劇場版『チェンソーマン レゼ篇』戸谷菊之介さん×楠木ともりさん×坂田将吾さんインタビュー|早川アキの新たな一面とマキマに宿る違和感。映画を通して、デンジが経験した夏を体験してほしい
2025年9月19日(金)より、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が大ヒット上映中!
悪魔の心臓を持つ「チェンソーマン」となり、公安対魔特異4課に所属するデビルハンターの少年・デンジ(戸谷菊之介)。 ある日、電話ボックスで雨宿りしていた彼はレゼという謎の少女と出会います。レゼがアルバイトする喫茶店に通うようになり、距離を近づけるふたり。この出会いを境に、デンジの日常は変わり始めていき……。
本稿では、映画の公開を記念して、デンジ役・戸谷菊之介さん、マキマ役・楠木ともりさん、早川アキ役・坂田将吾さんによる特別座談会をお届け。映画の見どころやお気に入りシーンなど、3人の楽しいトークをお楽しみください。
【写真】劇場版『チェンソーマン レゼ篇』戸谷菊之介×楠木ともり×坂田将吾インタビュー
レゼを演じる上田麗奈さんのお芝居にドキドキ!?
ーー劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の制作が決まった時の感想をお聞かせください。
デンジ役・戸谷菊之介さん(以下、戸谷):「レゼ篇」は尺的にも劇場版にピッタリなんじゃないかと思っていました。なので、決まった時は(右指をパッチン鳴らして)「やっぱり!」って。「アニメになったらどんな演出になるのかな?」とワクワクしながら収録を待っていました。
マキマ役・楠木ともりさん(以下、楠木):『チェンソーマン』のいちファンとして、TVシリーズの続きを観られることがとても楽しみでした。私が原作を読んでマキマに惹かれたきっかけが「レゼ篇」だったので、今回演じさせていただけたこともすごく嬉しかったです。
早川アキ役・坂田将吾さん(以下、坂田):僕も「待ってました!」という感じですね。『チェンソーマン』のアニメ、その中でも「レゼ篇」はぜひ映画館で観たいと思っていて。実際に決まった時、「これはすごいことになる!」という気持ちでいっぱいになりました。
ーーTVシリーズ以来、久しぶりの収録だったと思いますが、収録の感想や現場の雰囲気はいかがでしたか?
戸谷:TVシリーズから、ノドも心も、体全部を使って演じていたのですが、劇場版のアフレコでバトルシーンなどをほぼぶっ通しでやってみて、「久々に来たな」と。特に「レゼ篇」のバトルは結構激しめですし、アニメの演出としてすごい数の爆発があって、ビームとのコンビネーションで大きくダイナミックに動くシーンもたくさんありました。
楠木:私は基本的にマキマの出番を中心に収録させていただきました。マキマが出ているシーン以外の収録はほぼ見ていなかったので、映画が完成するのが楽しみでした。
坂田:僕も久しぶりの収録で楽しかったです。
戸谷:1行でまとめました(笑)。
坂田:(笑)。というのも、自分の中に早川アキがずっといたので、取り戻すのにはそれほど時間はかからなかったんです。野茂さんとの掛け合いでは「もうちょっと親しみを込めて」というディレクションをいただいたりして、彼の新しい部分が見えたのも嬉しかったですね。
ーー今回はアキの新しいバディとなった天使の悪魔役の内田真礼さんとの掛け合いが多かったと思います。
坂田:そうですね。
戸谷:今回は僕とはほぼ一緒には録っていないんだよね。
楠木:私も。
坂田:この二人とは全然なかったです。一緒に録れたのは天使の悪魔(内田真礼さん)と公安対魔特異2課の野茂さん(赤羽根健治さん)と副隊長(高橋英則さん)、東山コベニ(高橋花林さん)と暴力の魔人(内田夕夜さん)くらいでした。
楠木:現場の雰囲気はまた違った?
