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0歳から他害、激しい癇癪…なのに療育へ通えない!?母がおうち療育を始めた結果【専門家アドバイスも】

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0歳から他害、激しい癇癪…なのに療育へ通えない!?母がおうち療育を始めた結果【専門家アドバイスも】

監修:森 しほ

ゆうメンタル・スキンクリニック理事

発達凸凹三きょうだい。スパ山家最強の末っ子です

3人全員が発達凸凹があるわが家の子どもたち。小6の長女「姉子」は自閉スペクトラム症、知的ボーダー、場面緘黙、小3の長男「ハジュ」は自閉スペクトラム症、ADHD、そして、現在小1の次女「ニノ」は、発達障害グレーゾーンです。
次女のニノは、生まれた時からとても賑やかな(賑やかすぎる?)環境に身を置かれたためか、上のきょうだい2人が泣こうが騒ごうが、どこ吹く風で、とてもマイペースな子に育ちました。

そんな中で刺激を受け続けたからなのか、はたまた私が上の2人に手を取られてしまうので放っておかれるものかと思ったのか、生後10ヶ月で歩き始め、同時におしゃべりもみるみるうちに達者になり、ニノの成長をゆっくり楽しむ余裕がなかったように感じます。

ただ、少しでも思い通りにいかないことがあると耳をつんざくような奇声を発し、相手に飛びかかって叩いたり噛みついたりする、自己主張の方法が上の2人とはまったく違うタイプの0歳児でした。
私も3人目の育児となり、経験値もたまってずいぶん鍛えられていたはずですが、まるでラスボス……! 他者に手をあげるという、私にとって初めて経験する癇癪スタイルに正直驚いてしまい、どうしたらいいのか分からず、ただただ周囲に謝る毎日でした。

ニノが2歳になる頃、すでに上のきょうだい2人が療育に通っていたので、それとなく療育の先生にニノの激しい癇癪や他害について相談してみました。
そして、たまたまグループ療育に空きがあったので月に2~3回通ってみることになりました。ニノがなぜ激しい行動をとるのか知りたかったので、ヒントがあるかも? と期待したのと、上の子たちのような発達凸凹がもしあるのなら、早く見つけたいという気持ちも大きかったのだと思います。

行き始めの頃は「楽しく通えたらいいなぁ」と楽観的に考えていたのですが、マイペースを貫くニノは、ダンスもボール遊びも気分が乗っていなければ断固拒否。私が準備体操のダンスを踊って誘ってみせると、顔を真っ赤にして大激怒! 私を部屋のすみへと追いやり、両足に力一杯抱きついてきて動けないようにしてきます。声をかけてくれた先生にはキー! と超音波のような大声を発する始末……。

グループ療育の回数を重ねてもあまり変化は見られず、「取りつく島がないとはこのことだなぁ」と思いました。

先生は、「グループ療育に通ったからといって、すぐに変化を感じられるわけではないし、ニノちゃんのペースに合わせましょう」と言ってくださいましたが、このままでは幼稚園や小学校の集団生活に馴染めないのではないかと不安になりました。

機嫌が良い時のニノは、とても愛嬌があって、よく笑い、よくしゃべり、家族をキュンキュンさせるほど可愛くて、癇癪を起こしている時とはまるで別人。まさにわが家のアイドル! という感じなので、この魅力をもっと伸ばしたいし、機嫌の良い時間を増やしたいと思いました。

当時の療育を担当してくれていた先生から「ニノちゃんは発達グレーゾーンだね」と言われていました。発達検査などは受けておらず、診断もついていないのですが、福祉課の職員さんがグループ療育を見学に来て、その際のニノの様子から毎日通ってサポートを受けたほうが良いと判断されたので、先生方とも相談して、グループ療育を卒業して2歳で療育園に入園することになりました。
療育園に入園してすぐの頃は園舎に入ることすらできず、暴れて帰ることもあったのですが、だんだん慣れてきて、教室で遊んだり、クラスメイトとも交流するようになってきました。療育園でいろいろな経験をして、お友達を叩いたり大声で威嚇するような癇癪が少しずつ減ってきたように見えました。

転勤先で新しい療育にも繋がれず……。「おうち療育」を試行錯誤でスタート

わが家は転勤族で、転勤時期も決まっていないので突然引っ越しが始まります。
せっかく慣れてきた療育園も退園することになってしまいました。引っ越し先の療育園には転園できず、さらにコロナ禍で新規の受付を止めていたり、予約でいっぱいだったり……と、ニノはどこにも通えない状態になりました。

上のきょうだいたちと同じ病院を受診しようかと悩んでいた時に、SNSで「おうち療育」というものに取り組んでいるご家庭があることを知りました。調べてみると、ニノにも、わが家の生活にも合っているんじゃないかなと思い、見よう見まねでプリントや、カードをつくったり、療育園で経験したことを思い出したりして、いろいろ試してみました(発達ナビのコラムもめちゃくちゃ読みました(笑))。

そしてニノは年少で幼稚園に入園しましたが、コロナ禍で入園式もなく、通えるようになったのは2ヶ月後。
癇癪や、他害は減ってはいたものの、お友達とトラブルになることはたびたびありました。私は、「なんでそんなことするの!」「いいかげんにして!」と言いそうな気持ちをグっと飲み込み(時々爆発しそうになりましたが)、冷静に話すことに集中しました。

おしゃべり上手で、自分の気持ちを言語化するのが得意なニノに、この対応は合っていたのでしょう。「なぜ怒ってしまうのか」、「どうしたらよかったか」、ということをその都度、親子で話し合うことができました。

小学1年生になった現在は……

幼稚園の途中でまた転勤があり引っ越しましたが、おうち療育は続けました。

そして、現在ニノは小1になり、地域の小学校の通常学級に通っています。
小学校で初めての授業参観に行ってびっくり! なんと、お友達と仲良く発表していたのです。担任の先生から、学習リーダーに任命されたと聞いてさらにびっくり。持ち前のアイドルみたいな愛嬌と得意のおしゃべりをぐんっと伸ばして毎日楽しそうに学校に通っています。

でも、楽しい学校生活の中で時々失敗して、先方に謝りに行くこともあります。そんな時はやっぱりニノと話し合いをして一緒に考えています。この「話し合いスタイル」が私たちにとってしっくりきているので、ニノが自分の気持ちを素直に伝えられる環境を維持することをこれからも心がけたいと思っています。

執筆/スパ山

(監修:森先生より)
癇癪や他害は、子育て中の保護者の方としてはとても悩ましい問題の一つです。
自己主張の仕方がまだうまく身についていなかったり、環境の変化などでストレスがかかってしまうと、癇癪でしか自分の気持ちを表現できないということもあります。
ただ厳しく叱責したとしても、本人がストレスをうまく処理できなかったり、バレないようにしようといった方向に順応してしまうこともあるので難しい部分がありますね。

すぐに解決することはなかなか難しいかもしれませんが、スパ山さんのように、根気強く話し合いを続けていくことが大切です。
トラブルが起きてしまったときは、「人を傷つけてはいけないよ」「間違えてしまったら、こうやって謝るんだよ」という姿勢を、保護者がしっかりとお子さんに見せていく必要があります。

癇癪や他害に悩まれている方は、ただ「やめなさい!」と言うのではなく、「どんなときに癇癪を起こしてしまうのか」「癇癪を起こすのではなく、どんなふうに気持ちを伝えたらよかったのか」、根気強くお子さんと話し合ってみてくださいね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

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