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息子は補欠。私は若いママたちのノリについていけず孤独。サッカーが苦痛です問題

サカイク

スポ少のお母さんたちと年齢差があることもあり、距離を置かれていて切ない。ママ友を作る場じゃないことは分かっているけど、土日も連休も試合当番だと朝から同じ場にいなければならない。

子どもはずっと補欠だし、話し相手になるママもいない。それなのに長時間拘束されるのが苦痛でたまらない、というご相談です。共感される方も多いのでは。

今回もスポーツと教育のジャーナリストであり、先輩サッカーママでもある島沢優子さんが、これまでの取材で得た知見をもとに、お母さんの心が軽くなる3つのアドバイスを送ります。
(文:島沢優子)

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

<<万年補欠の息子。わが子が出ない試合でも応援に行かなきゃダメなのか問題

 

<サッカーママからの相談>

はじめまして。いつも深い学びと気付きをありがとうございます。

記事を拝読していると、子どもを通して親が試されていること、それが親の成長にもつながるチャンスを与えられているのだと痛感します。

私も、試合に出られずベンチにずっと座らせられている子どもの姿を見ることが辛く、頭で分かってはいてもグランドで涙が出る始末ですが、この件は島沢さんの過去記事を胸に、何とか気持ちを切り替えようとしているところです。

もう一つ、辛いことがありまして、今回はこちらを相談させて下さい。

それは、スポ少のママ達との関わりです。

息子は10歳なんですが、20人ほどいるママ達の中で私が最年長(もうすぐ50歳)で、若いママ達のノリには全くついていけず、また相手からも距離を置かれていることもすごく切ないです。

みんな下の名前で呼びあったり、ランチだ飲み会だと、サッカー以外の場面でも仲良くされている様子が嫌でも目に入り辛いです。

子どものスポ少は、ママ友をつくる場ではないと心から割り切れればいいのですが、何せ土日も連休も試合だ当番だと朝早くからずっとその場にいないといけないことが多いです。

試合にしても、先ほど書いた通り我が子はずっとベンチにいるので、他の試合に出ている子のママ達と同じ気持ちで応援できません。

おしゃべりしあうようなママもいない、子どもも試合に出られない、それなのに拘束される(すみません、ひどい表現で)時間が長すぎて苦痛で苦痛でたまりません。

これから学年も上がり、ますます役員だ何だと親が駆り出されることになるので、その前に辞めてしまいたいと子どもに言ってみましたが(親から言うべきではないのですが)、当然ながら本人は辞めるつもりはないとのこと。

いい歳をして情けないですが、どうかアドバイス頂けましたら幸いです。

 

<島沢さんからの回答>

ご相談いただき、ありがとうございます。

どうか「いい歳をして情けない」なんて言わないでください。しっかりした文章から、お母さんの知性や学ぼうとする姿勢が伝わります。30代半ばで出産した私もどこへ行ってもほぼ最年長のママでした。お気持ち察します。

 

■お悩みの一番の原因は年齢差によるママ友との距離ではないのでは?

さて、お母さんは今回の相談は「スポ少のママ達との関わりです」と書かれています。しかしながら、苦悩の一番の原因は違っていませんか。実は、息子さんが試合に出られない現実がお母さんにとって最も苦しいのではありませんか。

そして、その痛みを広げるように刺激するのが、わが子が試合に出ているママグループなのでしょう。その人たちがたまたまご自分より若く、下の名前で呼び合ったり、ランチや飲み会などを楽しむ層だった、ということかなと察します。

このようにわが子が試合に出ている親と出ていない親との分断は、多くのクラブで起きているようです。SNSを見ていると、そのような投稿は山ほどあります。つい最近も「その日2~3試合の予定だったのに、1分も出場させてもらえなかった子どもたちがいた」という投稿を見かけました。

日本サッカー協会の8人制サッカー競技規則には「JFAは、サッカーをしているすべてのプレーヤーが試合に出場する機会を得て、試合を通して楽しみ、成長する機会を持って欲しいと願っています」と書かれています。人権先進国が多い欧州ではプレータイムを平等にしています。にもかかわらず、日本の少年サッカーはなかなか追いつけません。

外部サイト:日本サッカー協会8人制サッカー競技規則(P2に記載)
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■アドバイス①お母さんのマインドを整えよう 応援に行く自分を褒めること

