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定年後の人生に不安を抱える50代女性が強みを生かして行動するために必要な3つのこと

新しい働き方メディア

近年、ビジネスの分野でも耳にするようになった「レジリエンス」という言葉は、しなやかに回復するという意味を持つ心理学用語です。不確実な時代と言われる時代に、どんな困難でもしなやかに乗り越えていくレジリエンスが注目されています。

「レジリエンスは身につけていくことができ、逆境やトラブル、強いストレスに直面した時にしなやかに、速やかに立ち直る力を身につければ物事を前向きに捉えることができるようになる」というのは、働く人のメンタルヘルスを専門とする心理学博士、臨床心理士の関屋裕希さん。

今回は、2月頭に東京都立大学オープンユニバーシティで開催された関屋さんの「レジリエンス入門講座」の内容も踏まえ、現在の仕事や転職活動、定年後の仕事に対して不安な思いを抱える50代女性が不安とうまく付き合うために活用できるレジリエンスをアップする3つのステップについて関屋さんに語っていただきました。

1 物事をネガティブに見る癖に気づき捉え方を変える

現在、仕事や転職活動がうまくいっていないという人に振り返ってみてほしいのが、「起きた出来事にどのような捉え方をしているか」ということです。自分に自信をなくしているのだとしたら、過去の経験やこれまでの価値観などから、ネガティブな捉え方をすることが癖になってしまっていることもあります。

例えば、下記のような場合、あなたにはどのような考えが浮かび、どんな気持ちになるでしょうか。そして、その先の行動はどうでしょう。

<取引先でのプレゼンの準備に力を入れて頑張っていました。当日は成功し、担当者も「一番良かった」と言ってくれました。しかし、後日、別の企業に決まったと伝えられました。>

人によっては「その気にさせるようなことを言っておいてバカにしてるんじゃないか」と怒るかもしれませんし、「やっぱり自分はプレゼンが下手なんだ。ダメだったのは自分のせいだ」と落ち込む人もいるでしょう。「大事な案件で失敗して、担当を外されてしまうんじゃないか」と不安になった人もいるかもしれませんね。

こんな時は、まず、「次に活かせるいいところはないだろうか」と振り返って考えてみてください。そして、別の企業に決まったことを「自分がダメだったのではなく、予算が折り合わなかったのかもしれない」というように、別の見方をしてみてほしいのです。さらに、自分が尊敬している人を思い浮かべて「尊敬しているあの人なら、この出来事をどう捉えるだろう。どんなふうに言うだろうか」と考えてみましょう。

「この失敗は、次に進むための良い経験。さらによくできるように改善点を見つけよう」
「初めてのプレゼンにしてはうまく説明できたのだから、これは、自分としては成功なのではないか」

尊敬している人が語りそうなことを思い浮かべると、幾分気持ちも晴れ、前向きな気持ちになれるのではないでしょうか。

2 問題に向き合うときは必ず気晴らしをセットにする

仕事に煮詰まっているとき、転職活動がうまくいかないとき、会社の人間関係でトラブルを抱えているとき……問題にばかり目を向けてしまうと、どんどん追い詰められてしまいます。問題に向き合っている時こそ、楽しさや達成感を感じられる行動を取り入れ、「気晴らし」をする方が、結果的に問題の解決がスムーズになることもあります。

まず、自分が楽しいと感じること、達成感を感じられることが何なのかを書き出してみてください。そして、それらを生み出す活動の種類を、「外でできる活動」「家でできる活動」「のんびりできる活動」「体を動かす活動」に分けて、ストレスを感じた時に活用できるようにしておくのがおすすめです。

楽しいことや達成感があることについて思い浮かばないという人は、小さい頃自分が好きだったことについて考えてみてください。

例えば、小さい頃泥遊びが好きだった人は陶芸をやるとハマる傾向があります。

また、小さい頃虫取りが好きだったという人の場合は、人によって虫取りの何が好きだったかについて考えてみてほしいのです。狩りをするのが好きな人もいれば、コレクションが好きな人もいて、標本にして見せることが好きな人もいて、そういう子どもの頃の楽しかったこと、達成感を思い出して、自分の楽しみをぜひ見つけてみてくださいね。

3 自分の強み(特性)を知り活用する練習をする

自分の強みを知る

自信をなくしているときは自分自身の強みを見失っているもかもしれません。
自分の強みを知り、活用していくことで、人生の困難を乗り越えていくことができます。

一般社団法人日本ポジティブ教育協会のサイトで、無料でVIA-ISという大人向けの「強み診断」を受ける方法が紹介されているので、よければ一度試してみてください。

■強みを知るツール(VIA-IS)

知恵勇気人間性正義節度超越性独創性 好奇心 判断力 向学心 見通し勇敢 勤勉性 誠実性 熱意愛する力・愛される力 親切心 社会的知能忠誠心 公平性 リーダーシップ寛容性 謙虚 思慮深さ 自己コントロール審美心 感謝 希望 ユーモア 精神性

「強み」というと、能力やスキルをイメージしがちです。50代だと、自分の能力やスキルが時代に追いついていないというようなことに注意が向いてしまいがちです。このようなときは、自分が本来持っている強みや良さを掘り起こしてみてください。

「強み」というのはその人が持つ特性のこと。本来はもっと幅広いものです。その人が自然に、何の苦労もせずに当たり前のようにできることであったりします。例えば、「思慮深さ」や「見通しが持てる」などは、長年大人をやってきた50代だからこそ持てる強みと言えるのではないでしょうか。

自分の強みを活用する

自分の強みを知ったら次にやってみてほしいのが、その強みをこれまでと違う形で活用してみることです。私がお勧めしているのは、曜日ごとに、どのように強みを活用するかを考え、書き記し、実行してみることです。

■強みを活用する
<好奇心>を活用する場合の例

曜日どのように強みを活用するか日曜日例)行ったことがないカフェに行ってみる月曜日例)いつも参加するだけだったミーティングに好奇心を活用して何か一つ質問してみる火曜日例)本屋さんによって、好奇心の赴くままに棚を回ってみる水曜日 木曜日 金曜日 土曜日

例えば、強みが「好奇心」という人は、月曜日はいつもと違う道を通って最寄り駅まで行くとか、本屋さんで好奇心の赴くままに棚を回って本を手に取ってみるというような感じでしょうか。自分がすでに持っている強みを発見して、これまでとは違う方法で幅広く使える練習をすることで、人生に広い視野と、新しい世界が広がります。

関屋裕希『感情の問題地図』(技術評論社)

後編では、落ち込みや不安を解消するためのステップについてお伝えします。

関屋裕希

東京大学大学院医学系研究科 デジタルメンタルヘルス講座 特任研究員

心理学博士 臨床心理士 公認心理師

専門は、働く人のメンタルヘルス。早稲田大学第一文学部心理学専修卒業後、筑波大学大学院人間総合科学研究科ヒューマン・ケア科学専攻発達臨床心理学分野にて修士・博士課程を修了。2012年より現所属にて産業精神保健の研究・実践活動を始める。不調の予防だけではなく、ポジティブなメンタルヘルス状態の実現を目指し、心理学の知見をもとに、ワーク・エンゲイジメントやwell-beingを高めるアプローチを開発・研究している。東京都立大学のオープンキャンパスで「レジリエンス入門講座」を開催。著書に『感情の問題地図』などがある。

取材・文/MARU

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