「好き」の伸ばし方、余暇活動、セルフアドボカシー…当事者の声と専門家の解説から学ぶ「日本LD学会」レポート【アーカイブ配信中】
【LD学会大会レポート】自宅でじっくり学べる!子どもの「好き」と「安心」を育むヒントとは?
2025年10月18日・19日と、2日間にわたって国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された日本LD学会の第34回大会。今回の記事では2025年11月下旬よりアーカイブ配信が予定されている3つのシンポジウムをピックアップしてご紹介いたします。
「好きをとことん」進むために 〜周りの大人が知っておくことよかけん ―発達に特性のある子ども・若者の余暇活動を研究する―見えない生きづらさへの理解と対応 ―可視化と自己理解・セルフアドボカシー
本記事では、これらの中から、 「よかけん ―発達に特性のある子ども・若者の余暇活動を研究する―」について、登壇された東京学芸大学・金子総合研究所の加藤浩平先生のコメントを、 そして「見えない生きづらさへの理解と対応 ―可視化と自己理解・セルフアドボカシー 」については、精神科医・吉川 徹先生のコメントをそれぞれ紹介します。
専門家の先生方からの貴重なメッセージは、きっと保護者の皆さんの参考になるはずです。アーカイブ配信の視聴前に、ぜひご一読ください。
※アーカイブ視聴の申し込み詳細は日本LD学会第34回大会Webサイトをご確認ください。
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本田秀夫先生×沖田×華さんが対談!一般公開講演会「好きをとことん」進むために 〜周りの大人が知っておくこと
本田秀夫先生(信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 教授)と、「透明なゆりかご」などの著作で知られる漫画家・沖田×華さんが登壇。前半では、本田先生による講演、後半は本田先生と沖田さんによる対談が、大会会長である阿部利彦先生のファシリテーションで行われました。
本田先生からは特性がある子どもたちへの療育のあり方や、本人らしさを抑えることなく力を発揮し、意欲的に社会参加するために鍵となるのは「純粋に好きなことに取り組める環境」であることや「趣味を共有できることができる居場所」があること、といったお話がありました。
対談では、沖田さんの幼少期の頃の様子や、さまざまなストレスも感じていたという看護師時代のこと、漫画家になってから経験した二次障害についてまで幅広いエピソードが語られました。その話を受けて、本田先生からは「絵を描くこと以上にエピソードを紡ぎ出す力があることや、それが今の漫画家という仕事や、講演での人を惹きつける話術にも生かされているのではないか」との言葉も。
後日沖田さんと本田先生への取材記事も公開予定です。
さまざまな示唆に富んだ一般公開講演会の内容は、アーカイブでも視聴ができます。
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・講演概要
「好きをとことん」進むために 〜周りの大人が知っておくこと
講師: 本田 秀夫1, 2, 3
対談者: 沖田 ×華4
(1. 信州大学医学部、2. 信州大学医学部附属病院、3. 長野県発達障がい情報・支援センター「といろ」、4. 漫画家)
本田秀夫先生を中心に立ち上げた「よかけん」。発達に特性のある子ども・若者の余暇活動の大切さとは?
