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和田唱 音楽表現の新たな扉を開いた3rdソロアルバム『BIRDMAN』を紐解くロングインタビュー「ユーモアを忘れずエンターテインしたい」

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和田唱 撮影=菊池貴裕

和田唱の3rdソロアルバム『BIRDMAN』は喜怒哀楽、愛と希望、メッセージなど、さまざまな感情・衝動・意志を極上のポップミュージックとして見事に昇華している作品だ。バラエティに富んでいて、ポップで、懐が深くて、聴けば聴くほど、味わい深さの増す曲が並んでいる。TRICERATOPSでデビューしたのが1997年、ソロ活動をスタートしたのは2018年だった。1stソロアルバム『地球 東京 僕の部屋』(2018年)、2ndソロアルバム『ALBUM.』(2020年)、そしてTRICERATOPSでの10thアルバム『Unite/Divide』(2022年)の成果も踏まえて完成したのが『BIRDMAN』だ。これは音楽表現の新たな扉を開いた作品でもあるだろう。ソロ活動の流れ、新作、ツアーについて、話を聞いた。

――ソロでの3作目となります。そもそも和田さんにとって、ソロ活動とはどのような位置にあるものなのでしょうか?

単純に、ソロ活動を始めたことによって、音楽を作ることがとても楽しくなったんですよ。この感じは久々でした。TRICERATOPSでも最初の頃は楽しかったんですよ。でも20年ぐらい続けてくると、マンネリの部分も出てきて、いつしか、どんな曲を作ったらいいのか、誰に向けて作ったらいいのか、わからない時期に突入してしまいました。曲作りは自分にとって、もっとも楽しい作業であったはずなのに、楽しくなくなって、煮詰まるようになり、曲作りのスパンも空くようになってきたんです。

間隔が空き始めると、不思議なもので、空くことに慣れてしまうんですよ(笑)。「次のツアーでは新曲をやるからね」と言いながら、次のツアーになったら、「ごめん、できなかったわ」と謝っている自分がいる状態。最初はお客さんも笑ってくれるんですが、その次のツアーでも、また謝ってということが続き、自分は何をやっているんだろう?と思うようになってきた。あの感じは辛かったですね。みんなの期待に応えたいのに、作る気が起きない自分がいたんです。

――その突破口になったのがソロ活動だったのですか?

まさに突破口になりました。以前からいつかソロアルバムを作りたいと考えていたんですが、煮詰まった状況を打開するためにも、ソロでアルバムを作ってみようと決めました。そうしたら、その瞬間から、曲のアイディアが次から次へと湧いてきたんです。ソロアルバムを2枚作ったら、バンドでもやりたい曲が出てきて、『Unite/Divide』を作り、今は再び曲を作ることに体が慣れてきました。

怒りを歌う時にも、“ユーモアを忘れず”と常に意識していましたし、エンターテインしたいと考えていました。

――ソロ作品をイメージした時に、創作モードのスイッチが入ったのはどうしてなのでしょうか?

より自由だったからだと思います。バンドで曲を出す場合には、ベースとドラムが入っていなければいけないという暗黙のルールがあるじゃないですか。でもソロで作る場合には、ドラムが入っていなくてもいいし、全部、自分で演奏してもいい。たとえば、ビートルズの「イエスタデイ」みたいな曲が生まれた場合、ベースとドラムがしっかりリズムを刻んだアレンジだったらどうでしょう?バンドにとってはそれが正解かもしれないですが、「イエスタデイ」という曲にとって正解とは限らないわけで。だから自分の中で曲にとっての正解を目指したいという気持ちが強くなってきたんだと思います。

――曲にとっての正解を目指したいと思うようになったきっかけはありますか?

これまでも、自分の生み出す曲に対して、そういうジレンマはあったんですが、直接的なきっかけになったのは、『クリスマスの約束』という音楽番組に出演して、小田和正さんと一緒に、映画音楽のメドレーをやらせてもらったことが大きいですね。その時、アコースティックで二人だけで、ギターをつま弾きながらハモる音楽の表現も好きだなと実感しました。ロックンロールとはかなり違う世界ですが、お客さんからも好評でしたし、自分はこういう世界も大好きだな、演奏していて気持ちいいし、こういう世界もやるべきだなという気づきにもなりました。

――今回はソロとしての3枚目の作品になります。制作に入るにあたって、イメージしていたことはありますか?