坂田:今までは4課のメンバーと会話することが多かったんですけど、公安の親しい先輩である野茂さんとの絡みは新鮮でした。
楠木:たしかに。先輩と話しているアキは新鮮だった。TVシリーズでは姫野くらいだったから。
坂田:姫野先輩とは違った距離感で、まるで部活や職場の先輩というか。しかも弟分みたいにかわいがってもらっている会話だったので、それも不思議な感じで。また新しい早川アキが見られました。
ーー今回のキーパーソンであるレゼの印象をお聞かせください。
戸谷:レゼにはすごく振り回されたし、すごくかわいくて。上田さんのお芝居もレゼがそこにいる感じで、ドキドキさせられっぱなしでしたね。
楠木:……(クスクス笑う)
戸谷:なんで笑っているんですか?(笑)
楠木:劇場版のインタビューをいくつか受けて思っていたけど、戸谷くんの回答がデンジそのものだよね。
戸谷:ウソ!?
楠木:俯瞰していないから面白くて。本当にデンジが答えているみたい。
坂田:ドキドキって言葉が素直に出てくる感じもかわいい。
戸谷:あはは(笑)。でも、上田さんのお芝居から距離感の近さをすごく感じたんです。特にレゼがアルバイトしている喫茶店『二道』で一緒に過ごしている時のふとしたセリフから感じる夏っぽさが「フォッー!」みたいな。
楠木:それを文章でどう表現するの? もっとわかりやすい表現にして(笑)。
戸谷:すみません(笑)。ドキッとする瞬間がたくさんありました。
レゼとデンジ、天使の悪魔と早川アキ
ーー「レゼ篇」のお気に入りシーンを教えてください。
戸谷:僕は訓練施設から車で逃げている時に無線が壊れるところが好きですね。
完成した映像を観るまで「あのシーンはどうなるんだろう?」とずっと気になっていて。実際に観てみたら「ああいう演出になるのか」と。マンガのシーンが完全にアニメとして表現されていて、すごかったです。
楠木:戦闘シーンもいっぱいあって、迫力がすごいよね。
個人的に一番好きなのは物語後半のマキマです。あのシーンを観た皆さんも「あれ?」と違和感を覚えるはずですし、原作を読んでいた時から、私が「レゼ篇」で一番グッときたシーンだったので。
戸谷:それはありますね。
坂田:僕はレゼとデンジが夜の学校に忍び込んで、一緒にプールで遊ぶところは劇場で観ていて、笑ってしまいました。
坂田:レゼに「デンジ君もハダカなっちゃお」と言われて、俺はどうしたらいいんだ~!ってモノローグで苦悩した次の瞬間、すっぽんぽんになっていて。
楠木:私もめっちゃ笑った(笑)。
坂田:観ていて思わず「はあっ?!」ってつぶやいちゃった(笑)。
ーー終盤で台風の悪魔に吸い込まれそうな天使の悪魔の手を、アキが必死でつかんでいたシーンもグッときました。
坂田:実際すごく頑張ったんですけど、自分から言うのはちょっと恥ずかしくて……(笑)。
一同:(笑)
戸谷:わかる。誰かに言ってほしいよね。
楠木:あのシーン、すごく良かった。内田(真礼)さんとは演じる前に「こんな感じでいきましょう」みたいな話はしたの?
坂田:いや、特に話さず、いきなりテストでやる感じでした。僕だけ「もう1回やらせてもらっていいですか?」と何回も言ってしまいました。
楠木:私もそうだった。
坂田:きっといい感じのテイクが使われていると思います。
戸谷:めっちゃ良かった。自画自賛していいと思う。
楠木:素敵なお芝居だった!
坂田:ありがとう。結局、自分で言っちゃいましたね(笑)。
チェンソーマンとボムの戦闘はド派手&大迫力
ーー今作の見どころのひとつとして、チェンソーマンとボムのバトルは外せないと思います。
戸谷:あれはすご過ぎましたね。1つ1つのシーンを切り取っても1枚のアートとして成立するほどの美しさで。それを連続で繋げていくというのはきっと途方もない、大変な作業だったと思います。
楠木:そもそもマンガの動きをひも解くのも大変だったと思う。インパクトがある絵が続くからその間をどう埋めていくのかも大変でしょうし。正直、1回観ただけでは抱えきれなかった(笑)。
戸谷:本当に。台風の悪魔もいるし、ビームもいる。規模が大きすぎて、見応えがすごかったです。
ーー花江夏樹さん演じるビームや「チェンソーマン」になった後のテンション感が凄まじく、役者さんのすごさを改めて感じました。
戸谷:それに関しては、𠮷原(達矢)監督や音響監督の名倉(靖)さんからディレクションをいただいた部分もあります。「もっと出してください」というディレクションはいろいろなシーンでありましたし、そこは思い切りやりました。
ーー花江さん演じるビームのお芝居に刺激を受ける部分もあるのでは?
