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上川隆也にインタビュー!主演舞台『魔界転生』にかける思い、そして今、役者として改めて思うこと

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上川隆也

舞台『魔界転生』が2021年4〜6月、愛知、福岡、東京、大阪で再演される。

原作は、1967年に「おぼろ忍法帖」として単行本化された、山田風太郎の伝奇小説。壮大なスケール、雄大な歴史ロマン、そして、奇抜かつ摩訶不思議な展開が人気を集め、時空を超え、肉体を超越したアクション・エンターテインメントの最高傑作といわれている。1981年に深作欣二監督により映画化され大ヒットし、その後、テレビ時代劇をはじめ、舞台、漫画・アニメ、ゲームまで、数多のジャンルでリメイクされている。

2018年10月~12月には、「日本テレビ開局65年記念舞台」として、堤幸彦演出で舞台が上演され、福岡・東京・大阪で77ステージ、動員10万人を超え、話題となった。そんな本作が2年4か月ぶりの再演。初演に引き続き、魔界から蘇った剣豪に果敢に立ち向かう主演の柳生十兵衛役を演じる上川隆也に、本作への意気込みやコロナ禍で感じていることなどを、2020年12月某日にリモートで行われた合同取材会で語ってもらった。

「柳生十兵衛を演じられた2018年は幸せな時間だった」

ーーまずは再演が決定した時のお気持ちを教えてください。

再演が決まったのは、実は今のような社会情勢になる前だったものですから、正直心躍るものを感じました。初演の舞台の上で感じた、あの血沸き肉踊るような時間は、他では得られない唯一無二の感覚でしたので、オファーは本当に嬉しいお話だったのですが、その後世の中の状況が大きく変わったこのコロナ禍の下、初演そのままの形での上演ができるのかという点に関しては、やはり難しいものを感じているのも確かです。

しかし、今は関係者のみなさんが2018年の初演とはまた趣を変えた、新たな『魔界転生2021』を生み出そうと知恵を凝らしていらっしゃると伺っておりますので、最初に再演のオファーをいただいたのとはまた違った期待感が、新たに生まれてきているところです。

ーー初演を振り返っていただいて、堤さんの演出についての印象を教えてください。

もともと堤さんが演出なさっている映像作品は、ソフトを購入するほど好きで、常々拝見しておりましたし、その演出手腕や堤さんが描く独特のカラーにも、とても惹かれていたのですが、その魅力は舞台演出においても変わらないものであったというのが、いま初演を振り返ってみての実感です。

上川隆也

ご自身が持ち込もうと試みる堤さんの世界観は決してゆるがないままに、役者たちのそれぞれの持ち味、色味などを決して損ねることなく、いい塩梅で1枚の絵に仕立てていくような、そんな遊び心も踏まえた上での演出は、初演にも色濃く表れていたと思います。今回も、現在の状況に即した演出に少しばかりスライドすることはあると思いますけれど、その上で堤さんが何をなさるのかが、今から楽しみな部分でもあります。

ーー現段階で、演出の堤さんから、何か新たに試みたいと言われていることがあれば教えてください。

現時点では何かを具体的にこう変更しますというところまでお話は伺っていませんが、より現状に対応した形を目指すという点は間違いないと思います。説明は難しいのですが、いま一つ確約できるのは、ご覧くださったお客様が「なるほど、そういう工夫が施されたんだ」と納得をもってご覧いただけるような、そんな舞台になっていく。その方向性で進められていることは確かであると申し上げられると思います。

ーー初演に引き続き演じられる柳生十兵衛というお役について伺います。どんなところに魅力に感じているのかなど、お役について教えてください。

初演の時も同じような言葉で表現させていただいたんですが、僕自身が柳生十兵衛という男のファンの一人なんです。山田風太郎さんの生み出した、とんでもなく魅力的な男。豪放磊落(ごうほうらいらく)で、明るく屈託がなくて、女性にはモテる。所がそのモテ具合を全く自覚していない様で、すべての機会を袖にしていく(笑)。

男が傍でみていて魅力の風に吹かれないはずがないような、そんな男である十兵衛を演じられた2018年は幸せな時間だったんだと今でも思いますけれど、十兵衛を改めて演じられること、また新たな舞台に臨めることをとても嬉しく思っています。

