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古都を走る地下鉄2路線 2021年に開業40周年を迎えた京都市営地下鉄 線区のプロフィールや新型車両をご紹介【コラム】

鉄道チャンネル

烏丸線用20系新型車両。全国レベルでみれば、一部鉄道系サイトでも指摘される通り、東武鉄道の新型車両で東京メトロ日比谷線に直通運転する70000系電車に近い印象を受けます

2022年5月末の「鉄道技術展・大阪」の取材時、限られた時間でしたが関西の鉄道2者(社)に乗り鉄しました。今回取り上げるのは、新型電車の第2編成がデビューしたばかりの古都を走る地下鉄――

2021年5月に開業40周年を迎えたのが京都市営地下鉄です。国際会館―竹田間の烏丸線(13.7キロ)と六地蔵―太秦天神川間の東西線(17.5キロ)の2路線。路線延長は2路線合計で31.2キロ、車両数は222両を保有します。

京都市を代表する政策目標が、マイカーに過度に依存しない「人と公共交通優先のまちづくり」、京都市民や来訪者の行動規範として「歩くまち・京都」を掲げます。歩くまちを実現するカギが、市営地下鉄に代表される公共交通機関の充実。京都市交通局に取材協力いただいた本コラムは、市営地下鉄のプロフィールとともに、烏丸線20系新型車両などをご案内します。

ルーツは日本最古の電気鉄道

これぞ京都市営地下鉄のルーツ! 京都市電には軌間1435ミリの標準軌と1067ミリの狭軌区間があり、1960年代末には75.1キロの路線がありました(画像・資料:京都市交通局)

京都市営地下鉄40周年――確かにその通りですが、京都の鉄軌道系交通機関は1世紀を超す歴史を持ちます。

前身の京都電気鉄道が、日本で初めて一般営業用電気鉄道(路面電車)を開業したのは1895年。戦前のうちに全路線が市営化されましたが、マイカー増加や道路渋滞を理由に1978年9月までに全廃されました。

市営地下鉄は、市電廃止から3年弱のブランクをはさんだ1981年5月、烏丸線の最初の区間に当たる北大路―京都間(6.6キロ)が開業。その後、烏丸線は3回にわたる路線延伸を経て、現路線が全通しました。

京都市営地下鉄の路線図。東西線の東側を例外に、ほぼ完全な十字形を描きます(京都市交通局から提供いただいた交通マップから地下鉄部分を切り抜いて作成)

南側終点の竹田では、近鉄京都線と相互直通運転。相直区間は近鉄奈良に延びて、国際会館―近鉄奈良間(49.1キロ)が乗り換えなしで結ばれます。京都、奈良の2つの古都が直結されます。

烏丸線は、烏丸御池で地下鉄東西線、四条で阪急京都線(阪急の駅名は烏丸)、京都でJR各線や近鉄京都線に接続します。

京阪京津線が乗り入れる地下鉄東西線

東西線用の50系車両は6両17編成あります。車体長16.5メートルで、片側3ドアのステンレス製。西側起終点の太秦天神川には京都市交通局の本局があります

烏丸線が京都市南北の交通軸なら、もう一つの東西線は、線区名そのままの東西交通軸。しかし、路線図でご覧の通り、山科以遠は南北方向に向きを変えます。

最初の開業は1997年10月の醍醐―二条間(12.7キロ)。開業時から、京阪京津線が地下鉄に乗り入れます(京阪の片乗り入れ)。東西線は2回の延伸で2008年、六地蔵―太秦天神川間が全通しました。

東西線は地下鉄烏丸線と京阪京津線のほか、西側から太秦天神川で京福嵐山線(嵐電。京福の駅名は嵐電天神川)、二条でJR山陰線、三条京阪で京阪本線(京阪の駅名は三条)、山科でJR各線、六地蔵でJR奈良線、京阪宇治線に接続します。

六地蔵駅は、京都市の地下鉄が初めて京都市域を超えて宇治市内に乗り入れるという、若干マニアックな話題もあります。

烏丸線に40年ぶりの新型車両20系が登場

デザインコンセプトの「みんなにやさしい地下鉄に」を実践する20系の室内。側窓は下降式の2連窓が基本。地下鉄ですが近鉄の地上区間も走るため、ロールカーテンの日よけも設置しています

京都市営地下鉄のトピックス。すでに本サイトをはじめ鉄道系ニュースサイトで報道されていますが、烏丸線の新型車両が20系です。開業時からの主役だった10系電車が更新時期を迎え、京都市交通局は2021年度から2025年度にかけ、20編成のうち9編成を新型車に置き換えるスケジュールです。

新型車両の内外装デザインは、専門家や公募委員の意見を反映させ、複数案から京都市民や地下鉄利用客による選考投票も実施されました。デザイン投票のニュースは、本サイトでも募集開始時の2019年3月に掲載されました。3案のなかでは、B案が採用されたようですね。

