ついに第2期がフィナーレを迎えたアニメ『薬屋のひとりごと』の猫猫役・悠木 碧さん、小蘭役・久野美咲さん、子翠/楼蘭役・瀬戸麻沙美さんにインタビュー!「壬氏目線の猫猫は、まつ毛が多くてキラキラしているんです!」
後宮を舞台に、ちょっと風変わりな薬師・猫猫が事件や謎を解き明かしていくアニメ『薬屋のひとりごと』。第2期がついに最終回を迎え、キャラクターたちの絆や成長、新たな関係性が心に残る展開となりました。
今回は猫猫役の悠木 碧さん、猫猫の友人で明るくお喋りな小蘭役の久野美咲さん、第2期から登場したキーパーソン、子翠/楼蘭役の瀬戸麻沙美さんの3人にインタビュー。後半にかけ、シリアスな展開が続いた第2期を走り切った今の心境から、繰り返し観てほしい注目シーンなど、3人の和気あいあいとしたトークをお届けします!
【写真】『薬屋のひとりごと』悠木 碧&久野美咲&瀬戸麻沙美インタビュー
最後は壬氏という“飼い主”のところに帰ってきて終わる安心感
――まずは、第2期の最終回を迎えた今の率直なお気持ちからお聞かせください。
悠木 碧(以下、悠木):皆さん、どうでした?
瀬戸麻沙美(以下、瀬戸):アフレコを終えた時は、正直すごく寂しかったですね。
悠木:分かるなぁ。寂しかったよね。
瀬戸:子翠、そして楼蘭としてやりきったところはもちろんありましたけど、『薬屋』の現場が終わっちゃうのがすごく寂しかったです。台本を読むのも、現場の空気感も楽しすぎたんですよね。
久野美咲(以下、久野):私もすごく寂しかったです。第1期のアフレコの時から数えると、何年も関わってきていたので、もう終わっちゃうんだな、寂しいなというのと、ここまで小蘭を演じられて良かったなという気持ちもあって。その両方が入り交じった感情でした。あおさん(悠木)は?
悠木:やりきった、走り切った感もありつつ、物語の結末の美しさに圧倒された感覚がありました。いろんなことに巻き込まれた猫猫だったけど、最後は“飼い主”の壬氏のところに帰ってきて終わる。そのいつもの景色に戻った時の安心感と、ここまでやれたか!みたいな。すごい話を演じさせてもらったな、あっぱれ!みたいな気持ちもありました。
――第2期は後半にかけてシリアスな展開が増えていきましたが、その中でも鍵を握っていたのが子翠こと楼蘭でした。
瀬戸:子翠と楼蘭は、ギャップのある役どころですけど、自分の中ではちゃんと地続きにできたかなと思っています。もちろん声のトーンや喋り方、テンションは違いますが、明るい気質を持つ子翠でもこういう言葉を話すよね、とか。子翠と楼蘭のギアがかみ合わない、ということもなかったです。同じ人物から言葉から出ている感覚でできたように思います。
最初に子翠というキャラクターを作る時、監督や音響監督から「もっとテンション高く、天真爛漫に」と言われたんですね。そこまで気持ちを上げるのがけっこう大変だったんですけど、楼蘭についてはあまり直しを指摘されることがなくて。
それを最後にお伺いしたら、「楼蘭ができるのはわかっていたから心配していなかったけど、子翠の時との落差を出すのがラストに向けてのポイントだったから、最初の子翠としてのテンションの高さにはだいぶこだわったんだよ」と伝えられて、私も「なるほど」と思ったのを覚えています。
悠木:原作を読んでいた時は子翠と楼蘭が同一人物っていうことにそこまでピンときていなかったんだけど、瀬戸ちゃんが配役された瞬間にちゃんと合致したんですよね。多分、瀬戸ちゃんが持っている魂の色が同じというか、瀬戸ちゃんを挟むことで子翠と楼蘭が合わさる面があるんだと思う。
それを言語化するのは難しいんだけど、「あ! わかる!」みたいな(笑)。すごく大人っぽいし、声質は楼蘭のイメージだけど、内面はちょっとスポーツ少女みたいな。
瀬戸:あおさん、私をスポーツ少女と例えてくれることが多いですよね。
悠木:どの賽の目が出るか、まったく想像ができない不思議な人というイメージが瀬戸ちゃんにはあるんだけど、それが子翠と楼蘭の間に合う! めっちゃぴったりだなと思ったんですよね。そう、これを見たかった!という感じ。
久野:私も瀬戸ちゃんにしか演じられないキャラクターだなと思っていました!
