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【まちの宝】100年の記憶を纏って。建築家が受け継いだ町の銘菓ストーリー『まとやの成金饅頭』(福岡・直方市)【まち歩き】

福岡・九州ジモタイムズWish

直方駅から歩いて5分ほど。かつて炭鉱景気で賑わったという商店街の一角に『まとやの成金饅頭』はある。
静かな店内には木のぬくもりと、どこか懐かしい甘い香りが漂っていた。
迎えてくれたのは、代表の浅野雅晴さん。建築設計事務所を営みながら、「衣食住」をテーマに事業を展開してきた浅野さん。2020年、この老舗の扉を叩いた。

■投機の失敗が生んだ、筑豊の銘菓「成金饅頭」

「成金饅頭」の誕生は、明治時代にさかのぼる。一攫千金を狙ってある青年が豆を大量に買い込んだものの、事業に失敗。大量の豆を余らせてしまった。
「その青年が、余った豆で餡を作って饅頭にしたんです。当時はケーキとかお菓子がない時代だったので、炭鉱夫に甘いものを作ったら売れるんじゃないかと思ったらしくて。それが大当たりし、本当の"成金"になったという逸話が由来です」と浅野さん。
どら焼きに似た見た目だが、あんこを皮で完全に包むのが饅頭なのだ。ねじり梅の焼印も、この菓子の長い歴史を物語る。

■人口6万人の町の、大きな熱量

もともと浅野さんが住んでいたのは、直方市の隣・北九州市だった。事業承継の話が来る前から、直方という町は身近な存在だった。

「人口6万人の町なんですけど、すごく明るい町だなと思って。この町のために頑張っている方がたくさんいらっしゃるんですよ」

縁もゆかりもない土地ではなく、自分がすでに好きだと感じていた町で、100年以上続く味を守る——その巡り合わせが、決断を後押しした。

■「歴史あるものを作る歴史を残したい」

浅野さんがこの店の扉を叩いたのは、コロナ禍が始まった2020年のこと。「衣食住」をテーマに事業を展開する中で、「食」の柱を探していた時期だった。

「"食"の部分を探していた時に、106年続いた老舗が後継者を探しているという話が来て、手を挙げたんです」

新しいお菓子を生み出すよりも、歴史あるものを続ける側に意味を感じた。それが決断の根っこにあった。

「歴史あるものを作る歴史を残すって、すごく意味があると思ったんです」

作ることよりも、続けること。浅野さんが選んだのは、そちら側だった。

■機械をやめて、手焼きに戻した理由

受け継いだ当初、店には老朽化した機械が残っていた。一部の工程は機械化されていたが、浅野さんはそれをすべて廃止し、銅板を買い直して一枚一枚の手焼きに戻した。

「老朽化した機械では、お客さんに出せる状態じゃなかった。原点に立ち帰ろうと」

ただし、味は"そのまま"ではなかった。原材料はすべて見直した。理由は明快だ。

「私自身、和菓子の強い甘さが少し苦手で。あっさり食べられるように、糖度を抑えました。伝統の白あんの製法は守りつつ、食べやすさを追求しています」

写真上:「まとやのバターどら焼き」(税込315円)  写真下:「成金饅頭 中」(左から八女抹茶 税込250円、黒あん税込240円、白あん 税込220円)

■子どもたちに、この味を覚えてほしい

かつての顧客の中心は60〜80代だったという。それが今、若い世代や子連れの家族にも手に取られるようになってきた。

「今の子どもたちが20年、30年後に『小さい頃に食べた美味しいお饅頭があった』って思い出してくれたら、それが一番です」

認知を広げるため、直方の本店だけでなく外へも積極的に打って出ている。2025年には博多駅のいっぴん通りへの出店を果たした。「成金饅頭を全国に知ってもらうことが、ひいては直方を知ってもらうことになる」と浅野さんは考えている。
自分が直方の街づくりを引っ張るのではなく、饅頭が人を呼んでくれる存在になれば——そんな静かな、しかし確かな展望がそこにはあった。

「いつか自分も引退する時が来ると思う。でも、その時また同じ思いで引き継いでくれる人が現れてくれたら」

職人も減り、店も減った。それでも浅野さんがこの饅頭を継いだのは、直方の100年の記憶を纏って、次の100年へ歩み出すためだ。
直方と成金饅頭を繋ぐ糸は、今日もこの店で静かに紡がれている。ぜひ一度、その味を確かめに訪ねてみてほしい。

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■『まとやの成金饅頭 本店』
住所:福岡県直方市古町9-28
電話:0949-25-0001
営業時間:10:00〜16:00
定休日:なし
Instagram:@narikinmanju
https://www.instagram.com/narikinmanju/

※下記店舗でも購入可能です。
『まとやの福どら』博多駅いっぴん通り店
住所:福岡県福岡市博多区博多駅中央街1-1(博多駅いっぴん通り内)
営業時間:11:00〜18:00
定休日:月曜
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※情報は2026年8月時点のものです。最新情報は公式Instagram等でご確認ください。

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