デザインコンセプトの指針は、「みんなにやさしい地下鉄に」「京都ならではの地下鉄に」「愛着がわく地下鉄に」の3項目。

以下ポイントですが、正面の行先表示器、前照灯・尾灯にはLEDを採用して視認性を向上させました。車体断面は段差のないすっきりした構成とし、室内空間をワイドに確保しています。

西陣織をはじめ古都の伝統文化も

20系の「おもいやりエリア」。通常シートや荷棚はなく、側面に2段てすり、中央に立ちがけシートを設置します。立ちがけシートは、もたれかかれる構造で、3人がけ2組を6人で使用できます。立ちがけシートの背中部分は、京都の伝統産業素材を展示するケースです

デザインコンセプトの一つの「京都ならではの地下鉄に」。京都らしさを表現するため、西陣織など伝統産業の素材や技法が車両の各所に散りばめられています。

伝統産業素材の傍らにはQRコードが掲出され、利用客がスマートフォンのカメラで読み取ると、詳細な技法の特徴やメーカー情報が表示されるといった、歴史と最新技術のミックスで京都の魅力を発信します。

また、車内に飾り付けられた一部の伝統産業素材については、受注生産で一般販売されるとともに、京都市ふるさと納税の返礼品としても出品されています。

このあたり、文章での表現には限界もあります。京都旅行を計画中の皆さん、ぜひ実際に乗車して魅力をご確認ください。

訪日外国人観光客の受け入れも、2年2カ月ぶりに再開されました。新型20系車両は、京都来訪客に、伝統産業を感じてもらういい機会になるでしょう。

可動式ホーム柵と浸水対策

次に、京都市営地下鉄の安全・安心、利便性向上策を順不同で。

烏丸線では、利用客が多く混雑する駅に、可動式ホーム柵を整備しています。これまでに導入を終えたのは京都、四条、烏丸御池の3駅。2022年度は北大路駅に整備します。なお、東西線は全駅にホームドアを設置しています。

地下鉄駅の浸水対策も万全です。2016年度から2019年度までの4年間で、12駅31カ所の駅出入り口に浸水対策を完了しています。2018年5月にはハザードマップが公表されており、2023年度までに8駅16カ所に追加整備します。

観光客利用の多い京都で、外国人に喜ばれそうなのが駅トイレのリニューアル。京都市交通局は開業から30年が経過したトイレについて、全面リニューアルを進めています。リニューアルにあわせ、段差の解消、トイレの洋式化やオストメイト設備を導入して、バリアフリー化を図ります。女子トイレには、パウダーコーナーも設置しています。

エキナカショップで増収作戦

コロナで収入が落ち込むなかでは、関連事業による増収も求められます。いわゆるエキナカビジネスの強化は鉄道事業者に共通する経営課題ですが、地下鉄で難しいのは施設が地下なので、駅ビルをはじめとする商業スペースの確保が難しい点。

京都市交通局はエキナカショップ「コトチカ(古都の地下の意)」を2010年度から出店。2022年3月末現在、12駅47店舗にネットワークを広げています。今後も、新しい商業施設の可能性を探ります。

全国の鉄道事業者が力を入れる応援キャラクターを起用した利用促進作戦には、京都市営地下鉄も乗り出します。

都市交通局の応援キャラクターには、太秦萌のほか、松賀咲(まつがさき)や小野ミサ(おのみさ)も。若手職員が立ち上げたプロジェクトチームが、利用促進を目指して2011年に考案しました (c)京都市交通局2013-2022

ビジュアルなので余計な説明は不要でしょうが、「地下鉄に乗るっ」のキャラクターの多くが高校生や大学生というのは、いかにも名門大学や高校がある〝学問の都・京都〟らしさを感じさせます。

高校生キャラの太秦萌がマスク乗車や車内サイレントを呼び掛け

ラストは、京都市営地下鉄の新型コロナ感染拡大防止策。対策は①車両、駅トイレ、券売機・精算機の抗菌ウィルス加工 ②車内や駅の換気 ③駅や車両の定期消毒 ④アルコール消毒液の全駅設置 ⑤利用客への啓発活動――の5項目で、事業者の取り組みをアピールしつつ、利用客にも協力を求めます。

私が注目したのは、前章の利用促進作戦にも登場したキャラクター。「マスクをするっ」のキャッチフレーズで、「ご利用の際には、マスクを着用してね!」「車内・ホームでの会話はなるべく控え目に。」などと、地下鉄沿線に住む高校2年生という設定の太秦萌(もえ)が協力を呼び掛けます。

京都市交通局は2022年6月にも、「地下鉄烏丸線20系車両(第2編成)の営業運行の開始について」「市バス側面方向幕タオル(実寸大)を発売!」といったニュースを発信しました。国際観光都市を走る地下鉄として、40周年の節目をステップに、50周年から100周年へとさらなる進化を遂げることを期待しつつ、本コラムを終えます。

記事:上里夏生

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