瀬戸:えー、嬉しい。ありがとうございます。でも、猫猫と小蘭も笑っちゃうくらいぴったりすぎでしょう!?
悠木:あはは(笑)。
瀬戸:『薬屋』のキャストは全員、演じているキャラクターがその人のメインウェポンだなと思うんですよね。みんな、ハマり役っていう感じがします。
悠木:すごく変な話だけど私、猫猫みたいな役っていっぱいやってるわけじゃないんですよね。
瀬戸:確かに。あおさんって七変化のイメージがありますよね。なんでもできるから、いろんな役をやっているけど、猫猫には“あおさんみ”がちゃんとある。
悠木:そう。多分、オーディションがあったら私のエントリーは楼蘭なんだよね。2役できるから。でも、猫猫に関しては自分でもめちゃくちゃしっくりきていて。キャラクターの見せたい部分と、私たちが持っている魂の色みたいなものが、キャスティングの時点でちゃんと見られていたのかなと思います。いろいろバレてる!みたいな気持ちになるんですよね(笑)。
それこそ小蘭もそうじゃない? 久野ちゃんのボイスの重なりって絶対他の人に出せないと思う。子どもっぽくもあるけど、癒やしもあって。根っこがしっかりしているようなところが、本当にぴったり。
久野:第1期の時は、明るくて噂好きで食べるのが好きっていう部分が前面に出ていたけど、第2期になってからは手習所での勉強とか、将来のことを考えて努力できるしっかりした部分が出てきて。
親に売られる形で後宮に来たという悲しい過去があるのに、明るく振る舞っていて。でも決して無理しているわけでもないんですよね。周りと自分を比べていじけたり、嫉妬したりするんじゃなくて、自分の境遇を受け入れたうえで、その中で生きていくにはどうしたらいいんだろう、という選択と行動ができる。演じれば演じるほど、どんどん好きになって応援したくなるキャラクターになっていきました。
小蘭にとっても猫猫は特別な友だちだったんじゃないかな
――猫猫、小蘭、子翠がそろうシーンも多くありました。第2期を振り返って、印象深かったシーンを挙げるとしたら、どの回でしょうか。
悠木:この3人がそろうとやっぱり氷菓(アイス)の回(第39話「氷菓」)になっちゃうよね。
瀬戸:小蘭をいじめるな!って(笑)。
悠木:がんばって生きてるんだから!っていう(笑)。
瀬戸:その後もかわいいんですよね。猫猫がアイスを作ったら、しょぼんとしていたはずの小蘭が「ちょっと味見してもいい?」と元気になる。
悠木:小蘭からの「ありがとう」を聞きたいがために、猫猫は頭を働かせているんですよ。あの一言で猫猫の正義感が救われる!
瀬戸:その後、ちゃっかり子翠もいるんだよね。
久野:そうなんだよね(笑)。
悠木:最後はちゃんと子翠(=楼蘭)が「おいしい」と言っているのもポイントだよね。
瀬戸:今思い返すと、そこまで築いてきた3人の関係性や友情があったからこそのエピソードだったなと。思い入れ深い回ですね。
悠木:台本をもらって小蘭がいると、今日は事件が起きないなと思うんですけど、だからこそこの回は「小蘭をいじめるな」となったんですよね。小蘭といると、猫猫も表情がちょっと豊かになるというか、ちょっとだけボス猫づらをしているような気がします(笑)。
――小蘭と話す時、猫猫がちょっとお姉さんの声になりますよね。
悠木:そうなんですよ。花街でお姉ちゃんたちに育てられてきて、いい姉貴をたくさん知っているからこそ、そこに憧れがあって。その役をやらせてくれるのが小蘭なんですよね。実際、120%の「ありがとう」で返してくれるから彼女にとって小蘭は良き友だちなんだろうなと。後宮から小蘭がいなくなっちゃうのは本当に寂しい。小蘭にはいっぱい友だちがいるけど、猫猫は友だちがめっちゃ少ないから(笑)。
久野:小蘭は友だちがいっぱいいるタイプだと思いますけど、その中でも猫猫は特別な友だちだったんじゃないかな。
悠木:良かった!