戸谷:そうですね。一緒に収録はできませんでしたが、映画を観たらかなり出されていて。この間、別の収録でデンジとビームの掛け合いをやったんですけど、アフレコ前には普通に雑談しているのに、収録が始まった瞬間急にスイッチが入って。一瞬で花江さんが役に入るから、「自分もここまでたどり着かなきゃ」という刺激を受けました。
ーー一方で、マキマやアキの「静」のお芝居を見られるのも『チェンソーマン』の魅力の1つだと感じました。
楠木:私自身も引くところは徹底的に引いて、足すところは徹底的に足すという演出の印象があります。収録中は音など入っていないので、とても静かな中で録っていますが、映画本編を観るとその時の緊張感が崩れないような状態で、そのまま劇伴が入ってくるのも素敵なんです。
坂田:(早川)アキに関しては、今回は意外とデンジと会話をしていないんですよね。
戸谷:ずっと一緒にいるイメージだったけど、意外としゃべってないんだよね。
坂田:車のシーンではデンジも倒れているから会話する感じでもなかったですし、復活した後も車の無線が壊れたシーンのラジオの音量がどれだけの大きさなのかが分からなくて一方的にしゃべっている感じで。どれだけ声を張り上げれば聴こえるのかを想像しながらやっていました。
映画を通して、デンジが経験した“夏”を体験してほしい
ーー前半と後半で雰囲気がガラリと変わる部分も今作ならではだなと。
戸谷:あの切り替わりはホラーっぽいですよね。レゼと学校にいる時に謎の男が出てきたところから演出で音が急になくなったり、画面が暗くなったりして。そこから雰囲気がだいぶ変わった気がします。
楠木:元々怖かったのに、音が付いて更に怖くなったね。
坂田:ぴちゃっぴちゃって水音が聴こえるところとか。でも、レゼが帰ってきた時、レゼがびしょ濡れになっているのに、何でデンジは気付かないのかは不思議だった。
楠木:それはデンジがバカだから……(笑)。
一同:(笑)
戸谷:そう、何も気付いてないんですよね。
坂田:レゼと何するかで頭がいっぱいだったのかもしれません(笑)。
戸谷:もはや何も考えていないのかも。
ーー最後に、ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。
坂田:この記事を読んでくださっている方の中には、既に映画を観てくださっている方も多いと思います。
僕自身も「最高の映画だな」と思ったし、既に2回目が観たい気持ちになっているので、記事が掲載される頃には2回、いや3回観ているかもしれません。ぜひ何度でも観て楽しんでください。アキを演じる身としては、姫野のことを引きづっているアキが新しいバディとなった天使の悪魔と果たして良い関係を築けるのか。性格が真逆とも言える二人の距離感の変化にも注目してください。
楠木:私自身は試写で観て、自分の中で消化しきれない、抱えきれない気持ちでいっぱいになりました。この映画に心を動かされるどころか、振り回されるような印象があったので、早くご覧になっていただいて、この気持ちを皆さんと共有したいです。
『チェンソーマン』の話題を目にしたり、作品名を聞いたことがあるという方も楽しめますし、ここからさかのぼって原作やTVシリーズを観るのも楽しいと思います。10月4日からはMX4Dや4DX、Dolby Cinemaでの上映も始まりますので、ぜひ劇場に足を運んで観てください。
戸谷:スタッフの皆さんが素晴らしい映像や音を作っていただいて、僕たちキャスト陣も全力でお芝居した結果、こんなに素敵で心を動かされる映画が完成したことに感謝しています。昨年末に「レゼ篇」が劇場版として公開されると発表された時から、「早く皆さんに観てほしい」とずっと思っていました。実際に公開されて、皆さんからどんな反響をいただけるのか、ドキドキしています。
デンジとレゼの物語、思春期の恋のようなドキドキと手に汗握るバトル、そして観終わった時に少し残る切なさをぜひ映画館で体験してください。
[インタビュー/永井和幸 撮影/藤本厚]