛皮のほとんどが、フィンランドのオークションハウスであるサガ・ファーズを通じて、中国、ロシア、韓国の市場に輸出されているという。
だが近年、多くの国やファッションブランドが脱毛皮へシフトしており、ポーランドの毛皮産業にも影響を及ぼしている。
世界全体でみると、毛皮用に飼育された動物の数は2014年の1億4000万頭から2024年には2050万頭まで減少。ポーランドのミンク毛皮の輸出額は、2014~2015年の4億200万ユーロから2024年にはわずか7100万ユーロにまで激減した。さらにポーランドの毛皮を輸入する中国やロシアの経済危機も、これに追い打ちをかけている。
さらに、動物愛護団体の継続した活動によって、今回の法律制定に至った。
今後、新規の毛皮農場の開設が禁止され、既存の農場については8年間の移行期間が設けられる。最初の5年間にはブリーダーへの減額報酬(早期退職の奨励)が実行され、約900人いるとみられる農場労働者には12ヶ月分の退職金の支払いと転職支援などが行われる。
世界全体の毛皮産業が衰退
ポーランドの毛皮産業は世界でも大きな存在であったが、ある世論調査では、ポーランド人の約3分の2以上が毛皮農場の禁止を支持しているという。 カロル・ナヴロツキ大統領はSNSに「これはポーランド国民が長年待ち望んでいた決定だ」と投稿した。
2023年には、動物愛護活動たちがEU全域での毛皮農場禁止を支持する署名をEU市民から150万件集めた。欧州委員会は、EU全体での毛皮農場禁止につながる可能性のある法案を2026年3月までに提出する予定だ。
このような毛皮農場での動物の飼育は、アニマルウェルフェアの観点以外でも、新型コロナウイルスのような感染症を動物から人間にもたらすリスクも指摘されている。
毛皮産業に従事してきた人などを中心に、毛皮生産禁止の法律に反発する声も上がっているが、国によるこれらの人々への経済的支援などを盛り込むことで、毛皮のないファッションが当たり前の未来が、着実に近づいているだろう。
※参考
Why one of the world’s top fur producers just banned fur farms|Vox
Fur ban in Poland paves the way for EU-wide ban|Brusseles Times