そこで、三つほどアドバイスをさせてください。

ひとつめ。当連載の前回記事「万年補欠の息子。わが子が出ない試合でも応援に行かなきゃダメなのか問題」を、まずは読んでみてください。

このお母さんは、ずっとベンチにいる息子を見ている辛さを訴え「試合にほとんど出ないと分かってるのに応援に行かなければいけないの?」と質問されたのです。よって、私はこの相談のアンサーを「アドバイス」にしていません。あえて「お伝え」として書かせていただきました。それでもアドバイスめいたことを三つほど申し上げました。ご自分のマインドセットを整える参考にしてください。要旨は以下の通りです。

 

①お母さんが「ただそこにいる」ことで息子は安心する。補欠の僕でもちゃんと見守ってくれている、そこにいるだけのことが子育てともいえる。そこにいるだけの自分を自分で褒めてあげてほしい。

②もしパートナーがいれば「ただそこにいる」役目を二分割すること。してください。「そこにいる役」をシェアすれば、自由な時間に自分の趣味も楽しめる。

③試合に出られないことが一番悔しいのは誰なのかを考えよう。試合に出られなくても遅刻もせず、不貞腐れもせず、チームのために参加する息子をほめよう。

 

このようなマインドセットのアドバイスをしました。わが子が補欠の親に向けたマインドセットをしなければいけないこの状況が、私は情けなく悲しいです。なかなか変容できない現状に対し焦燥感も募ります。

試合に出られなかったら出られるチームにお引越ししてほしいと思いますが、これは子どもの気持ち次第。すでに仲良しの仲間のいる息子さんが今のチームにとどまりたい気持ちを尊重すべきでしょう。

 

■アドバイス②孤独に襲われている今、何度か試合を欠席するのも手 「サッカー以外」の話を使用

二つめ。

息子さんのサッカーから離れましょう。

いま、お母さんは子どものサッカーに囚われているようです。それに関連してサッカーのママグループが目につき、孤独感に襲われているのではないでしょうか。であれば、何回か用事を作って試合を欠席してみましょう。パートナーがいるのであれば交代してもらってください。完全にワンオペであれば、まずはその状況を改善しなくてはいけません。

孤独は人に病を運びます。息子さんには応援していること、また応援に行くことをきちんと伝えたうえで、一度距離を置きましょう。

前回記事の方は、同じように試合に出られない子の親同士でグループがあってそこで本音で話ができているようでした。しかし、それとお母さんの状況は異なるようです。

したがって、パートナーか、他の友人などお母さんが本音で話のできる人を探しましょう。似たような価値観を持っていて、お母さんの感情を理解してくれる人が必要です。チームに、今は親しくなくて、お母さんと年齢は違うけれど、同じようにわが子が試合に出られない親御さんはいませんか。もしくはサッカーとまったく関係のない分野のママ友や友人はいませんか。そういう方たちと、ぜひ「子どものサッカー以外」の話をしてください。

 

■アドバイス③あなたとお子さんをつなぐ世界をサッカーだけにしない

(写真は少年サッカーのイメージ ご質問者様及びご質問内容とは関係ありません)

 

三つめ。

息子さんも同じように、サッカー以外の世界に触れさせてあげてください。学校のこと、勉強のこと、サッカー以外の興味関心やほかのことに目を向けてください。息子さんにもサッカーがすべてではないことを伝えてほしいです。そうすることで、お母さんと息子さん両者をつなぐ世界をサッカーだけにしないこと。

子どものサッカーなんてほんの数年。お母さんのところはあと1年ほどですよね。ご自分を客観的に見てください。これから思春期に突入します。

子育てはこれからが本番です。息子さんが人生を楽しめる大人になったらいいなと思いませんか?

それには、お母さん自身がまず楽しみましょう。

 

島沢優子(しまざわ・ゆうこ)ジャーナリスト。筑波大学卒業後、英国留学など経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。『AERA』『東洋経済オンライン』などでスポーツ、教育関係等をフィールドに執筆。サッカーを始めスポーツの育成に詳しい。『桜宮高校バスケット部体罰事件の真実 そして少年は死ぬことに決めた』(朝日新聞出版)『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)『部活があぶない』(講談社現代新書)『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)『オシムの遺産 彼らに授けたもうひとつの言葉』(竹書房)など著書多数。『サッカーで子どもをぐんぐん伸ばす11の魔法』(池上正著・小学館)『教えないスキル ビジャレアルに学ぶ7つの人材育成術』(佐伯夕利子著・小学館新書)など企画構成者としてもヒット作が多く、指導者や保護者向けの講演も精力的に行っている。日本バスケットボール協会インテグリティ委員、沖縄県部活動改革推進委員、朝日新聞デジタルコメンテーター。1男1女の母。

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