大会企画シンポジウムのひとつ、「よかけん ―発達に特性のある子ども・若者の余暇活動を研究する―」では、「よかけん」を立ち上げた本田秀夫先生をはじめ、余暇活動支援を実践する東京学芸大学・金子総合研究所の加藤浩平先生、「仕事の流儀」「キラキラムチュー」などのドキュメンタリーを手がける平尾直志氏、相模女子大学教授の日戸由刈先生らによる発表やディスカッションが行われました。
「よかけん」では、子どもたちの“特別な興味”に寄り添った余暇活動をどう支え、どう広げていけるのか?を研究。学校や家庭以外の「居場所」として注目が集まる余暇活動について、実践・研究・映像メディア制作それぞれの立場からの発表はどれも示唆に富んでいました。
発達に特性がある子どもたちの育ちには、「好き」を共有できる人たちとの余暇活動の場が特に大切であること、しかし同時に、趣味や好きなことは、時に「目的」ではなく支援者の主導によって定型発達が中心の社会への適応や社会参加の「手段」に使われやすい側面もあることなど、支援者側が心に留めておくべきスタンスにも気づかされるシンポジウムです。
私は大学やオルタナティブスクール、放課後等デイサービスなどで「SUNDAY PROJECT(サンデープロジェクト)」という余暇活動支援を行っています。この活動では、「テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)」という卓上対話型ゲームを皆で楽しんでいて、年間の延べ参加者は100人以上。活動を10年以上続ける中で、ゲームをプレイする側だった子どもが青年期になってゲームの進行役を担うようになったり、30代になっても参加し続けてくれる方もいて、大切なサードプレイスになっていると感じています。
私たちが大切にしているのは、子どもたちの安心安全の保障と、特別な興味を生かした仲間作りです。「余暇活動こそ人生の主役」「遊びをせんとや生まれけむ」という思いで実践を続けています。
シンポジウムの様子は、アーカイブでも視聴ができます。
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・シンポジウム概要
よかけん ―発達に特性のある子ども・若者の余暇活動を研究する―
企画者・話題提供者: 加藤 浩平1, 2
企画者: 藤野 博1
司会者・話題提供者: 日戸 由刈3
話題提供者: 平尾 直志4
指定討論者: 本田 秀夫5, 6
(1. 東京学芸大学、2. 金子総合研究所、3. 相模女子大学、4. 株式会社プロカ、5. 信州大学、6. 長野県発達障がい情報・支援センター「といろ」)
当事者が実際に感じたセルフアドボカシーとは?「見えない生きづらさへの理解と対応 ―可視化と自己理解・セルフアドボカシー」
知的障害(知的発達症)を伴わない発達障害のある方の中には、青年期・成人期になって診断を受け、それまで「見えない生きづらさ」を抱えてきた方も少なくありません。その困難は、周囲の専門家や家族には容易に代弁できないものです。本シンポジウムでは、まさにそうした経験を持つ堀口里奈先生、綿貫愛子先生、ダックス先生の3名が登壇しました。
ご自身の「障害に気づいたきっかけ(自己理解)」や、「配慮や情報開示での工夫(セルフアドボカシー)」、そして「当事者や社会がどうなったらより生きやすいか」について、実体験に基づき語っていただきました。
外からは見えにくい「読み書きの困難さ」に対しての合理的配慮、支援の優先順位が低くなりがちな困難さの理解、文章以外の形で情報を伝える現在の取り組みなど司会者・企画者の佐々木 銀河先生(筑波大学)、指定討論者の吉川徹先生(愛知県西三河福祉相談センター)も交え、当事者の貴重な声から、見えない生きづらさへの理解を深める対話の機会となりました。
当事者の皆さんが、今までの体験や考えを直接ご自身の言葉で語ってくださり、非常に刺激的で示唆に富む内容でした。お一人おひとりの歩んでこられた背景や直面した困難、対処法は違いますが、その中に通底する課題や共通する思いなども垣間見えました。
改めて「見えない生きづらさ」について、多角的に考えるきっかけとして非常に有意義なシンポジウムになったと感じています。
シンポジウムの様子は、アーカイブでも視聴ができます。
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・シンポジウム概要
見えない生きづらさへの理解と対応 可視化と自己理解・セルフアドボカシー
司会者・企画者: 佐々木 銀河1
話題提供者: 堀口 里奈2、綿貫 愛子3、ダックス4
指定討論者: 吉川 徹5
(1. 筑波大学人間系、2. 筑波大学大学院、3. 東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科、4. 一般社団法人サクセサビリティ、5. 愛知県西三河福祉相談センター)
いずれの講演、シンポジウムも発達に特性のあるお子さんを支える保護者の皆さんに向けて、日々の関わり方や理解を深めるための重要な視点を提供してくれる内容となっています。
レポート第3弾はアーカイブ視聴もできる支援者向けのシンポジウムの見どころなどをまとめてお伝えいたします!
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。