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ドル金利&ドル円上昇が止まらない理由

TBSラジオ

投資の始め方やお金の仕組みはもちろん、金融経済の注目ニュース、最新のマーケット動向などを学ぶ「トレードアイランド学園」。生徒「レッド吉田くん」と「花奈澪さん」、担任の「大橋ひろこ先生」と一緒に生放送で学んでいきます。

レッド君:大橋先生、今日の日銀の金融政策決定会合、びっくりした~!

大橋先生:なにが?

レッド君:なにも新しい発表が無いという状況だったのに、いきなりガクンと下がったじゃないですか?

日銀の金融政策決定会合、「現状維持」もドル円が上がって下がった!

大橋先生:それは、日銀の植田総裁の記者会見が始まってから下がったんですよね。発表はお昼にあって「緩和政策は現状維持」「マイナス金利解除も無し」ということで、ドル円相場が一度、上がったんですよね。

レッド君:そう!

大橋先生:日銀の声明文が発表されて「粘り強く、金融緩和を継続していく」という使う古された文言文言が繰り返し使われていたと。まだまだ粘り強く緩和をやるんですね、と。それで上がったんです。

レッド君:なのに、天井つけて1円以上下がりましたよね?

大橋先生:日銀の会見で、植田総裁が言ったこと言葉に反応してドル円が下がっているんですね。<物価目標達成の確度は引き続き少しずつ高まっている>。

花奈さん:どこの、どの角度が!?

大橋先生:(笑)。で、もう一つ。<物価安定目標の実現が見通せるようになればマイナス金利を含む大規模緩和政策の継続の是非を検討していく>。

レッド君:うーん、まあ、わかります。

大橋先生:ちょっと回りくどいよね(笑)。

レッド君:つまり、今は何もしないってことですか?

花奈さん:緩和を止めることを考えていこうかなーくらいのことですか?

大橋先生:これをマイナス金利解除の地ならしをしたと、捉える人もいるわけ。

レッド君:日銀が準備を始めたよ、と。

大橋先生:そう。緩和解除を検討するんだよっていう。

花奈さん:これが“日銀文学”か。

レッド君:日本人の解釈だったら一緒じゃん!って思うけど、海外の人が訳したのを聞いたら、またチャレンジング的な感じで捉えたかもしれない?

大橋先生:たしかにチャレンジングに読めなくもないですよね。そこまで攻めてはいないんだけど、継続するのを止めることを検討する、みたいな言い方なので、まあチャレンジグ・・・(笑)。

レッド君:もっとはっきり通訳してくれないと(笑)。

大橋先生:これでやっぱり反応しているので。海外勢もこれをしっかり見て。機械的にアルゴリズムが働いているという動きだと思いますよ。

レッド君:147円手前くらいまで落ちましたよね。

大橋先生:ドル円相場のチャートを見てみましょう。

大橋先生:5分足のチャートですが、12時に日銀の金融政策決定会合で政策の現状維持が発表された時点で、そして午後3時半くらいからドーンと下がって。この植田総裁のこの言葉に反応しているんですね。

花奈さん:久々の美しいナイアガラだと思ったんですけど・・・

大橋先生:このまま下がるかなって思いきや、今はもう戻ってますよね。

花奈さん:全戻しですよ!

レッド君:オレ、危なかったんですよ! 上がってたじゃないですか、このまま上がると思ってロングを入れようと思ったんですよ。そしたらスマホの操作をちょっと間違えたんですよ。で、出来なかったんですよ。その瞬間にガクンと下がったんですよ。ついてますよ!

花奈さん:あぶなかったですねー。

大橋先生:これは褒めたらいいのか、よくわからない報告を受けましたけど(笑)。

花奈さん:結局、いろんなことがあってもドル円は今日は戻って。なぜ、ドル円の上昇が止まらないのですか?

ドル金利&ドル円上昇が止まらない理由①

大橋先生:それが今日のテーマです! きょうは、アメリカ経済指標で悪いのが出てもドル金利の上昇が続いて、ドル円の上昇が・・・止まらないHa~Ha♪

レッド君:YAZAWA!

