シム・リウ、日本のファンに伝えたいこと ─ アベンジャーズ、デジモン、日本旅行を語る単独インタビュー『ラスト・ブレス』公開記念
(MCU)『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で初のアジア系単独ヒーローを演じ、一躍世界的ブレイクを果たした中国出身のシム・リウ。2025年9月26日より日本公開を迎える出演最新作『ラスト・ブレス』では、“地球上で最も危険を伴う職業”と呼ばれる飽和潜水士の実話を基に、人当たりはぶっきらぼうだがプロ意識が強い中堅潜水士を演じている。
リウは本作で、ウディ・ハレルソンと肩を並べて共演できるほどの売れっ子俳優に。ブレイクするまではストック写真のモデルをしていたり、ミュージックビデオでエキストラをやったり、ハリウッド大通り現地で有名なぼったくりコスプレイヤーに20ドル騙し取られたりと、リアルな下積み時代のエピソードも多く持つ等身大の男だ。
THE RIVERでは、シム・リウ本人とZoomを繋ぎ、本作『ラスト・ブレス』の裏話やマーベル作品での最新の状況、さらに日本愛やキャリアについて深掘りインタビューを行った。
(C)LB 2023 Limited『ラスト・ブレス』シム・リウ 単独インタビュー
──シム・リウ、今はとっても忙しいと思いますが、こうして日本のファンのために時間を割いてくれてありがとうございます。
もちろんです!喜んで。日本のファンの皆さんに、この『ラスト・ブレス』を観てもらえることをすごく楽しみにしていたんです。
──ところで、日本に来たことはありますか?
ありますよ!でも、すごく弾丸旅行だった。フィアンセと一緒に、東京に4〜5日だけ。それ以来、フィアンセとはずっと日本の話をしています。彼女、東京と京都がすごく気に入ったみたいで。だから、早くまた行きたくてウズウズしてるんです。
──日本で何か面白いものは見つけましたか?
たくさん見つけましたよ!こっち北米では、日本に行ったことがある人に「どうだった?」って尋ねたら、日本旅行についても日本の食事についても、誰も一つも悪いことを言わないんですよ。本当に、何から何まで、日本って国ごと、文化ごと愛されているんです、こっちでは。
僕の場合、すぐに思い出されるのは、ご飯が美味しすぎて衝撃だった。もともと日本食は大好きだし、ここロサンゼルスにも日本食はたくさんある。寿司からカツ丼、ラーメン、焼肉まで、こっちにも全部ある。でも、日本で食べたものは別モノだった。もう異次元。
特に、日本の知り合いから「ピザは絶対食べた方がいい」って勧められたんです。どういうことだと思いました。ピザ?日本食じゃないよね?って。そしたら、「いやいや、日本のピザは素晴らしいんだ、『聖林館』っていう店に行ってみて」と。だから聖林館に行って、長い間待って、ようやくテーブルに通されて食べてみたら……それはもう、人生で食べたピザの中でも最高に美味い一枚だったんです。
──さて、『ラスト・ブレス』はとてもスリリングで楽しめました。観ている間、息が詰まりそうな心地。とてもパワフルで刺激的で、これが実話だとは信じられません。僕もかつてスキューバダイビングをよくやっていて、水中の訓練でちょっとパニックになったことをはっきり覚えています。だからあなたの訓練もすごくハードだったと思う。しかも、今作で挑んだのは飽和潜水というもので、スキューバダイビングとはまた違ったものだそうですね。どんな違いがありますか?恐ろしかった瞬間はありましたか?
