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【残るキハ110も堪能】まるで展望台!行きも帰りも楽しめる 小海線で出会う八ヶ岳と南アルプスの絶景旅

鉄道ホビダス

 列車がゆるやかな坂を上りながら進んでいくと、少しずつ視界が開けてくる。やがて目の前に現れるのは、山あいに広がる町の風景や、遠くまで続く空と大地──。そんな「高みからの景色」に出会える瞬間が、鉄道旅にはときどき訪れます。
 「まるで展望台」な車窓風景をめぐる連載「全国絶景見晴らしの旅」。第五弾の今回は、小海線小淵沢〜甲斐小泉間で体感できる、まさに息をのむような車窓をご紹介します。

【写真】小海線に乗った時は見ておきたい!絶景車窓ポイントの写真をもっと見る

▲小淵沢駅停車中のキハ110。東日本のローカル線の旅情を味わうにはこの車両が一番。八高線から同系列が撤退し、小海線がキハ110に乗れる東京から一番近い路線になったのではないだろうか。

■意外と知られていない絶景車窓ポイント

 都心から中央本線で西へ向かい、第一回で紹介した中央本線の勝沼ぶどう郷〜塩山間の景色を楽しんだのち、さらに揺られること40分ほど、都心からは都合2時間ほどで山梨県の西北端、小淵沢に着きます。
 ここからは小海線のキハ110に乗り換えて北を目指すのですが、その前にちょっと寄り道。小淵沢駅には、屋上に展望デッキが設けられており、八ヶ岳や南アルプス、そして霊峰富士の威容を眺められるに加え、駅併設の丸政そばでは美味しいそばに舌鼓を打つことも、さらに土産物屋さんで小淵沢名物である丸政のお弁当を買うこともできます。但し、注意が必要なのは小淵沢が東京近郊区間にあること。小淵沢で途中下車するには野辺山より北か、塩尻以西までの紙の切符を持っていなければなりません(上野・東京か東京・品川の新幹線一駅分を余計に入れておくという手もありますね)。

 さて、寄り道はここまでにして列車に乗り込みましょう。今回のビューポイントは小淵沢を出てすぐの小淵沢大カーブの辺りで、同所はいわゆる「撮り鉄」の方には撮影名所として知られる場所です。そのため外からの走行風景ばかりがフィーチャーされ、車内からの景色は意外と注目されていませんが、実はこの区間は外からの鉄道風景だけでなく車窓も実によい場所なのです。それでは、まずは下り小諸行きの進行方向右側に座っていきましょう。

▲鉄道投稿情報局より、小淵沢大カーブの走行写真を拝借。八ヶ岳を背にディーゼル車が力強く駆けてゆく良風景だが、車窓も負けず劣らず良い区間なのだ。

‘15.11.29 小海線 小淵沢〜甲斐小泉 P:加藤孝英
(鉄道投稿情報局より)  

 列車は小淵沢から中央本線に沿って西に出発すると、少しして大きなカーブを描きながら180度進行方向を変えて東へ向かいはじめます。この大カーブも不思議なもので、政治的な駆け引きの故とも、急勾配を回避したものとも、はたまた予定ルート上の巨石を避けたものとも囁かれますが、真相は歴史に埋もれてしまっています。こうした歴史を考えながら列車に揺られるのも乗り鉄の一つの楽しみですが、そろそろ本題の車窓の話に戻りましょう。
 進行方向右側の席からはカーブの内側を見ることになり、カーブを曲がりきるまでは堂々たる八ヶ岳の姿を眺めることができます。小淵沢は八ヶ岳連峰の南端の先に位置し、同地から北を見るとゆったりと裾を伸ばした八ヶ岳が構えているのが見えるのです。と、カーブを曲がるまでは車窓は少々見上げて楽しむのですが、カーブを曲がって東を向くと、小淵沢の街がなだらかな斜面の先、かなり下に広がっているのが見えます。先ほど述べたとおり、ここは八ヶ岳の裾野にあたる場所。かなり先まですーっと斜面が伸びている景色というのも、自然の雄大さをまた違った感覚で味わわせてくれます。

▲下り進行方向右側、大カーブの内側の車窓。ちょうど曲線中点あたりだろうか。この先の進路の盛土が続いているのが見えるが、奥に行くにつれて田畑との高低差が縮んでいくのがわかる。おそらく春先頃の写真だが、遠くの八ヶ岳はわずかに雪を冠っている。

■この区間の本領発揮は「反対側」!

 少し地味な見晴らしだなと思ったそこのあなた。今回のメインはここではありません。この区間の見どころは「上り」の進行方向右側です。単線なので下りの左側も一緒の景色ですが、それはさておき野辺山か清里あたりで高原の空気を楽しんで引き返すことにしましょう。
 甲斐小泉を出、中央自動車道をくぐって曲線中点へ差し掛かると、それまで林の中であった車窓が開け、南アルプスの北側の山々が見えてきます。列車は標高差を調整するために盛土の上を走っており、かなり高い見晴らしが得られます。眼前の土地はなだらかに続いたあと、釜無川に吸い込まれるように落ち込む形をしており、その様子はカーブが終わって中央本線と並走する区間に近づくほど、よくわかるようになります。近景の土地との標高差はそこまでないこの区間ですが、釜無川の作り出すダイナミックな地形によって、中景へと連続する部分と車窓との間に高低差が生まれ、それが遠景を構成する南アルプスの雄大な景色を引き立て、絶景が作り出されているのです。
 ちなみに筆者のおすすめは夕方の上りの車窓。南アルプスの向こうに沈みゆく夕陽が山間の田園風景を橙に染め上げる景色は、まさに息をのむ光景です。

▲カーブを曲がり切ろうとする辺りから見た南アルプスと夕陽。このあたりが一番見晴らしている感じを覚えられるところのように思う。

 さて、「全国絶景見晴らしの旅」、第5回は小海線 小淵沢〜甲斐小泉間の車窓をお届けしました。この区間は、右も左もどちら側の車窓もそれぞれ違った形で景色を楽しめる場所です。八ヶ岳を見上げるもよし、南アルプスを見晴らすもよし。工夫すればどちらの景色も楽しむことができます。ぜひ、あなたなりの「乗り方」を見つけに訪れてみてはどうでしょうか。
 移ろう景色を眺めるひとときが、旅の記憶を静かに深めてくれる──そんな車窓との出会いが、小海線にもありました。「全国絶景見晴らしの旅」、次回もまた、新たな見晴らしを求めて線路の先へ向かいましょう。

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