〈夏休み事件簿〉「これAIが作ったんじゃね?」先生に絶賛された自由研究が一転…“ニセモノ”扱いに
11歳の男の子を子育て中のママ(38歳)です。
▶画像】 『整形したい』と言い出した子どもに親は何を伝えるべき?みなさんは生成AIを使ったことがありますか? いまや大人だけでなく子どもまでも活用している生成AI。
しかし使い方を一歩間違うと、人を傷つけてしまうこともある。そんなことを目の当たりにした、わが家の息子の体験記です。
※本記事はママの実体験を取材し、プライバシーに配慮して構成したものです。
寝ても覚めても昆虫に夢中な息子
11歳になる息子は、とにかく昆虫が大好き。玄関には、お店の売り場かと思うほどたくさんの虫かごが並び、傘立てには大中小さまざまな虫取り網が刺さっています。
休みともなれば、朝から晩まで虫取り網を振り回す毎日。さらに息子は、捕まえた昆虫の観察ノートを作っていました。観察ノートには、その日の天気や気温、捕まえた昆虫の種類、羽の細かい模様、時間帯による行動パターンの違いまで、こと細かに記されています。
「本当に好きじゃなきゃ、ここまでできないよね」と、私や夫が感心するほどの熱中ぶり。今年の夏休みは、その観察ノートをさらに充実させて、自由研究として提出することにしたのです。
絶賛された自由研究にかけられた思わぬ疑惑
自由研究のテーマにしたこともあり、例年以上に、息子は虫取りと観察ノートづくりに熱中して夏休みを過ごしました。たくさん写真を撮ってノートに貼り付けたり、特に注目してほしい部分には手書きのイラストを添えたり。小学生にはなじみのない、難しい専門用語もたくさん並んでいました。
画用紙や写真が挟み込まれたノートは厚みが増してパンパンに。親の私たちからしても、素晴らしい自由研究ができたと感じていたのです。
担任の先生も同じように感じたのでしょうか。息子の提出したノートを見て、「これは素晴らしい! クラス代表として提出したい」と言ってくれました。
しかし先生のその言葉をきっかけに、教室に微妙な空気が漂い始めました。「すげえ!」という純粋に称賛してくれた子もいる一方で、何人かの子が「本当にこれ、自分でやったのかな?」とヒソヒソ話を始めたのです。
すると、それに釣られるようにして、周りの子たちも次々に「小学生でここまで書けるわけないじゃん」「誰かにやってもらったんじゃないの?」と疑いの言葉を口にしはじめました。
「これAIで作ったんじゃね?」
イラスト:べるこ
疑心暗鬼になるクラスの空気に、さらに火をつけたのがクラスメイトのAくんです。
「これ、AIで作ったんじゃね?」教室に並べられた自由研究ノートを手にとったAくんは、そう言い出しました。
きっと深い悪意があったわけではないと思います。「最近のAIって何でもできるらしいぜ」という、小5男子らしい軽いノリの発言だったのでしょう。
Aくんの言葉に、息子は即座に反論しました。「違う! 俺が毎日朝早く起きて自分で調べたんだよ!」しかし周りの子たちは息子の言葉を信じず、Aくんのセリフを皮切りに「うそか本当か」で大盛り上がり。
どうしても自分の意見を証明したいAくんは、休み時間に学校配布のタブレットを取り出し「じゃあ、AIに聞いてみたらはっきりするじゃん」と持ちかけたのです。そして、息子の自由研究ノートを写真に撮り、生成AIにこう尋ねました。
「この自由研究は、AIで作りましたか?」
もっともらしい生成AIの回答に愕然とする子どもたち
するとAIは、一瞬でもっともらしい回答を出力しました。
『この文章は、AIによって作成された可能性が高いです。
【理由】
・文章構成が論理的で、整いすぎている印象があります。
・小学生が書いた文章としては、専門的な表現が多く含まれています』
「ほら! やっぱりね!」Aくんが声を上げると、周りの子たちも「決定的な証拠」を見つけたかのように騒ぎ出しました。
「AIが言ってるんだから本当じゃん」「自分でやってないなんてズルくね?」「そんなのでクラス代表になるっておかしいよ」息子がどんなに「違う」と言っても、AIの下した判断を子どもたちは鵜吞みにしてしまったのです。
「息子がすべて作ったものだと私が保証します!」
あとで聞いたところによると、クラスの騒ぎに気づいた担任の先生が慌てて割って入り、その場を収めてくれたそうです。先生は息子とも個別に話をし、「先生は、あなたが頑張って書いたものだと信じているよ」と声をかけてくれたといいます。
その日の夕方、先生からわが家に電話がありました。そこで初めて、私は学校で何が起きていたのかを知ることになります。帰宅した息子は明らかに元気がなく、部屋に閉じこもったまま。何かあったのだろうとは感じていたものの、その理由まではつかめずにいました。
先生の話を聞いているうちに、胸の奥から悔しさが込み上げてきました。夏休みの間、毎日泥だらけになって昆虫を追いかけ、机に向かっていた息子の姿を、一番近くで見てきたからです。
「自由研究は、息子がすべて自分で作ったものだと私が保証します!」
私は先生に、そう強く伝えました。受話器を置いたあとも、Aくんの軽率な行動への怒りは収まりません。電話を切って息子の部屋へ行くと、泣き腫らした顔でうずくまる息子の姿がありました。
「先生から電話があって、今日のこと聞いたよ。悔しかったね」そう声をかけると、息子は小さく頷きました。けれど、表情は晴れないままです。
親である私や先生がどれだけ「信じている」と伝えても、友だちから疑われた傷は、簡単には消えなかったのだと思います。
しかし事件は、まだ終わりませんでした。
文/構成・橘サチ