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 戦中世代の証言、鮮やか ドキュメンタリー映画「アリラン ラプソディ」、首都圏各地で上映進む〈川崎市高津区〉

タウンニュース

 戦中世代の証言、鮮やか

川崎市ふれあい館(川崎区桜本)の識字学級に通う在日コリアンのハルモニ(おばあちゃん)たちの人生を通し、戦後史を問うドキュメンタリー映画「アリランラプソディ〜海を越えたハルモニたち」の上映が、首都圏の各地で進んでいる。アジアやヨーロッパの映画祭でも上映が決まり、金聖雄(キムソンウン)監督(60)は「多くの人に、時代に翻弄されながらも力強く生き抜いたハルモニたちの言葉を届けたい」と語る。

「アリランラプソディ」は、自身も在日2世の金監督が2004年に制作したデビュー作「花はんめ」の続編として、撮りためた映像や新たに撮り下ろした映像を編集したドキュメンタリー作品だ。前作では「ふれあい館」に集うことで青春を謳歌するハルモニたちの姿にフォーカスしたが、本作では、ハルモニたちがカメラに向けて語る苦難に満ちた人生に焦点を当てている。

ハルモニたちはそれぞれの人生を「回想」するだけだが、結果的に、あの戦争によって運命を大きく狂わされ、戦後の日本社会に抑圧されてきた史実が浮き彫りになる。と同時に、苦難の時代を生き抜いてきたハルモニたちの生活の軌跡も、「ふれあい館」での生き生きとした様子と共に活写される。

「ふれあい館」を運営する社会福祉法人青丘社の理事長で、半世紀近くハルモニたちに伴走してきた三浦知人さんは「読み書きができなくても豊かに生きる彼女たちが時代に刻んだ豊かな生活史も、この映画で『見える化』されている。(撮影が)間に合ってよかった」と喜ぶ。

金監督自身、若かりし頃は自身のアイデンティティに向き合うことを避けていたという。「ギリギリ間に合った。あの戦争を生き抜いた世代の言葉のおかげで堅苦しい正論ではなく、伝えたいものが自然と伝わる作品になったと思う。幅広い層の人たちに見てもらい、歴史理解を深める機会になれば」と話している。

4月5日まで、横浜市中区の「横浜シネマリン」で上映されている。

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