1、2枚目とは違うものを作ろうという意気込みがありました。それでまず、TRICERATOPSの『Unite/Divide』から引き続き、兼重哲哉くんというエンジニアにお願いしました。ソロ作で兼重くんとやるのは初めてですし、彼はアイデアマンなので音の質感も変わるだろうし、自然に作る作品も変わってくるだろうなと期待したからです。実際に新鮮さを感じながら、作ることができました。兼重くんはプロデューサー的視点を持った人なので、音のことだけでなく、歌詞のこと、歌い方のことなど、意見をガンガン言ってくれるので、ありがたかったですね。

――テーマやモチーフなどに関して、意識していたことはありますか?

ソロアルバムを2枚作った後に、コロナ禍になり、いろいろと思うことのある2年間の中で『Unite/Divide』というアルバムを作ったんですね。あの作品では、当時感じていた疑問や怒りも含めて、バンドサウンドで表現したんですが、まだ出し切れていない、くすぶりみたいなものがあったんですよ。そのくすぶりも含めて、今回のソロアルバムで出し切ろうという意識がありました。『Unite/Divide』の時はまだ、膿みたいなものが完全に出きっていなかったので、ダークな部分をそのまま表現しているところがありました。でも今回は軽やかさが加わっていますね。怒りを歌う時にも、“ユーモアを忘れず”と常に意識していましたし、エンターテインしたいと考えていました。

――『BIRDMAN』はバラエティに富んだポップアルバムでもあります。より多彩になっているのはどうしてでしょうか?

最初の2枚のソロアルバムもそうでしたが、ソロでやるとなると、“ロックであろうとする自分”が自然にいなくなるんですよ。ロックの絶対条件って、やっぱりエレキギターのサウンドじゃないですか。でも、ソロを作る時には、その条件が自然に省かれるという。だから、「UR3D」という曲なんてギターすら入っていませんし(笑)。

――「UR3D」はストリングスがリズムトラックのような解釈で使われていますよね。

「UR3D」は自宅で全部自分でプログラミングして、打ち込んで作った曲なんですよ。以前は、そういう作業が苦手だったので、全部、人にやってもらっていました。一人でパソコンに向かう作業は苦手だと思い込んでいたんですが、それではダメだな、自分でやろうと思うようになって、実際にやってみたら、完成までの時間も半分に短縮されましたし、自分でプログラミングすることでいろいろな発見もありましたし、メリットがとても大きかったんですよ。たとえば、今回は波形を見ながら、サウンドを構築しています。聴感上だけでなく、視覚的にも確認して波形を見ながら、この音が長すぎるな、もう少し短くして揃えようとか。

バラエティーに富んでいるのは、あらかじめ兼重くんと話し合って、打ち込みのほうがいい曲、生のほうがいい曲、どちらでもいい曲を振り分けていたことも大きいと思います。打ち込みのほうがいい曲の代表的な例は「UR3D」ですよね。1、2枚目は、ほとんど自分でドラムを叩いて録っていました。手と足をバラバラで録るなど、頑張って録音したんですが、決して上手くはないので、やり直すことも多く、時間がかかってしまったんですよ。今回はそのあたりも見直して、打ち込みの曲が多めになっています。

生ドラムが必要な曲は、トモさん(菅野知明)というドラマーにお願いしました。演奏してほしい曲のイメージにも合っていたし、年齢的にも同年代で、人間的にもとてもいい感じだなと思いました。MISIAさんのツアーでも叩いてるんですよ。ずっとニューヨークにいた人で、幅広いジャンルを演奏していて、海外のミュージシャンともセッションしてきた経歴の持ち主ですね。

TRICERATOPSでコーラスを作る時には、音と音が当たらないように意識していましたが、ソロをやるようになって、自分の中のコーラスのルールが変わってきました。

――「クロノロジー」のドラムなど、炸裂する感じが気持ちいいですよね。

佳史(吉田佳史)とはまた違った感じの日本人離れしたグルーヴを持っていて、新たにお願いするにはぴったりだなと思いました。一発一発のリズムが気持ち良くて、抜けのいいドラム。「終身刑」「鳥」「クロノロジー」、あと「ごめんねの効能」でも叩いてくれています。

――歌詞の世界観も幅広いです。歌詞を書くことに関して、これまでとの違いはありますか?