大橋先生:止まらないんですよ。

レッド君:今までのデータを度外視の可能性もありますよね?

大橋先生:そう。最近、けっこう悪いデータも色々と出てきているんですよ。良かったのもあって、アメリカの小売高。小売が良いってことは、アメリカの消費者はまだお買い物をしているってことなんですよ。景気の悪化を感じていないような。(前月比 +0.6% 予想+0.4% 前回+0.3%)(自動車除 +0.4% 予想+0.2% 前回+0.2%)

花奈さん:これは良い方のデータですね。

大橋先生:逆に悪かったのが、「1月フィラデルフィア連銀製造業景況指数」。予想-6.5だったのが-10.6。

花奈さん:けっこう違うなー。

大橋先生:もっと衝撃的だったのが、「1月NY連銀製造業景気指数」。予想が-5くらいだったのが、出てきた数字が-43.7!

花奈さん:そんなに外れることがあるんですか?

大橋先生:けっこうあるんですよね(笑)。

レッド君:すごいな!

大橋先生:そうすると、こんなに予想よりも悪いということは、アメリカの景気がこれから冷えていくとなれば、アメリカの金利が下がってドルも下がりそうなものですけど、こういうのがあっても下がらないんですよ。

花奈さん:なんでー?

ドル金利&ドル円上昇が止まらない理由②

大橋先生:なんでなのか。ここで出てくるのが、経済指標ではなくて、「要人発言」なんですよ。

花奈さん:「要人発言」と「経済指標」、パワーバランスはどっちが上なんですか?

レッド君:要人発言って、けっこう多いじゃん。そこで反応しているよね。数字じゃないんだよ。

大橋先生:そう。FRBの関係者=FOMCのボードメンバーだったりします。彼らがいろんな所でインタビューを受けたり、講演会に出たりして発言するんです。その発言、<3月の利下げは早過ぎる>というような内容が多いんですよね。例えば、

・1/12、米クリーブランド連銀のメスター総裁「3月は利下げには早すぎる」

・1/14、米シカゴ連銀のグールズビー総裁「金融市場は今年の積極的な利下げ軌道を想定しており、政策当局者らよりも先走っている」

花奈さん:おいおいおいっ!

大橋先生:<ちょっ、待てよ!>って言ってるわけですよ。そして、有名人のこの人!

・1/16、FRBウォラー理事「インフレ率の低下が持続すると明確になるまで利下げを急ぐべきでない」

花奈さん:みんな言ってるんだ!

レッド君:なんだろう。

大橋先生:<正月明けから、利下げ急ぐな!3月は早過ぎる>って口を揃えて言ってて。

花奈さん:みんな、去年の発言は何だったの!?

大橋先生:そう! 

レッド君:FRBウォラー理事が<利下げ、急ぐべき>みたいなことを言って、去年下がったわけでしょ?

花奈さん:うちらのこと、振り回して楽しいんですか?

レッド君:ほんとだよ!!

大橋先生:アメリカの長期金利の推移のチャートを見てみましょう。

大橋先生:赤いのが悪い経済指標が出た所、黄色いのはわりと良い経済指標が出た所。そして、要人発言が出た所。悪い経済指標が出て金利が上がっているのは、要人らがタカ派発言するから金利が上がってるわけですよ。

花奈さん:うわ~、指標が何も響かなくなってる。

大橋先生:要人らのタカ派発言で、今年3月の利下げは無いんじゃないのというムードが今高まってきていて。

花奈さん:なるほど。

レッド君:それでドルがどんどん上昇しているわけだ。

大橋先生:去年11月29日、FRBウォラー理事さんが利下げが早い方がいいみたいな発言してたから。それで去年はドル円相場が151円から140円まで下がって。そのFRBウォラー理事が手のひらを返して(笑)。

レッド君:ウォラーさんがその時にその発言をしなかったら、オレはこのショートを持ってないんだよ! 持ち続けてないんだから!

花奈さん:たしかに(笑)。私も気絶ロングしてましたよ!

アメリカの利下げ、どうなる!?

