Yahoo! JAPAN

雪の多かったあの1978年 モンテ・カルロ 唯一勝つことができたタイヤは・・・

ClassicPORSCHE.jp

この記事は『ポルシェに初のモンテカルロ総合優勝をもたらした│1968年に投入された911 T』の続きです。

助手席から眺めるそのドライビング動作には、無駄がなくむしろスローに見えた。だが、最新の911は途方もないペースで峠を駆け抜ける。コーナーの進入からターンイン、フル加速体勢に至るまで、いつも前もって操作が準備されており、ステアリングを握る手はつねに10時10分にある印象だ。南仏の狭いワインディングで7段MTを、それこそ謳わせるように扱う腕前に、惚れ惚れさせられた。

「1969年の911のロングホイールベース化は、私からのフィードバックかって?確かにその直前には、ラリーを通じて911の改良には関わっていたけれど、個人的に911のロングホイールベース化を提案したことは一度もなかったよ。911は、50年も前の話だけど、元々アンダーステアなクルマだからね。前荷重でステアリングを切れば、そりゃコーナー手前でスピンするに決まってるさ。丁寧に曲げる一方で、速度をキープして進入する必要があるんだ」

 
エルフォードはモンテカルロで勝利する以前の1967年シーズンには、ボルトオンのボディパネル類をFRP製に代え、エンジンブロックやヘッド、ドアヒンジに至るまでアルミを用い、カレラRS 以前に究極のライトウエイト&ハイパワーの911として君臨した911Rを駆っていた。飛びぬけた腕前の911乗りには、万人向けではない、より鋭い操縦性を備えた911がウェポンとして供給されていたのだ。ちなみに1968年の911Tに続いて、1969年と1970年にモンテカルロ・ラリーで1-2フィニッシュを飾ったワークス911は、180ps仕様の911Sだった。

 
3年連続1-2フィニッシュを達成した後、ル・マン24時間の総合優勝を目標としたポルシェ・ワークスはモンテカルロから撤退した。だがライトウエイト&ハイパワーな911の伝統はプライベート・チームが受け継いだ。今回のランに登場した1972年式911カレラ2.7RSは、シャシーナンバーの下2桁が37番というごく初期の生産車で、1978年モンテカルロに出走する以前はツール・ド・フランスなどを闘っていた。またフランス国内のヒルクライム選手権で無数の実績を挙げたポルシェ・チューナー、ジャック・アルメラスは自ら仕上げた1974年式911 3リッターグループ4仕様で、WRCのツール・ド・コルスやモンテカルロで入賞を果たした。それでも、プライベート911によるパフォーマンスの白眉は1978年、ワークス経験豊富なドライバー、1978年のジャン・ピエール・ニコラまで待たねばならなかった。
 
ワークスが撤退した後も、ジェラール・ラルースやギ・フレクランといった一流ドライバーたちが、911Sやカレラ3.0を駆って総合2位やクラス優勝をもぎ取り、他のプライベート・ドライバーによる911参戦熱は増すばかりだった。1978年のエントリー216台中、911は実に28台にも達した。だがこの年に総合優勝を果たしたジャン・ピエール・ニコラと彼の911カレラRS3.0グループ4は何が違っていたのか。

 
ニコラは当初、1978年モンテカルロをルノー・アルピーヌ・ワークスで走る予定だった。「でも、予算不足で3台から2台体制になって、私があぶれたんだ。頭に来て、急いでジターヌのスポンサー契約を取りつけて、その金を握ってアルメラスのところへ911をオーダーしに行ったのさ」 クルマが仕上がったのは本番3週間前。1970年にアルピーヌでワークス911勢を脅かす3位フィニッシュを果たしたとはいえ、シェイクダウンも練習もなく911をドライブしたこともない状態で、ニコラはモンテカルロのスタートラインに立った。
 