歌詞に関しては、今がいちばん自由に書けている感じがします。単純に言いたいこと、歌いたいことがより明確になっているんじゃないかと思います。

――1曲目の「まだ?」もメッセージ性を備えた曲です。覚醒を促す曲という印象を受けました。

音楽によって覚醒を促すというのは、ここ最近特に、理想としているところではありますね。

――サウンドも80年代にマドンナがデビューした当時の1stアルバムのような質感があります。当時、マドンナの登場によって、時代が変わったという印象を受けました。この曲の《Brand New Day》というフレーズと80'sサウンドがシンクロするかのようです。

なるほど。サウンドに関しては、図らずもそうなったところもありますね。最初に僕が打ち込みで作って、その後、兼重くんに投げて、音をいじってくれたんですが、徐々にそっちにシフトしていき、この形になりました。80'sサウンドって、かつてはこっぱずかしくてできなかったところもあったんですが、もはや僕らのデビュー当時でいう60'sサウンドと同じこと。立派にクラシックになったので、今は進んでできます(笑)。

――今回のアルバムでは、コーラスワークも駆使しています。

ソロなのに、コーラスの量がTRICERATOPSよりも多いという(笑)。マイケル・ジャクソンの曲も数多くのコーラスが入っているんですよ。最近、YouTubeでマイケルのコーラスのトラックだけを上から下までパート別で分離した音源が流出していて、『オフ・ザ・ウォール』(1979年)の頃からこんなに一人でコーラスを入れてたんだな、しかもこんなに凝ってたんだな、と再確認しました。

コーラスで4、5声入れると、どこかでは音が当たってしまい、そこだけ聴くと、不協和音みたいになるんですよ。TRICERATOPSでコーラスを作る時には、音と音が当たらないように意識していましたが、ソロをやるようになって、自分の中のコーラスのルールが変わってきました。たまに音が重なってもいいし、上と下のパートが時に交差してもいいと思うようになったんです。ビートルズもコーラスでそういうことをよくやっていますしね。

『BIRDMAN』でもコーラスはかなり自由にやっています。4声のコーラスを入れる場合、2回ずつ歌って、ステレオでパンニング(左右のスピーカーでの音量の差で、音像定位を変化させる表現方法)していて、8声入れているので、時間はかなりかかるんですが、バシッとハマった時、きれいだし、ゴージャスだし、気持ちいいんですよね(笑)。

――個人的にとくに好きな曲のひとつは「Boy」です。この曲はどんなきっかけから生まれたのですか?

直接的なきっかけは、高校の時の友達から「同級生の〇〇が死んじゃったよ」というメールの知らせが来たことですね。当時、よく遊んでいて、ちょっと危険な匂いがするヤツでした。だからどこかで納得できてしまった自分もいたり。ともあれその知らせを聞いた時に、その頃のことがよみがえってきたので、その時の気持ちがとっかかりになった曲です。

ただし、亡くなった友達に限定して描いたわけでもありません。別れてしまった恋人やお別れしてしまった肉親にも当てはまるだろうし、別れや決別がテーマですね。KANさんが亡くなったのは、曲が完成した後なので、直接的には関係ないんですが、出来上がってから、KANさんにも当てはまる部分があったりして、まるでKANさんのことを歌っている曲みたいだな、とも思いました。

――《たまにふざけてくれないか》とか、ちょっと連想してしまいますね。個人的には、このサビの歌詞とメロディがとくに好きです。和田さんの歌声もとても胸に響きました。

ありがとうございます。エンジニアの兼重くんが歌い回しのアイディアも提案してくれたんですよ。2コーラス目のサビの《君はずるいぜ 一足先に》ってところ。全然違う風に歌っていたんですが、今の歌い方にしたほうがいいんじゃないかということで、歌い回しを変えた曲です。

――初めてこの曲を聴いた時に、サビの歌詞とメロディ、とてもいいなあと思ったんですが、とくに2コーラス目のその部分で、さらにグッと来たことを覚えています。

兼重くん、やるな(笑)。

――「クロノロジー」は新境地の曲で、ザ・フーの『トミー』を連想させるような、スケールの大きなロックミュージカル曲です。

ザ・フーのイメージもありましたが、僕の中に染みこんでいるポール・マッカートニーのエキスがかなりにじんだ曲になりました。

――「バンド・オン・ザ・ラン」的な展開でもありますもんね。

そうなんですよ。で、組曲的な構成でありながら、実はずっとルートの音はDのままで、最初から最後までほぼ変わらないちょっと不思議な構成になっています。この曲で描いているのは、自分の歴史ですね。なぜか、このタイミングでこういう構成の曲になってしまいました。

――近年のSNSでの炎上も含めて描かれていますよね。

ハハハ(笑)。自分の中でいろいろな感情がよみがえってきて、あれも入れよう、これも入れようと考えるうちに、こうなりました。

――コーラスが場面転換の役割を果たしているんですね。

そこもポール・エキス、いや、ウイングス・エキスですね(笑)。この曲もそうですが、今回はギター、コーラス以外では、自分としてはベースもかなり頑張りました。もちろん指弾きなんかは苦手ですし、自由自在に操れるわけではないんですが、フレーズを作ることに関しては自信がありますね。