その通りです。飽和潜水と、いわゆる普通のスキューバダイビングは全然別モノなんです。スキューバは娯楽やバケーションのために行うもの。酸素タンクを背負って、レギュレーションをつけて潜りますよね?水中にいる時間は数分で、そして上がってくる。
飽和潜水の場合は、より深くに潜って作業をするので、もっと暗闇に包まれます。本作は水深100メートルまで潜りましたが、実際には水深200メートルや300メートルまで潜ります。海底では、何もかも勝手が違います。ウェットスーツとフィンではなく、海底を歩けるように重いブーツを履くんです。スキューバのように酸素ボンベも2本背負うんですが、深さによる水圧のため、多量のガスがかなりコンパクトに圧縮される。だから、その酸素は3〜5分間の量しかない。それ以外は、アンビリカルケーブルと呼ばれるものを通じて海上から供給されるんです。
なので、この映画の撮影準備を始めた時、そういう器材が多かったから、訓練も多くやる必要があった。まずは普通のスキューバダイビングを始めて、レギュレーターの使い方や、フィンでのキックを覚える。それを数週間やったら、今度は今まで覚えたことを一旦全部忘れて、ヘルメットなどの新しい機器を使って完全に新しいことを学び始めるんです。なので、それなりに大変でしたね。そういう機器を使うときは、必ず不具合や故障の可能性はつきまとう。そんな時は「ドント・パニック」です。何が起こっても、焦らずに、とにかく息を続ければ大丈夫です。
(C)LB 2023 Limited
──まるで宇宙に挑むようです。
うん、そうですね。実際の飽和潜水士の皆さんとお話しさせていただいたのですが、確かに宇宙飛行士と同じような感覚をお持ちでした。
<!--nextpage--><!--pagetitle: 小島秀夫、デジモン、ポケモン、アベンジャーズを語る -->
──ところで、Xでゲームクリエイターの小島秀夫さんが『ラスト・ブレス』を大絶賛していて、喜んでいましたね。彼のファンなのですか?
彼の大ファンなんです。僕はゲームが大好き。ゲームが好きで、『メタルギアソリッド』や『DEATH STRANDING』をプレイしたことがあるのなら、“小島さま”がどれだけビジョナリーであるか、わかりますよね。それに彼は映画通としてネットでも有名。映画を鑑賞して、その感想をツイートされているんです。
僕はずっと、ヒデオ・コジマにも観てもらえる映画に出られたら最高だと思っていたんです。だから今回、彼が僕を名指しで称賛してくださったツイートを見た時、頭が真っ白になったんです。どれだけ嬉しかったことか……、言葉で表すことすらできません。彼に認めていただいたこと、そして僕の映画を観てくださったこと、ただただ深く光栄に思います。
──ゲームといえば、あなたは以前デジモンが大好きと言っていて、『デジモンアドベンチャー』のアグモンがウォーグレイモンにワープ進化するシーンでめちゃくちゃ興奮したとも言っていましたね。
わぁ、そんなことまで知ってくれているなんて!僕はいろんなアニメが大好きなんですが、特にポケモンとデジモンは当時 テレビで観ていて、夢中になっていました。動物の相棒、動物の親友ができるっていうのが堪らない。小さい頃、うちの両親は犬を飼わせてくれなかったから、ポケモンやデジモンを観ることで、ちょっと願いが叶うような気持ちだったんです。大人になった今は、もう14年も犬と一緒にいるんですけどね。
それから、 ポケモンカードとデジモンカードも大好きでした。子どもの頃は、かなり集めていましたよ。だから、ポケモンもデジモンも本当に大好きなんです。『ドラゴンボールZ』も、『BLEACH』も大好き。それから、僕はバレーボールもやるから、『ハイキュー!!』も大好きです。最高ですね。日本のアニメはすごいです。他にないストーリーが観られるんです。
(C)LB 2023 Limited
──僕もあなたと同世代なので、よくわかります。ところで、現在はシャン・チー役として『/ドゥームズデイ』の撮影中ですよね。詳しいことは何も語れないとは承知していますが、撮影はいかがですか?
そうなんですよ!話せることはあまりないのですが、毎日が夢のようです。仕事場に行って、尊敬する憧れの人たちと一緒に仕事ができる。そのうちの何人かは、僕が小さい頃、まだ役者になりたいと思う前から観てきたような俳優です。
そんな人たちとご一緒して、学ばせてもらえているなんて、本当に信じられません。彼らの話を聞いたり、逆に僕から何かを提案したり、一緒のシーンをやれるだなんて、とんでもない思いです。
感情としては、とてもいい気持ちやワクワク感もあれば、恐怖や不安も入り混じっています。人間ですからね。すごい人たちと一緒だから、不安な思いをすることもある。でも、みなさん本当に素敵で、毎日“仕事”という感じがあまりしないんです。
──その共演者たちの中で、特に刺激を受けている人は誰ですか?