久野:子翠とは下女仲間ですけど、猫猫とは立場が違うじゃないですか。誰とでも分け隔てなく接する小蘭とはいえ、後宮内だと立場が違うだけでお話ができなかったりします。でも、猫猫はそれを気にせずにお話してくれて。小蘭にとっても、猫猫はやっぱり特別な存在だったのかなと思います。
でも、子翠に対しては、小蘭がちょっとお姉さんになるんですよね。湯殿で「ダメだよ、湯船に入る前にちゃんと洗わないと」と言ってあげたりして。子翠の登場によって、小蘭の新しい一面が見られて、それは演じていてもすごく新鮮でした。
瀬戸:子翠にとっては、小蘭も甘えられる存在だったのかな。子翠って、本当は後宮に存在していない子だし、2人といる時間だけが子翠でいられた。それを思うと、あの笑顔とか好きなことを好きなだけ喋る姿とか……子翠にとって幸せな時間だったのかなと思います。
悠木:楼蘭って、すごく特殊な生き方をしているから意外と生活力がないところがありますよね。生活力トップは、小蘭のような気がする。猫猫も生活力は高いけど、ちょっと変わっているというか、いろいろ偏っているから(笑)。
久野:振り返ると3人のバランスが絶妙ですよね。助け合っているようなところもあって。
悠木:お互いに補い合うというか。重なった時に、きれいなグラフになるような関係性だったよね。
もう一度観るなら子翠の動きはもちろん、OP/EDにも注目してほしい
――伏線が多くちりばめられている本作。発売中の第1巻、第2巻をはじめ、BD続巻情報も続々と更新中です。もう一度観るなら、ここに注目して観てほしいというシーンやキャラクターを教えてください。
悠木:第1期からずっとほのめかされてきた謎が1個ずつ解き明かされていて、全部がつながっているから、絞るのが難しい……!
瀬戸:分かりやすいところだと、子翠の動きかな。どうしてここにいるの?とか、表情とか。
久野:子翠のセリフの言い回しとか、どっちにも取れるようなところがあるんですよね。含みのあるセリフも意外とちりばめられていて。ちょっとした表情とかも「そうだったんだ」とつながるところがいっぱいあるので、最後の楼蘭のことを知ったうえで、もう1回最初から観返すと、別の楽しみ方もできるのではないでしょうか。
瀬戸:私自身もできる限り細かくこだわりましたけど、表情に関してはアニメならではの映像のお芝居もあるので、そこを見逃さずにじっくり観てもらいたいですね。
悠木:あと、オープニングとエンディングにも注目してほしいです。
久野:じっくり観てほしいですよね。
悠木:第1期から順番に観てもらうと、おそらく意味がありすぎることに気付くと思います。
瀬戸:あと、やっぱり壬氏と猫猫の……。
悠木:カエル?
瀬戸:そう! あのカエルのシーンがBDになるってことですよ! 私、壬氏と猫猫がすごく好きなんですけど、あのシーンは本当にヤバい(笑)。
久野:瀬戸ちゃん、壬氏と猫猫のコンビが大好きなんだよね。
瀬戸:私事なんですけど、あのカエルの回(第36話「華瑞月」)はアフレコ現場にいなかったので、オンエアをめちゃくちゃ楽しみに待っていたんです。みんなももう1回観返して、ドキドキしたらいいんじゃないかなと思います!
――猫猫的にもやっぱり見どころでしょうか。
悠木:もちろんです。きれいな壬氏様は全部観ていただきたいです!
久野:月精の壬氏様も美しかったよね。
悠木:そうそう。あの壬氏様もすごくきれいだったなぁ。あと、壬氏から見た猫猫ってちょっとかわいく描かれているんですよ。君には猫猫がこう見えているんですか?というのがね(笑)。
瀬戸:第2期のオープニングとか、誰がどう見ているのか、というのがすごくおもしろいよね。
悠木:アニメ本編にも壬氏視点の猫猫がいくつか出てくるんですけど、壬氏目線だと猫猫のまつ毛の本数が多かったりして、心なしかキラキラしているんですよね。描かれているのは猫猫だけど、そこから壬氏様の想いも伝わってくるというか。そういう細かいところにも注目しつつ、何度も観ていただけたら嬉しいです。
取材・文/吉田光枝