大橋先生:いろんなアメリカの要人が利下げを急ぐなと言っていたおかげで、一時は3月のFOMCでの利下げ折り込みって80%くらいまで上がっていたんです。今、何パーセントになったと思いますか?

レッド君:Fedウォッチ!

花奈さん:いうても、まだ6回は利下げすると思っているんですよね、みんな。

大橋先生:まあ・・・それが6回というより5回くらいに変わってきてますね。

レッド君:そうなんだ! 後ろ倒しになってるから。

花奈さん:今何パーセント何ですか?

大橋先生:50%を割り込んで、42.4%です! 

花奈さん:ええ!? 80%思っていたのに!?

大橋先生:5割を切っているので、ひょっとしたら3月の利下げ開始は無いと。そうすると、今度は5月かな。5月まで利下げが無いんだったら、ドル円をショートしているよりロングしていた方がよくない?

レッド君:たしかに! 

大橋先生:そうか。まだ数ヶ月あるからスワップあるし。

レッド君:金利も上げないわけでしょ。

大橋先生:検討するとは言ってますけど、いつということでもないですし。一般的には3月の春闘をみて、また賃金上昇が今年、革新的に上がることが確認できれば、4月か5月かな、と。だからこの時期まで日米の金利がどっちも動かないという予想になってきているわけですよ。

レッド君:そうなったらやっぱりロングの方が・・・

大橋先生:そうすると、日米金利の縮小で今年は円高になるという予想が多かったんだけど、金利差が縮小するのは、年半ば近くになってからだよねという。今からドル円を売るのは早すぎ、みたいな。

レッド君:いや、でもだからと言えってロングをやるのもまた違うでしょ? もっと様子を見ないと? 今日なんてどっち持てばいいかわかんないですよね。

今年1月だけで「8円」も動く!

大橋先生:そうですね。今日は難しいと思います。というのも、年明けの1月に140円手前からすでに148円くらいまで、8円近く動いちゃってますからね。

レッド君:8円!?

大橋先生:1ヶ月も経たないのに8円もドル円の上昇があると、ここからさらに上がると思って今買うのは遅いんじゃないの!?という心配がありますよね。

レッド君:今、ちょっとドル円を見たら、また147円を切って落ちてる。わかんない、全然。

大橋先生:今日の日銀の会合で、マイナス金利解除の地ならしをしたんじゃないかってということで、3時半以降、ちょっとドル円が下がっていますよね。ニューヨークの取引はまだ始まってません。ニューヨーク勢は23時30分から取引がスタートするので、彼らがどっち側で仕掛けてくるのか、まだわかんないですよね。

花奈さん:そうか。もう数時間は起きてないと。

大橋先生:(笑)。

レッド君:そういうことだよね。そこで動いた方に行く。で、我々はいつ、ショートを損切りすべきなのか!?

大橋先生:まだ持ってるの!?

花奈さん:はい・・・持ってます・・・。年明けからのショートが・・・。

レッド君:ホコリをかぶってますよ(笑)。

大橋先生:まだ今年に入って1ヶ月も経ってないんですよね。そう考えれば、まあそんなに長く引っ張っているわけではないんだけど。

花奈さん:けど・・・

大橋先生:8円も動いている。この8円の背景にあるのが、経済指標ではなくて、FRBの要人らが急にタカ派的なトーンの発言を行っているから。何かあるんでしょうね。今ここで、早期に利下げをしてしまうと、再びインフレが上がってしまうリスクがあるとか。

花奈さん:思惑が。

大橋先生:あんまり早くに利下げをしてはいけないということを思っているんでしょうね。

レッド君:このあとのトレードがけっこう難しそうだね。

大橋先生:基本的には、日米の金利差というのは今年の大きなテーマなので。日米の金利差の相関チャートを見て見ましょう。

大橋先生:日米といっても、日本の金利はマイナス金利で動いて無いので。アメリカの金利が下がればドル円も下がり、アメリカの金利がリバウンドすればドル円も上がっていると、きれいに相関しているのがわかりますよね。

レッド君:わかります。

大橋先生:ということは、ここからもアメリカの金利がどうなるのかというのがいちばん大事な焦点ですよ、ということです。

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