簡単な答えにするのならロバート・ダウニー・Jr.さんですね。本当に刺激を受けます。彼はマーベルの成功にとって欠かせない存在であり、何年もの間、何本もの作品に出演されています。そんな存在であるにもかかわらず、いまだにたくさんの人と会って、仲を深めるために時間を使っていらっしゃるんです。彼は本当に親切で、分け隔てなく接してくれて、刺激的な方です。
彼がこれだけ多様な役をやってきたからこそ、『ドゥームズデイ』でこの新キャラクター(=ドクター・ドゥーム)に取り組む姿には、みなさんきっと圧倒されると思いますよ。
──めちゃくちゃ楽しみです!それから、『シャン・チー』の続編って今どうなったんですか?なんでも、『アベンジャーズ/シークレット・ウォーズ』でMCUのタイムラインがリセットされると聞いていますが、その前後で『シャン・チー2』はありそうですか?
それはですね、僕より上の階級の話になってしまうんです。映画の編成は僕の仕事じゃないからですね。
僕はこのキャラクターのことが大好きです。深く想っています。この映画は公開当時、世界に深くて重大な影響をもたらしました。当時はパンデミックの最中でしたが、世界中の映画ファンに愛されました。あの映画を楽しんでもらえて、もっと観たい、続編が欲しいと言ってもらえると、僕はいつもありがたい気持ちになります。そのことは重々承知しています。現在は、目前にある映画、たくさんの人が登場する巨大な映画(=『ドゥームズデイ』)に徹底的に集中しているのだと思います。
けれど自然と、このキャラクターには主役になる物語がさらに与えられるはず。それが待ちきれませんし、実現するはずです。だから、皆さんの忍耐に感謝したいです。
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──キャリアについて聞かせてください。あなたはかつて会計士としての職を失った後、俳優になることを決意したそうです。俳優って不安定で難しい職業だと思いますが、なぜ決心したんですか?
素晴らしい質問です。僕は人生を通じて情熱を追い求めているんです。確かに、俳優としてのキャリアを追うだなんて、全然論理的じゃないと思います。でも、僕みたいなタイプの人間は、本気になれるもの、本物の情熱を捧げられるものでないと成功はあり得ないと考えるんです。
大学で講義を受けている時、いや、高校で授業を受けている頃から、「僕はここにいるべきじゃない、いる必要がない」と感じていました。別に、馬鹿だったわけではないんです。僕は平凡な学生でした。もしかしたら学力が足りなかったのかもしれないし、他の子の方が賢いということもあったと思います。
そんな時に、すごく情熱を捧げられて、かつ、得意なものを見つけちゃったんです。それで、数年かけてやっとわかったんです。僕は馬鹿だったわけじゃなくて、自分を見つけようとしていたんだ、やるべきことを探していたんだ、ということに。
最初に「俳優になろう」と決意した時は、今の状況を想像することもできませんでした。何年も何年も拒絶され、苦しい下積み時代が待っているだろうと思っていた。でも、覚悟はできていました。だって、やれるだけで幸せだし、やりたいことだし。僕にとって、それだけで十分でした。
確かに、不安定な仕事かもしれない。何年も何年も、すごく薄給かもしれないし、一文無しかもしれない。でも、「頑張るんだ」って自分に誓ったんです。だから、がむしゃらに頑張ったんです。本当に大好きだからこそ、あんなに頑張ることができたんです。
このインタビューを読んでくれている人に、伝えたいことがあります。時には、自分の心の声に従ってみて。そこで一生懸命、必死に頑張る覚悟があるのなら、きっと君はなんだって成し遂げられると思います。
(C)LB 2023 Limited
──とても素敵な話をありがとうございます。最後に、日本のファンにメッセージをいただけますか?ここ日本には、あなたが想像するよりも10倍は情熱的なファンがたくさんいるんですよ。
わぁ、そうですね。(日本語で)“ありがとうございます”。僕のキャリアを応援してくれて、映画を観てくれて、本当にありがとう。日本が大好きです。また訪れるのが待ちきれません。僕たちが作った映画『ラスト・ブレス』をぜひお楽しみくださいね。
シム・リウ出演のサバイバル・スリラー『ラスト・ブレス』は2025年9月26日より日本公開。