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[Alexandros]ライブハウスツアー最終日・大阪 熱気と衝動のライブを振り返る

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[Alexandros] 撮影=河本悠貴

ALEATORIC TOMATO Tour 2021 2021.07.31 Zepp Osaka Bayside

「大阪! 声出せないことを言い訳にすんじゃねえぞ!」――序盤から熱気あふれるフロアをさらに煽り立てるように川上洋平(Vo/Gt)が叫び上げる。「まだまだ行けんだろ大阪!」の磯部寛之(Ba/Cho)のコールに続けて「配信で観てるやつらも、家の中で叫べ!」と呼びかけ、アコースティックギターの激しいカッティングとともに「Waitress Waitress!」のワイルドな熱唱を突き上げる川上の姿が、会場のオーディエンスも配信画面越しの観客もすべてロックンロールの渦の真っ只中へと導いていく――。

6月から全7会場・14公演にわたって開催されてきた、[Alexandros]の全国ツアー『ALEATORIC TOMATO Tour 2021』ライブハウス最終日、大阪・Zepp Osaka Bayside公演。昨年にはベストアルバム『Where's My History?』のリリースツアーとして開催予定だったライブハウスツアー『Where's My Tomato? Tour』が、新型コロナウイルス感染拡大の影響により延期の後に中止(ベストアルバム『Where's My History?』のリリースも今年3月に延期された)。ドラマー・庄村聡泰の“勇退”公演となった今年3月21日のデビュー10周年記念ライブを挟みつつも、[Alexandros]のツアー開催としては2019年末~2020年初頭に行われた『VIPツアー九州 ~九周年だから九州ツアー』以来、実に1年半ぶりのこととなる。庄村の後任として4月に正式加入した新ドラマー・リアド偉武を擁した初のツアーとなる『ALEATORIC TOMATO』は、ロックシーン最前線をひた走る[Alexandros]の不屈の衝動、さらにその音楽の先鋭性と包容力を改めて証明する場となった。

赤いスポットライトに照らされた川上のジャズマスターのカッティングからのインスト曲で、この日を待ち侘びたオーディエンスの情熱とじっくりギアを合わせたところで「For Freedom」炸裂! バンド初期からのキラーナンバーが、リアドの強靭なビートとともに新たな野性を獲得し、2021年の“今”を震わせる。コロナ禍の情勢下でもあり、座席スタイルながら総立ちのフロアからは歓声もシンガロングも巻き起こることはない。それでも、「Are you ready to rock & roll Osaka?」の川上のシャウトに拍手で応える会場は、すでに確かな充実感と高揚感に満ちあふれている。白井眞輝(Gt)の多彩なギタープレイも光る「Boo!」では速射砲の如き歌のリリックが舞台後方のビジョンに躍り、サイレンのような真っ赤の照明の中「飛び跳ねようぜ! 思う存分飛び跳ねて騒ごうぜ!」(川上)と雪崩れ込んだ「Girl A」では、強靭なリフと雄大なサビのメロディで観る者すべての想いをロックの地平へと開放していく。最高の瞬間だ。

川上/白井/磯部/リアドにサポートキーボード・ROSÉを加えた布陣でこの日のアクトに臨んだ[Alexandros]。「Don't Fuck With Yoohei Kawakami」に脈打つ痛快なウィットと反骨心。「Thunder(Bedroom Joule ver.)」~「vague」の流れで描き出したクールな音世界。「カップルで観てる人、来てる人――失恋の歌を歌います」という川上の悪戯っぽい口上とともにアコースティック・バージョンで披露された「Leaving Grapefruits」のセンチメント――。強さ、優しさ、切なさ、悲しみ、抵抗、焦燥、そして破格のダイナミズム。それこそ「我々がロックバンドに求めるもの」すべてをリアルタイムで体現していくような[Alexandros]のアクトが、1曲また1曲とオーディエンスの情熱を高めていく。

その一方で、スタイリッシュに決め込むだけではなく、メンバーそれぞれあるがままの姿でロックを奏でて語っていく姿も、実に[Alexandros]らしい。「大阪2日目、来てくれてありがとうございます! ルールを守っていただいて、こんなに素晴らしい光景の中でやれることに、改めて感謝します。みなさん、自分たちに拍手!」という川上の言葉に応えて広がる拍手の響きが、観客の一体感をさらに強めていく。

