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知的障害息子の就学先で悩む心に主治医の言葉が刺さり…就学時健診で迷いが「納得」に変わった瞬間

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知的障害息子の就学先で悩む心に主治医の言葉が刺さり…就学時健診で迷いが「納得」に変わった瞬間

監修:室伏佑香

東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程

就学に向けて準備を進めていた矢先に……

3歳の頃受けた知能検査にて軽度知的障害(知的発達症)と診断されていたとつおでしたが、ゆっくりながらも着実に成長が見られ、年長になってすぐに就学に向けて親子でいろいろと準備を進めていました。

姉2人も通う小学校の特別支援学級で4月頃に授業見学をさせていただいた際には、落ち着いて席に座り、僕もできます!とでも言うように紙に鉛筆で何か文字のようなものを書いていた、とつお。学級のお兄さんお姉さんたちもすごく優しく迎え入れてくれ、先生たちからも「大丈夫そうですね!」と言っていただいていました。ここに通うことになるだろう、そう思ってワクワクしながら日々の療育や保育園生活を過ごしていました。

しかし、6月に発熱とけいれんで倒れ脳症との診断になり、入院とリハビリのおかげである程度回復しましたが、知能検査では軽度だった知的障害(知的発達症)が中度に。医師からは特別支援学校の入学をすすめられました。

主治医が言った忘れられない言葉

倒れる前の5月頃、特別支援学校の見学会には参加済みでした。
実際に生徒さんたちの様子を見てすごく楽しそうな雰囲気!とは感じたものの、未知の世界であることに変わりはなく、長時間のバス通学必須である特別支援学校には大きな不安を感じていた私。そのことを素直に主治医に相談しました。
すると、息子の性格上、学習を主軸に置く特別支援学級は登校がしんどくなってしまう懸念、熱性けいれんの既往がある息子にとって看護師が常在していることの重要性などの指摘をいただき、そのどれも納得がいきました。

「特別支援学級から特別支援学校へ転校すること、その逆もできるが、どちらにせよ手続きが簡単なわけではありません。親御さんの中には、頑張らないと特別支援学級や特別支援学校に行かなくちゃならなくなるよ、あるいは頑張れば通常学級に行けるよなどと声掛けし、無意識のうちに子どもに劣等感や先入観を植えつけてしまうことが多分にあります。大切なのは今、目の前の子どもにとってどんな選択をすれば社会の中で人と関わりを持って生きていけるかです」という言葉には最も胸を突かれる思いがしました。

そして迎えた、地元小学校の就学時健康診断

10月、地元小学校の就学時健康診断の日を迎えました。主治医の助言に加え、教育委員会からの最後のひと押しをいただき迷いなく選択ができればとの思いでした。事前に教育委員会には連絡を取り、息子が一人では診断を受けられない可能性が大きいため付き添いをお願いしていました。

当日、保護者との分離で不安そうにしている子、全く気にしない様子で勝気な子などさまざまいましたが、ただ1人息子だけが私にしがみついて分離ができませんでした。子どもたちと列に並び、通常であれば保護者が見ることのできない検査風景を目の当たりにした時、私は息子には特別支援学校が適しているとしっかりと腹落ちできました。

教師や医師の指示通りに健診を行う子どもたちを尻目に、息子はずっと不安そうでなかなか動けない様子でした。しかし知能検査では、机に座り、鉛筆で答案用紙にぐるぐると一生懸命何かを書いていた息子がいました。私にとってそれは、息子なりの精一杯の頑張りを感じ取れたうれしい瞬間でした。

特別支援学校への入学を決定

健診の結果、教育委員会からおすすめいただいたのもやはり特別支援学校でした。私としては自分自身の目で見た息子の様子も踏まえて、納得して選択できたのが良かったなと思っています。

とはいえ、実際入学するまでは一般的な小学校とは勝手が違うため戸惑いは続きました。わが家の場合、就学という意味では通常学級ではありますが上2人の小学校生活で経験済みのことですが、第1子のお子さんの保護者であればなおのこと分からないことも多く不安だと思います。

遠慮せずに、家族間はもちろん教育委員会や主治医、保育園や幼稚園、発達支援施設などにどんなことでも相談して実際に行動し、焦りや不安を1つずつ解消していくことが、この揺れる時期を乗り越えるコツだと思います。

現在、特別支援学校に入学して1学期を終えた息子は、担任の先生やクラスメイトたちと彼なりの信頼関係を構築しながら楽しく過ごしています。来年小学校入学を控えたお子さんとそのご家族が、少しでも明るく前向きに就学準備ができますように願っています!

執筆/マミー・マウス子ビッツ

(監修:室伏先生より)
就学先を決定されるまでの経緯について、その時のお気持ちも交えながら詳細に共有いただきありがとうございます。脳症の診断と、それに伴うとつお君の変化に直面された際のご不安や戸惑いは、とても大きかったことと思います。そのような中での就学先の選択は、本当に大変なものだったとお察しします。
おっしゃられているように、就学先を選ぶ際には実際に学校を見学し、教育委員会、園の先生方、医療機関や療育先のスタッフなど、多方面の意見を聞きながら進めていくことが大切です。
特別支援学校は、「学習」だけでなく、「生活」「健康」「社会性」といった幅広い面からお子さんを支えてくれる場です。メリットとしては、先生の配置人数が多く、一人ひとりの強みや困りごとに合わせてじっくりと関わってもらえることが挙げられます。また、基礎的な学習に加えて、日常生活に必要な動作や社会でのふるまいを重視したカリキュラムが多く、将来の自立に直結する力を身につけやすい環境でもあります。さらに、看護師や理学療法士、作業療法士といった医療・福祉の専門職が配置されている場合もあり、緊急対応が必要な疾患をお持ちの場合にも安心できる点は大きな強みです。
今後も、とつお君が、安心できる環境の中で自分らしく成長していけることを、心から願っています。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

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