その年はとりわけ積雪が多く、いくつかのSSが中止されるほどだった。序盤の1500kmほどを終えて総合5位につけていたニコラは、徐々に確信を強めていた。「リアのトラクションが強大で、相当、雪に強いクルマだぞってね」と、アルメラスが仕上げたこのカレラRS3.0を、ニコラは「グループ4のシャシーにグループ3のエンジンを積んだ」と形容する。

「雪の上でトルクバンドの狭いピークパワー重視のセッティングはドライビングを難しくするだけ。あえて250psに抑え、トルクバンドを拡げたのさ」
 
一方でブレーキはフロントディスクを304mm、リアを309mmに増強。サスペンション周りはトレッドを拡げてビルシュタインを入れたのみならず、前後のスタビライザーを太くして、足まわりの剛性自体を向上させた。LSDも入れ、オイルタンクとポンプ容量も増量した。
 
この老獪なモンテカルロ・チューンに加え、もうひとつ有利に働いた点は、ニコラは19 歳のときルノー・ドフィンでレースを始め、ゴルディーニとアルピーヌで育った、生粋のリアエンジン乗りであった事実だ。序盤の1500kmほどを終えて、彼はルノー5アルピーヌやフィアット131ラリー、ランチア・ストラトスらに続く総合5位につけていた。「911に慣れて雪のSSが続くようになった頃には、ほぼ区間トップを獲れるようになっていたよ」 チュリニ峠のナイト・セッションを終えた時、ニコラと彼の911は2位のR5アルピーヌに、じつに84秒もの差をつけた。そしてフィニッシュの瞬間には、そのリ―ドを約2分に広げた。強大なトラクションと信頼性、耐久性という911の特長を最大限に利した、プライベートによる貴重な総合優勝だった。
 
ちなみに舞台裏では、ジャック・アルメラスが指揮をするサービス・カーで信じられないことが起きていた。「二人のドイツ人紳士が現れて、よく見たらフェリー・ポルシェとエルンスト・フールマン博士だった。たまたま二人ともモナコにいて、ならばラリーだと観戦していたそうで、ウチが総合トップを走っていたから祝福に来てくれたんだ」
 
また前々ページのサントゥッシ/ロッシュブラン組の2.7RSは、地元に近い第18ステージでワルター・ロールに次ぐ2位のタイムを叩き出し、まるで地元優勝したかのようなセンセーションを巻き起こした。この活躍を意気に感じたアルメラスは、ラリー終盤、彼らの911のサポートを買って出た。そう、急ごしらえとはいえ、彼らは優勝したニコラのチームメイトとしてフィニッシュしたのだ。

【関連記事】

おすすめの記事

新着記事

  1. 小野大輔 5年ぶりのミニアルバム「STARGAZER」のビジュアル一挙解禁 公式SNSも始動

    SPICE
  2. 「劇場の灯を消すな!本多劇場編」 『もうがまんできない』の出演者のほか、荒川良々、三宅弘城ら追加出演者が決定&プロモーション映像も公開

    SPICE
  3. 『ストレンジャー・シングス』“ウィル役”、待望の実写映画初主演で新たな一面

    ドワンゴジェイピー news
  4. 東京発世界へ。170人のDJが選ぶ「ダンスフロアで聴きたい音楽」

    ソトコトオンライン
  5. マールボロ「ブラック・メンソール」がアイコスでも吸えるようになった!

    価格.comマガジン
  6. 名作『カッコーの巣の上で』の怪物がよみがえる...Netflix『ラチェッド』予告編到着

    海外ドラマNAVI
  7. 暑くて火の前に立ちたくない日は「カルトッチョ」がおすすめ!

    みんなの暮らし日記ONLINE
  8. アレク、妻・川崎希と子育てを巡ってバトル勃発「ちょいと考え方が違くて」

    アメーバニュース
  9. 「岡田有希子さんの幽霊」を張り込みした元『フライデー』カメラマン「ストロボ使えと言われた」

    Techinsight
  10. DAIGO、藤森慎吾らが参加の『火曜サプライズ』ファミリーソングプロジェクトが、楽曲「TUESDAY SURPRISE」を配信リリース

    SPICE