松平健と再び相対し、小池徹平とは初共演

ーー初演では松平健さんとの殺陣シーンが特に印象に残っています。どのような思いでシーンを重ねていかれたのですか。

お答えするのもお恥ずかしいのですが、這々の体で着いていっていたというのが正直な想いです。稽古中でもそうでしたけれど、本番に入って千秋楽にいたるまで、なんとか食い下がっていたと言う状態でした。松平さんと剣を合わせていくことの光栄さと同時にある怖さというのでしょうか。その圧倒的な存在感や、一合一合に乗せてくる思いともいうべき、重たい何かを受け止めながら演じさせていただいていました。

今振り返ってみても、それは充実していた時間でしたが、同時に僕自身のキャパシティをフルに稼働して凌いでいた時間でもありました。計ってみれば決して長い時間ではなかったと思うんです。でもその刹那を、僕の持てる精一杯で受け止めていたような、そんな想いでいます。

上川隆也

ーー松平さんの凄みというのはどういうところにあるのでしょう。

僕は、実際は武道のなんたるかも知らない、いち役者にすぎない存在なのですが、そんな僕でさえ相対したときに、いわゆる殺気が見えるような気がするんです。これは決してオーバーな形容ではないと思っているんですが、本当に圧倒的なオーラと圧をもって立ちはだかってくださったと思っています。

ーー今回は、天草四郎役を小池徹平さんが演じられます。初共演ということで、小池さんの印象を教えてください。

小池さんはもちろん映像作品も拝見していますが、舞台で歌ってらっしゃる姿を拝見して、その見事な居住まいに、少し意外さすら感じたんです。あれだけ眉目秀麗(びもくしゅうれい)な方ですし、可愛らしさすら覚えるような彼が、板の上で堂々と歌っている姿に思いを新たにいたしました。「この方ならば新たな天草四郎を創生してくださるだろう」という風に今は心強く思っています。

ーー上川さんからご覧になられた天草四郎の魅力についてもお聞かせください。

原作をお読みになっている方こそよくご存知で、お分かりだと思うんですが、まず深作さんのお作りになった『魔界転生』をもって天草四郎が新たに生まれ変わった感覚が僕にはあるんです。原作の中では、実は物語の半ばにして倒れてしまうキャラクターですし、そもそもが歴々の剣士たちを蘇らせる存在ですらない。

しかし、そんな天草四郎が深作監督の映画の中ではとても大きな役割を担うことになって、一気にその魅力が変化すると同時に増したんだと思うんです。そういう意味では根幹には山田さんの作品があるわけですけれども、深作さんが創り出した天草四郎の魅力を素地・下地にもした上で、それをさらに発展させたのが僕らの天草四郎だろうと思っています。

天草四郎の持っている妖艶な底知れなさという魅力は、時を経て少しずつ少しずつその嵩(かさ)を増してきたものだと思っています。だからこそ今回もまたキャストが変わることで、その魅力が溝端さん(※初演は溝端淳平が天草四郎を演じた)がなさったのとはまた違った魅力を持って、形作られていくのではないかと期待しているところです。

ーー演劇集団キャラメルボックス時代から上川さんのお芝居を拝見していますが、殺陣も含めて、上川さんは時代モノが本当にお似合いだなと思います。ご自身、時代劇を出演されるときに気を付けていることがあれば教えてください。

時代劇のお芝居に関して、現代劇と内面を大きく変えているかというと、実はそうでもありません。時を経ても、人の気持ちというのはそれほど変わるものではないという想いで演じています。ですから、時代劇だから現代劇だからと、分け隔てることなく演じてきているのは確かなのですが、一方で所作がもたらす説得力というものは、どうしようもなくあるとも思っています。

装いからして違いますから、刀や着物の捌きなど、所作の持つ説得力の小さな積み重ねをしていくことが大事なのは確かです。そこは極力踏み外すことのないように、役柄と所作が寄り添っていけるような融和を図りながら、それぞれの役を作り上げていっています。

上川隆也

コロナ禍で感じた「喪失感」。そして今、役者として改めて思うこと。

ーー上川さんは4月に出演される予定だった舞台『新 陽だまりの樹』が新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止になってしまいました。まだ先が見通せない状況ではありますが、改めて、コロナ禍で演劇を上演することや今のお気持ちをお聞かせください。

2020年4月の事でしたが、皆で稽古を重ねた作品が、不本意ながらお客様にご覧いただくことなく公演中止となった経験は、味わったことのないものでした。完成したものを収録していたお陰で、映像としてお届けする事は出来たとはいえ、その喪失感は、自分が想像したことのなかったものでしたし、これまでに無い感情に見舞われました。