MCで川上は、今回のツアータイトルにも盛り込まれたワード「ALEATORIC(偶然性)」について語っていた。鼻歌レベルの楽曲を基にしたスタジオセッションで、メンバーから生まれた偶発的・直感的なフレーズが、アレンジの随所に活きていること。インディーズの頃からライブを主戦場としてきた[Alexandros]にとって、フェスなどを通してのお客さんとの「偶然」の出会いが、バンドをスタジアムまで押し上げてくれたこと――。しかし、それは裏を返せば、彼らがそういった「偶然」の数々を逃すことなく捉え、ひとつの道筋へと編み上げようとする真摯な闘志を、常に胸に抱き続けていたことの証でもある。

「最高の仲間が加わってくれたなと思います」とリアドを紹介した川上が「俺たちまだまだこれから、むしろやっとスタートラインに立ったんじゃないかなって」と新たな決意表明を掲げたところで、ライブはいよいよ後半戦へ。白井がボーカルをとったBLANKEY JET CITY「SWEET DAYS」のカバーから「You're So Sweet & I Love You」へとつないで満場のクラップを呼び起こし、「This Is Teenage」から「Starrrrrrr」、さらに「風になって」とアンセムを惜しみなく畳み掛けていく。そしてリアド。2019年からサポートドラマーを務めていたとはいえ、改めてバンドの一員としてリズムを繰り出しているリアドのドライブ感は、[Alexandros]の楽曲とアンサンブルに驚くほどの推進力を与えていたし、バンドのさらなる進化への期待感を天井知らずに高めてくれるものだった。「大阪! いつか一緒に歌おうな!」と呼びかけ「心で歌え!」と観客の想いを代弁する川上の言葉が、「風になって」の晴れやかな疾走感とともに爽快に胸に響いた。「Philosophy」の最後、熱い手拍子を繰り広げるフロアに川上がマイクを向けたのは、そんな「心の歌」を拾おうとする彼の想いの表れだったのかもしれない。

「下北沢にあるUKプロジェクト、我々が所属している『RX-RECORDS』は、もともとメロコアのレーベルでした! 我々は本来、もっともっと『暴れる』バンドです。本当はモッシュ、ダイブ、リフト大歓迎です! 今やれないその悔しさ、溜め込んでおけよ!」――そんなアグレッシブな川上の煽りから「Beast」の獰猛なヘヴィサウンドが会場を吹き抜け、映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の主題歌「閃光」ではバンド一丸の加速感でエモーショナルなロックの絶景を展開してみせる。そして「アルペジオ」、さらに「Mosquito Bite」――とライブは刻一刻と熱量を増していく。本編ラストの「PARTY IS OVER」ではフロア一面のハンドウェーブが巻き起こる中、「大阪ありがとう! 愛してるぜ!」の川上のシャウトがひときわ眩しく鳴り渡っていた。

暗転した舞台上、「PARTY IS OVER」のビジョンの文字が「PARTY IS NOT OVER」に変わったところでメンバーが再び登場、「ワタリドリ」「Kick&Spin」を連射してなおも会場の歓喜を沸き立たせていく。この日最後に演奏したのは「LAST MINUTE」。<あなたに出逢えたら/心が騒ぐでしょう/「さよなら」その日まで/「いつまでも」遊びましょう>と再会を約したフレーズはまさに、ロックとバンドの福音そのものだった。「次に会ったら、思う存分騒ごうな、大阪!」の川上の言葉に応えて、高らかな拍手が湧き起こった。

10月12・13日:横浜アリーナ/10月26・27日:日本武道館での開催がアナウンスされていた『ALEATORIC TOMATO Tour 2021』アリーナ編のタイトルが『ALEATORIC ARENA 4 DAYS』であることも同日発表していた[Alexandros]。さらに充実したバンドの「これから」への予感に満ちた、至上のロックアクトだった。なお、今回のZepp Osaka Bayside公演のアーカイブ映像は8月9日23:59まで視聴可能となっている。

取材・文=高橋智樹 撮影=河本悠貴

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