――確かに、ギタリストによるベースフレーズという感じがありますよね。ベースラインがリフっぽいというか。

僕のベースの弾き方も独特で。ベーシストは中指と人差し指を使うことが多いんですが、その弾き方はギタリストには難しいんですよ。僕は親指をよく使っています。スティングも基本親指でプレイするので、スティング弾きですね(笑)。冒頭の2曲、「まだ?」と「UR3D」のメインは打ち込みのシンセベースなんですが、「UR3D」のオブリガードは生のベースを入れているので、ちょっと変わった感じになったと思います。

――「鳥」という曲も収録されていますが、アルバムタイトルを『BIRDMAN』とした理由を教えていただけますか?

「鳥」は最初のタイトルが「BIRDMAN」だったんですよ。でも曲が完成してみると、当初の予想よりもシリアスな曲になったので、「BIRDMAN」だと軽すぎるかなと。「大空からのなんとか」とか、「地上何フィートのなんとか」とか、いろいろ考えたんですが、どれもしっくりこなくて。何周もして戻ってきて、シンプルに「鳥」がいいなと判断しました。

アルバムタイトルも『鳥』がありかなと一瞬考えたんですが、それは自分らしくないかな、ちょっとフォークっぽくなってしまうなと思って(笑)、エンジニアの兼重くんと話していて、「『BIRDMAN』がアルバムタイトルにいいんじゃないですか?」と言われて、だんだん自分の中でもフィットしてきたんですよ。

収録された曲で描かれている感情って、愛情を感じていたり、怒りをたぎらせていたり、いろいろなところを行ったり来たりするじゃないですか。迷いがあって、悟っていない状態、だから鳥のように大空の世界から眺められたらいいなという願望がありつつも、地上で悶々としている自分もいるという。鳥と人間の中間というニュアンスもあるし、『BIRDMAN』がしっくりくるなと思いました。

――アルバムタイトルの元となった「鳥」、歌詞もメロディも染みてきます。《地上の真っ暗闇 見下ろす》《心の真っ暗闇 かけて》といったフレーズなど、胸にきました。

嬉しいです。この曲も歌詞はそれなり時間をかけて書きました。まずパッと書いて、ここは違うなというところを直しながら、詰めていって、徐々に心のイメージに近づけていく作業でした。

――「E.T.」も宇宙からの視点を持っている主人公が登場するという意味では、『BIRDMAN』に通じるセンスのある曲ですよね。

この曲は自分のような考え方を持っている人間は少数派なのだろうという絶望感が根底にある曲ですね。ある意味、スティングの「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」にも近いというか。ニューヨークの中のイギリス人みたいな感じ。“地球にいるんだけれど、自分が地球外生命体みたい”と感じている主人公のある一夜を描いた歌ですね。そういやレゲエのリズムも一緒だ(笑)このアルバムの中では最初にできた曲で、すでにメロディだけは1stか2ndアルバムの時点であった曲ですね。この曲はMVも撮影しています。あと、「シニカル期」「鳥」もMVを作りました。今回は1枚のアルバムからMVを3曲作っていて、これは久々のことでした。

――曲順については?

かなりこだわりましたよ。通して聴いた時に、気持ちいいかどうかも重視していますし、バランスも考えました。シリアスな歌がある一方、「ごめんねの効能」みたいな曲もあるので、コース料理でいうと、「ごめんねの効能」はデザートみたいな曲。それで、最後に入れました。

――最後に「ごめんねの効能」がくることで、温かな余韻が残る流れになっていますよね。

そこは意識していますね。一時期、「ごめんねの効能」みたいな内容を書くと、「かわいい」と言われるから、やめようと封印していた時期もあったんですよ。でも、今は一周も二周もして、堂々と書けますね(笑)。

――1、2枚目のジャケットも素晴らしかったですが、3枚目はどんなジャケットになるのですか?

今回は子どもの頃の僕の写真ではなくて、現在の僕の写真です。高いところから、交差点にいる僕を撮っています。ロングコートをはおって、歩いているんですが、それがちょっと“BIRDMAN”っぽいんですよ(笑)。横断歩道が見えるから、ビートルズの『アビイ・ロード』っぽいところもあるという。実際は銀座なんですけどね(笑)。4人じゃなくて1人なので、ソロ『アビイ・ロード』(笑)。

曲順、曲間、ジャケットも含めて、アルバムを作る作業のすべてが好きですし、アルバムは自分の「好き」を詰め込んだものですね。

――ソロでの3枚目のアルバムを作ったことによって、見えてきたこと、感じたことはありますか?

