「中南米の2ヶ国がイスラエルに厳しい態度をとったのは大きい」その理由は?
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日~金曜日15時30分~17時)、6月5日の放送では「世界はイスラエルをどう見ているか」をテーマに、毎日新聞論説委員の小倉孝保が解説した。
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「イスラエルへの国際的な非難が止まりません。国際司法裁判所が5月24日にラファ攻撃の即時停止命令を出したあとも普通に空爆を行って。少なくとも子供含む45人が死亡したということで。しかしネタニヤフ首相は『目標が達成されるまで戦争を止めるつもりはない』と強気の姿勢を崩していません」
長野智子「誰かネタニヤフさんを止めてくれ、というお話です」
小倉孝保「恐らく世界中の人がそう思っているんですね。ここまで批判があって、イスラエルに攻撃をやめなさいと言っているのに、まったく聞く耳を持たないじゃないですか。外交的にイスラエルとそれを支援しているアメリカが孤立していて。これがイスラエルやアメリカの外交の足枷になってくるし、難しい局面が出てくると思います」
長野「たとえば『アップデート』でも取り上げましたが、スペイン、アイルランド、ノルウェーが、先月の末にパレスチナを国家として承認しますよ、と表明しました。しかしイスラエルが強く反発して、3ヶ国に駐在する大使の召還を命じると。一方、日本であまり報じられていませんが、中南米がイスラエルに強く反発している。ボリビア、コロンビアがイスラエルと断交。チリ、ホンジュラスなど数ヶ国も大使召還。これだけ孤立化が進んでいると」
小倉「あまり皆が指摘していないけど、中南米の2ヶ国がイスラエルに厳しい態度をとっているというのが、重要な意味を持っていると思うんですね。イスラエルが建国されたとき、すごく一生懸命、建国を指示したのが中南米の国が多かったんです」
長野「なるほど!」
小倉「調べたんですけど、国連の原加盟国は51ヶ国なんですね。そのうち20ヶ国が中南米・カリブ諸国なんですよ」
長野「多いですね」
小倉「かなり多いんです。アフリカや中東、アジアの国は独立していない国が多かったから、日本やドイツも入っていないわけです。中南米の国の意見が大きかった。イスラエルの建国決議というかパレスチナの地域をユダヤ人の国とアラブの国にしましょう、という決議が1947年にできるんです。このとき賛成したのが33ヶ国、うち中南米は13ヶ国なんです。ということは20ヶ国のうち13ヶ国はイスラエルの建国を支持しているんですよ」
長野「そうだったんですね」
小倉「それで実際、いまのイスラエルの国には中南米の外交官の名前のついた通りが2つぐらいあるんです。イスラエルのほうが非常に中南米に感謝しているんですね。その中南米からいま、強いイスラエル批判が起きているわけです」
長野「なるほど。今の話で思い出しましたけど、ネタニヤフ首相ってイスラエル建国のあとに生まれた初めての首相ですよね」
小倉「そうです。なんで中南米がそこまでイスラエルを支持していまイスラエルを攻撃しているか、ということですけど、あの辺ってスペインやポルトガルに植民地にされていたと。帝国主義の犠牲になっていた、という歴史がある。帝国主義、植民地主義に対する反発が高い。イスラエルの建国は当時の中南米の国からすれば、抑圧されてきたユダヤ人の解放だというイメージで捉えられていたんです。ユダヤ人を救おうという意識で彼らはイスラエルの建国を指示したけど、今度はイスラエルが帝国主義的なことをしているんじゃないか、と、彼らは気づいているんですね」