これは僕だけの問題ではなく、多くの演劇人が味わった思いだとも言えます。だからこそ、この状況下で演劇を上演していこうという方々の情熱に心動かされますし、その一角に自分もまだいられていることを心底うれしく思います。一旦留まってしまった様な僕の演劇のキャリアが、この『魔界転生』から新たに始められることをとても嬉しく思っていることは間違いありません。なんとしても、どんな形であっても、前に進めていくんだという演劇に対する皆さんの思いの片隅に、僕自身これからも居続けたいと思っています。

ーー味わったことのない喪失感とお話をいただきましたが、やはり生で演じることの良さを感じられたということでしょうか。

僕は、あまり長いことこの国を離れて生活をしたことがないのですが、そうした海外生活の後、帰国したときに飲む味噌汁の味の格別さというのは、よく聞く話だと思うんです。懐かしくも、自分の立ち位置を感じさせてくれるものに触れた時に広がる安心感、今まで当たり前だと思っていたものが格別に感じられる瞬間というんでしょうか。僕にとって、演劇と味噌汁が同じとは言いませんが、それに近いものと例えても遜色ないんだろうと言う風に感じています。だからこそ、次の『魔界転生』という舞台に対する思いは、これまでとは少し違う様に思えます。

ーーキャラメルボックスご出身の上川さんは、舞台のキャリアも長く、作品数は多いですが、改めて舞台はどういうものだと感じられますか。

先の御質問の答えと重複してしまうかも知れませんが……僕にとって舞台というものが取り分け特別であるというわけでは実はないんです。映像で務めさせていただくお仕事や演技にしても、舞台で務めるものに関しても、特に重さや価値に差をもたせているわけではなく、ただ演じるフィールドが違って、その手法が違うというだけのことです。

上川隆也

馴染みのある、慣れ親しんだ食卓の並びに例えるのなら、ご飯と味噌汁があるとして、2020年4月に突然味噌汁がなくなってしまった、その喪失感と言い変えても良いかもしれません。当たり前の風景が、いきなりその絵面を失ってしまったと御理解下さい。お芝居はジャンルに拘わらず、どれも同じ位大事で、これまでもそしてこれからも、舞台だけに特に強い感慨や思い入れを持って務めているかというと、僕に関してはそういうものではないと思っています。

ーー改めて、再演に挑むことの「楽しさ」を教えてください。

さきほどから食べ物にばかり例えて申し訳ないんですけど(笑)、鍋物って具材が変わると、当然味は変わると思うんです。主立った食材が変わらなくても、その季節毎に加える具材に変化をつけていくと、同じ鍋を作るにしても全く違った味わいになっていくのは当然です。今回も鍋を作るんです。でも具材が変わっていますので、前回召し上がっていただいた鍋とはまた違う鍋を、お客様に振舞うことができるのではという期待感が、演者という振る舞う側としては、やはり楽しみになっていくのです。今は出演者の皆と一緒に、いい味付けにしていこうと思っているところです。

ーー前回の初演を超えようというようなプレッシャーは感じていらっしゃらないのですか。

超えるとかそういうことは正直僕は考えていません。ただ、今回もおいしい鍋にしようとは思っています(笑)。

ーーお忙しい日々を過ごされていると思うのですが、息抜きは何をされているのですか。最近はまっていることがあれば教えてください。

新たに何かにハマっているというのは、特にないです。ただうちには犬が1匹おりまして、その子が何よりの息抜きであり癒しです。ノワールというメスの雑種です。僕が独り勝手に癒されています(笑)。

ーー最後に、2020年はどんな一年で、2021年はどんな年にしたいか。教えてください!

(東日本大震災があった)2011年が僕にとって、当たり前の日常のありがたみを再認識する時間であったならば、2020年前半は『芝居のありがたさ』を改めて痛感させてもらった時間だったのではないでしょうか。

2020年は夏から秋にかけて4本映像作品に携わることができました。これまでも仕事に携われることはありがたいと思っていましたが、より一層、現場に立てることのありがたさを骨身をもって感じることができた時間でした。それによって、改めて芝居に対する感情が深く強くなったように思いますし、いつまでできるか分からない稼業ではありますが、出来る限り、これまで以上に思いをもって臨みたいというふうに感じた時間だったように思います。

しかしだからといって力んだり意気込んだりということも、また僕にとっての正しいお芝居への向き合い方ではないと思うので、思いだけは強く、姿勢はこれまで同様に、ひとつひとつのお仕事に真摯に携わらせていただきたいと思う限りです。

上川隆也

取材・文=五月女菜穂 撮影=福岡諒祠

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