改めて自分はアルバムを作るのが好きだなということですね。サブスクが全盛の時代なんだから、ミニアルバムでも良さそうなものですが、アルバム世代としては、フルアルバムを作りたいんですよ。曲順、曲間、ジャケットも含めて、アルバムを作る作業のすべてが好きですし、アルバムは自分の「好き」を詰め込んだものですね。ここまで来ると、自分が楽しむためにやっているんじゃないかという気すらします(笑)。もちろん、ファンのみんなに驚いてもらえるアルバムにするために全力を尽くしていますけど。

あと、3枚目のアルバムを作ったことによって、ミュージシャンとしての自分の意識が変わってきたところがあるかもしれません。これまでは、自分が“シンガーソングライター”と呼ばれたら、違和感があったんですよ。かといって“バンドマン”という言い方も、どこか違う。でも今回のアルバムが完成したことによって、“シンガーソングライター”と呼ばれても、「はい」と言えるようになった気がします。その言葉に対して、居心地が悪くはないという。

――つまり自分の中にあるものを音楽として表現できている手応えがあるわけですね。

3枚作ったんだし、そう言われてもいいんじゃないかという自分がいますね。あとは、ホントに楽しいアルバムになったなと思っています。1枚目と2枚目は、あえてバンドの音楽とは違うものを作った感じがありますが、今回は、よりカラフルな作品になっていると思います。

一人ではありますが、エンターテインして、みんなに楽しんでもらえるライブにしたいです。

――この『BIRDMAN』の完成を受けて、『一人宇宙旅行 2024 -MEETING BIRDMAM-』というタイトルのツアーがあります。新作の楽曲たち、ライブではどうなるのでしょうか?

1、2枚目の楽曲は一人で表現することが雰囲気としても合っていたんですよ。でも、『BIRDMAN』に関しては、一人で表現することに違和感を抱く曲もあって。もちろん『一人宇宙旅行』なので、一人でやるんですけど、一人では難しい曲もあるので、新作の再現ツアーというよりも、今までの僕の歴史を網羅した内容になると思います。もちろん、『BIRDMAN』の曲も可能な限りやりますよ。

もし今回、やらなかった曲もいつか機会を作りたいですね。今回はレコーディングで菅野知明さんとの出会いもありましたし、今後、またそういう出会いがあれば、ソロ曲をバンド形態でやるのもありかなと考えています。ポール・マッカートニー&ウイングスじゃないけれど、和田唱&バードメンとか(笑)。そう考えると、今度のライブは『一人宇宙旅行』の集大成みたいなもの、一人でのひと区切りになるかもしれません。まだわからないですが、その可能性もなきにしもあらずです(笑)。

――ライブについて、その他に何か考えていることはありますか?

引き続き、ギターの弾き語りパート、ループペダルを使ったパート、鍵盤の弾き語りパートなど、緩急をつけながらやりたいですね。一人ではありますが、エンターテインして、みんなに楽しんでもらえるライブにしたいです。エド・シーランの登場に勇気づけられたところもありますよね。たった一人のステージなのに、スタジアム中がダンスフロアと化して盛り上がっている。しかも弾いているのはアコギ。アコースティックギターにはこんなに可能性があるんだと驚きましたし、自分でもいろいろと試していきたいです。

――『一人宇宙旅行』もライブ表現の可能性を広げるものになりそうですね。

そうですね。今度のライブ、今まででいちばん多くソロ曲をやると思います。久々のTRICERATOPSの曲を入れるのもありですし、どんなステージになるのか、自分でも楽しみです。

――今後のことについてもうかがいたいのですが。TRICERATOPSとの兼ね合いについては、どのように考えていますか?

実は『BIRDMAN』が完成した直後の今も、アルバムのイメージや楽曲のアイディアがたくさんあるんですよ。これまでの3枚よりもさらにそぎ落とした、シンプルな弾き語りをメインとしたミニマルなソロアルバムのイメージがありますし、その一方で、バンドサウンドの曲たちのアイディアもそれなり出てきています。それらの楽曲をTRICERATOPSでやるのか、和田唱&バードメン(笑)でやるのか、それは自然の流れに任せたいんです。そう、音楽の神のみぞ知るというところですね(笑)。

取材・文=長谷川誠 撮影=菊池貴裕

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